30日
日曜日
キルビルがビルキルにきてビルキレず
vol.2に続くキルビルの声。朝、6時50分起床。外は雨。朝食はまた五郎島金時に戻る。しかしこれも石川県の産物である。セロリスープと共に。K子にはパンが切れたのでパスタを茹でてセロリ、エリンギと和えて。新聞には間に合わなかったニュースらしいが、テレビで大騒ぎしていたのは、日本人(外務省職員)がイラクで殺害されたニュース。まことに痛ましい事件で、心からご冥福をお祈りしたい。その上で言うが、殺されたのが外務省の人間(国の代表者)であったことは日本という国がこの国の復興のためにきちんと立ち働き、役割を果たしていることを最も端的に世界にアピールしてくれた。また、テロリストたちの行動が最早イラクの国益のための戦闘でも何でもない、その場限りの無意味な殺人であることも、なお一層明白になった。その死は決して無駄ではないのである。さあ、国側の人間にばかり血を流させてどうする。人間の盾なる行動に出ていた諸君、今からでも遅くない。今こそ君たちが活躍する時だ。イラクの復興に尽くし、子供たちにミルクと教育を与えるために危険地域で活動をしている外務省の職員を守るための盾となり、一発でも君たちの体でもってテロリストの銃弾を消費させて、世界の平和のために尽くしてみてはいかがだろうか。
入浴手早にすませ、10時半、K子と家を出る。と学会の今年最後の例会。高田馬場まで、普段ならJRを用いるのだが、今日は雨のこともあり、荷物が多いのでタクシーを使う。ビッグボックス前で談之助さんとエロの冒険者さんを拾い、W大国際会議場へ。前回の会議室は机がなく、メモ台のついた会議用テーブルのみだったが、今回の部屋はちゃんとテーブル付き。事務の眠田さんが今回は欠席のため、K子と談之 助さんに受付及び会場費の徴収をお願いする。
雨のせいか、会場が駅から遠いせいか、なかなか人が集まらず、ちと不安になるが15分ほど後れで何とか人数もいつもと同じ70人程度揃い、開会の運びとなる。ゲスト参加のエロの冒険者さん、いつもトンデモ落語会などに来ている駿河修一さんなどの他、笹公人さんも今回と学会初参加。さらにアノ人、アノ人などもちゃんと前回 に続いて。
発表は会場の世話をしてくださっているe−human研究所の研究発表からはじまる。私は西条八十の(『人食いバラ』の他の)トンデモ少女小説と、会誌原稿にも書いた『イッツ・ア・マンズ・ワールド』の二点を発表。どちらもまずまず受けがよく、一安心。発表テク自体は、昨日金沢から帰ってすぐで、準備もロクに出来ていない状態だったのであまり褒められたものではなかったが。『マンズ・ワールド』の方はダブリ本のため、誰か欲しい人がいたら、と申し出たら会長が真っ先に挙手。ウン千円で譲渡。
発表、前回はいささか急ぎ過ぎた感があったが(その前の白山の会場での例会が会場利用時間の関係上発表時間が毎度不足気味だったので、急に時間に余裕のもてるこの会場に場が移って、まだ慣れていなかった)、今回はきちんと余裕持って発表時間を取れて、まずいい感じで進行する。各発表者の発表もいつもの如く。この会場、施設一般に関しては申し分ないが、書画カメラの性能に関してのみはやや、不満あり。東京大会で某所から借り出したものがあまりに性能がよく、そこまでのものをつい、望んでしまうからなのだが。
IPPANさん、新田五郎さんというマンガ系研究者のネタの充実度が最近凄い。マンガ専門に一冊、トンデモ紹介本を立ち上げたいくらいである。発表テクとしてはこないだ新入会員になったばかりのU氏のダウナー系芸が最近は一番のお気に入り。昼飯は、I矢くんがこのあいだ虎の子に持ってきたハム店のハムと、これも彼のお勧めらしい店のパンをサンドイッチにして食べる。ハムもパンも大変に結構な味。外国映画を観るたびに、サンドイッチの昼食というのが貧しく見えていたものだが、これだけパンがうまければ大変贅沢な昼食になることであるよな、と思い直した。とはいえ、ここは飲食禁止がタテマエなので、会場内では一切口にしなかったということにしておく。
私の名前で参加許可を得たゲスト諸氏、いずれもネタはいいのだが発表のウケはいまいち。場慣れの問題であろう。精進を期待。前回より参加のTさん(ジュニア)は小ネタで文庫本をちょこっと紹介。こういうネタを選ぶところはちゃんと“わかっている”感じである。ふむ、とちょっと感心。笹公人氏は彼のプロデュースしたというアイドルグループ(光ゲンジのコピー。平均年齢30ウン歳)『銀河ステーション』のプロモ・ビデオを持参して発表。やはり場慣れはしていなかったが、さすがにライブ会場でのパフォーマンスには慣れている感じである。ちょうど桐生祐狩さんも短歌 ネタの発表であった。と学会短歌ブームくるか?
6時に大体発表終了。また例によってゾロゾロと歩いて高田馬場駅前居酒屋『土風炉』。江藤巌さん、声ちゃん、笹さん、皆神さん、本郷さんなどと一緒の席。話がいろいろはずむ。皆神さんは神田陽司の国立演芸場のトリを聞きにいったらしい。私の名前も壇上で出してくれていたそうな。
「で、どうでした? 彼の高座」
「いいけどねえ、まだちょっと“照れ”があるねえ」
「なまじ『シティロード』の記者やっているから、自分の高座が客にどのように見えるか、わかってしまうんですよ。演者と観客はまったく立場が違うんだから、そこらへん吹っ切れればバケると思いますね」
などという話。
声ちゃんの今のお仕事を聞いて周囲のみんなひっくり返る。しかもそれが“フロムA”で見つけた仕事だというところがおふざけ小説みたいである。笹さんとは幻冬舎のSくんやSFマガジンのS澤さんのことで盛り上がる。タカノ綾さんや、土佐正道さん(明和電気社長)が私の本を好んで読んでくれているらしい。意外な読書傾向と言うべきか、まあ類推できることなのか。
二次会は3時間ほど続いたが、ラストはもう、杯盤狼藉というありさまであった。店を出て、高田馬場芳林堂をちょっと仰ぎ見る。大学時代からなじんで来たこの店も今年いっぱいで閉店とか。この一年、東京での、私の若い頃の記憶が染み込んでいるスペースがどんどんとその姿を消していく。しかし、芳林堂の閉店は、単にそのようなノスタルジアの問題ばかりでない、学生街で書店経営がすでに成り立たなくなって いる、という、日本の知性の根本に関わる問題であろう。
雨、まだポツポツ。K子がタクシーで帰ろうと言うので、またそこから拾って、丁度10時ジャストに帰宅。昨日よりは手足の疲れも抜けていたようである。メールそ の他のチェックは明日のこと明日のこと。
(能登旅行の日記は年内くらいかけてポツポツつける。年末進行中なのできちんとつけている余裕がない)