7日
金曜日
チャイナ・コンジローム
中国わたりの性病。昨日は寝たのが早かったので、4時ころから断続して目が覚めて、また寝るを三回ほど繰り返し。そのたびに夢を見る。一本目は『キルビル2』の影響か、ショウ・ブラザーズの60年代カンフー映画のオープニング風。レトロで大仰なテーマ曲と字体が大変にカッコよかった。二本目は、うちの家族が団地のような巨大マンションに住んでいて、その中庭にテーブルを出して夕食をとっていたら、窓からそれをのぞいていた上階の住人が、自分たちもいま食事しているところなので、お裾分けをどうぞ、と、料理をロープにつけて垂らしてくれる。それがきっかけで、他の部屋の住人や、一階に入っている自動車販売会社の人々なども加わってパーティのような感じになり、楽しく騒いでいたら、セコムの管理人がやってきて防犯上こういうことをやられると困る、と文句を言われるというもの。三本目は快楽亭の師匠と一緒にパチンコ屋へ行くのだが、それが古いパチンコ屋で、置いてある台も昭和40年代のものか、というくらいのクラシック。玉もカードでなく小銭で買わないといけないので、手持ちの札を両替機でくずす。このときの札というのが、一万円から千円 札まで、いずれも実際の札でなく、証券のような、架空の札であった。
起床は6時55分。入浴等済ませ、7時25分に朝食。キャベツベーコン炒めと大根サラダ。ベーコンは今日は大ぶりに切ってあってまた旨し。これで炒飯を作ればさぞ旨かろうと母に言うと、炒飯はカニに限るわよ、と一蹴。そりゃカニも旨いでしょ うが。
弁当受け取り、仕事場に出勤する前にちょっとメールのみのぞく。タッタタ探検組合の谷口有氏から、日記に名前を出したことに対する御礼と、タッタタのサイトからのリンクの許可を求めるメールが来ていた。大変に光栄であり、おとついとはうって変わり、朝から気分よし。朝こういうメールを読むのは、昼とか夕方読むのとは全然うれしさが違うもの。逆に言うとおとついの不快メールも、朝受け取ったものでなけ れば、あそこまで不快でなかったかも知れない。
バス、いつもの25分。車中で今朝の夢を忘れないうちにとメモする。夢の話など詳細につけて何の意味があるかとも思うが、なにかつけておかないともったいないような気にもなる。仕事場着、メールにそれぞれ返信等の作業。山田誠二さんの代理の方から昨日送っていただいた、『UA!』の解説原稿がマックでは開けないものなので、再送のお願いを返信。現代美術館図録編集のM氏からは原稿受け取りの報告。作品の選定に関しては“いかにもカラサワさん”と褒められた。タッタタの谷口さんにリンク許諾の返信をしようとして、日記では『タッタタ探検組合』を『タッタタ探検 隊』と誤記していたことに気づき、あわてて訂正。
ネット古書店で、資料本数冊注文。文庫だと、数冊注文しても600円とか500円とか言うことがあり、こんな少額で梱包・郵送の手間をかけるのが気の毒になり、せめて1000円台にしようと、つい、同じ書店の目録中に、なにか他にも買うものがないか探してしまうことがある。商人の子の癖であろう。今回は、いつも買ってい ておなじみの店であり、まあ、いいか、と400円の買い物をする。
弁当1時。サバの味噌漬けが風味よくて旨し。それと、アブラゲ、青菜、高野豆腐の煮物。こういうものは自分の舌でなく、自分の奥底の日本人の血がうまがる、という味かもしれない。身体的にも精神的にも健康的な食事であることである。福田官房長官辞任のニュース入る。ちょうど今週発売の週刊現代(今井紀明氏の勝手放題にフいたという感じのインタビューを載せていた号)に、菅直人に、“自爆テロ辞職”を勧めていた記事があった。菅氏自身が潔く身を引くことが、小泉政権に対する最大の攻撃になる、という趣旨で、これはまさにその通りだったのだが、なんと先に相手の方から自爆テロを仕掛けられてしまった。菅直人、これで政治生命は断たれたかも。
早くも名古屋から釜飯セット届く。それ受け取って、外出してタントンマッサージに行き、30分ほど揉まれる。首のところの凝りをほぐしてもらうため。ここは鍼灸もやっているので、フロアに艾の焦げる香りが漂う。懐かしい。小学校にあがるかあがらないかの頃、足の手術の後にリハビリのマッサージに通っていた豊平の治療院が(治療院と言ってもごく普通の家の居間で老夫婦が治療する、“あんま揉み療治”に毛の生えたようなところだったが)やはり鍼灸院で、子供時代、この匂いを毎日嗅いでいたのである。あの治療院、私と同い年くらいの子供で、毎週、東京から飛行機で通っているという子がいたから、名のあった治療家だったのであろうか。……ついでに言うと、私はそこの治療院の待合室(縁側であった)で、そこに積んであった『少年サンデー』を初めて読み、掲載されていた『おそ松くん』のあまりの面白さ(チビ太の移動式歯医者の巻だった)に驚倒し、無理を言ってその掲載号を借り出した。このときの圧倒的な印象がなければ、その後の私がマンガやお笑いにはまりこむ度合いも、それほど熱狂的ではなかったのではないか。今の私の存在につながる、おそらく運命の分かれ道の第一歩を、私は艾の匂いと共に踏み出したのである。
午後はずっと、講談社Web現代連載コラムの10回分ネタ出し。Web現代、本格的新連載は、講談社人事異動が確定後になるので、今回の連載はそれまでのツナギの短期集中ということになる。担当Yくんの好みで、『こんな猟奇でよかったら』の中の寄生虫ネタのような、ちょっとグロな実話モノで、ということで、ネタをとりあえず10回分出して打ち合わせに臨む予定だったのだが、我ながらこういうネタはナワバリ内で、アレも語れるコレもやりたい、と後から後からどんどん出てきて、あっ という間に20回分のネタがたまってしまう。
7時25分、渋谷駅東横線改札でK子と待ち合わせ。通勤快速で武蔵小杉まで。途中、講談社Yくんから、事故で電車が停まっているので遅れるとの連絡。久しぶりに 武蔵小杉から歩いて、『おれんち』へ。若主人が私たちの姿を見かけて、
「アレ? 今日、予約してくれてました?」
と言う。講談社の名前で予約したので、気がつかなかったらしい。座敷で、スタウト飲みながらメニューを見て、サテ今日は何が入っているのかな、と眺める。このワクワク感。とりあえず刺身の盛り合わせと、白レバーの刺身、それから砂肝の唐揚げを頼んで、いろいろK子と雑談。彼女は今日、第一回の繰り上げ返済をしてきたとのこと。待つほどもなくYくん来るので、ネタ出しのメモを渡し、連載の打ち合わせ。原稿の分量は半分になるが、K子がイラストでなくマンガを描くことになるので、原稿料トータルでは以前の連載と同じになる。有り難し。刺身はカツオ、カワハギ、シメサバ、車エビの、ちょっと湯引きをしたやつ、白身魚、おまけにニシンの叩き風。白身とエビのコリコリ感、カワハギのキモの濃厚さが最高。エビの頭と尻尾は焼いてもらい、カワハギの骨は味噌汁仕立にしていただく。あと、白身魚の天ぷら、ウナギの自家製白焼き、最後はソバ。以前ここは太めの田舎ソバだったのだが、今回は上品に細切りとなった。腕が上達したのだろうが、“太い方がソバらしい”と言うと、前もって言ってもらえれば田舎風にもしますとのこと。うーむ、ソバもいいのだが、し かし、ここの燻炒飯とかも食べたいのだよなあ。
渋谷から新中野に居を移したことは、仕事の面でも生活環境の面でも、いいことの方が多い結果となり満足なのだが、この“おれんち”への交通が不便になった、というのが一番の痛手かもしれない。以前は中目黒まで一本で行って、そこからタクシー飛ばせば夜間料金でも二千円いかなかったのが、新中野までだと三千円はかかる。渋谷からさらにJR乗り継いで新宿まで出て、そこからタクシー(1500円ほど)。K子は、今度からこの店に行くときは同じ新中野住まいのパイデザ夫婦を誘って、タクシー割り勘にしよう、とそこまで計画している。帰宅12時を回る。まったく、あの店に行くと、つい知らぬ間に時間がたち、いろんなものが腹におさまっているのである。