裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

6日

木曜日

彼って濃いよ

 カンバック、ラテン系の彼。朝、7時45分起床。朝食、カキフライのマフィンサンド、ジャガイモの冷製ポタージュ(レトルトのもの)。フジリンゴ二片、それにミルクコーヒー。9時にホームエステイト社の人が来て、壁紙貼り替えの下見。その後で外出の予定などを念頭に置きつつ、今日のスケジュールを立てるが、出先で会う予定の人から、“明日、よろしくお願いします”などとメールがあり、ちょっとまごつく。何かと思ったら、一日、日を間違えていて、今日が7日だとばかり思いこんでいた。しかしメモには、壁紙貼り替えの下見に人が来るのは7日だとある。だからこっちもあわてずに待っていたのだ。どうも、向こうの間違いとこっちのカン違いが合わ さって、どちらも不思議に思わなかったらしい。

 K子が昨日の日記にはブリの骨髄のことが抜けている、と言う。そうそう、おれんちで、若旦那が“これ、ちょっと試してみてください”と、三人に親指の爪くらいの小さな盃のようなものを渡してくれた。中には透明なゼリー状のものが、ぷくんと盛り上がるように入っている。聞いたらブリの背骨関節部分で切り離したもので、盃のようにくぼんだところに、骨髄のゼラチン質があふれ、水滴のように盛り上がっているのであった。おそるおそる口をつけて、それをチュッと吸ってみると、意外にも生臭みなどまるでなく、ゼラチンの甘味がかすかに舌に感じられる。新鮮極まりないも のでしか味わえない海の美禄。

 と学会の次の会誌(冬コミ用)に掲載する原稿を書く。メモ程度のものをふくらます形で、13枚一気。文勢だけは大層なものになる。12時、図版キャプションと共に原稿用サイトにアップする。電話、カタログハウス『通販生活』のS氏。久しぶりである。網走の取材に行って以来だから、もう3年立つか。お仕事依頼。打ち合わせの日取りを決める。あともうひとつ、女性自身のDさんからはあのインタビュー関係のお知らせ。月末とかと最初言っていたが、すぐ次の号に載せるとか。

 そのDさん、一冊差し上げた『人食いバラ』、すぐ読了してしまったそうである。やはりラストでアッと言ってしまったそうで、やはりああいうものが好きな人にはたまらないだろうな、とうれしくなる。その版元のゆまに書房Tさんからはメールで、やはり出した三冊のうちでは『人食いバラ』の売れ行きが格段によく、神保町の三省堂本店では入荷分がすぐ売り切れて追加注文が来たとか。また、第二弾の刊行時期や内容の問い合わせも頻々だそうなので、近いうちに選定作業に入らねばなるまい。

 昼は干しソバ(開田さんの弟子の岡さんにいただいた残り)を茹でて、大根おろしともみ海苔で食べる。そばつゆが切れていたので、讃岐うどんの出汁に生醤油をたらして味を調整して。ここらへんの融通がせわしない中でのとりあえずの昼飯、という感じでよろしい。講談社『近くへ行きたい』の赤入れ始めるが雑用多く、なかなか進まず。しかも、昨日六本木で出来なかった用事を今日じゅうに済まさなくてはと思い出し、あわてて今度は青山へ。なんとか済ませられてホッとした。ついでに紀ノ国屋で晩の材料を買い込む。他の買い物もあったのでタクシーを帰りには拾う。運転手さんがバリバリの反・自民で、“今度の選挙で東京都から出馬の自民党議員は、みんな落っことしてやるんだ”と鼻息が荒い。労組の役員ででもあるのだろうか。

 帰宅後はぐったりして仕事も進まず。8時、夕食の準備。練り物とカブの煮物、残りのカブをすりおろして汁に加えたみぞれ鍋、アジ干物片身。炊いたご飯にカブの葉のごま油炒めを載せて。DVDで『フラッシュ・ゴードン/宇宙征服』。やはり古本屋で買ったDVDのせいか、画面が不安定で目が疲れる。画質自体は1940年制作のものとは思えないくらい鮮明なのだが。ミン皇帝役のチャールズ・ミドルトンは、案外古い映画を観ているとちょくちょく目にする俳優で、エドワード・G・ロビンソンが中国人を演じた(!)『天晴れウォン』でもミン皇帝風の中国人メイクで出演しているし、マルクス兄弟の『我輩はカモである』では裁判官役をやっている。酒、缶ビール小一カン、日本酒ロックで三杯。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa