9日
日曜日
老任侠の館
詰めた指が死蝋化してズラリと……。朝、8時起床。窓外やたら暗い。朝食はソフトフランスにスコッチエッグをはさんで、という英仏混淆。上京している母から電話で、今夜7時半に会うことに。気圧乱れてこっちの体調も乱れ気味。気圧が体調または精神状態に作用するタイプの人は案外多いのではないかと思う(新田次郎に『梅雨将軍信長』という、気象庁出身のこの人ならではの視点によるユニークな気圧歴史小 説があったが)。これが選挙にどう影響するか。
トイレ読書、『魔の山』をアゲて、次が竹内真氏の『粗忽拳銃』。またいきなり軽めのものになったが、これも青年の心理をテーマにした、立派な教養小説だと思う。主人公たちがそれぞれの仕事である落語、映画、役者、ライターというものに対しさまざまに意見を述べあい、議論しながら話が進んでいくところなど、まさに正統派の教養小説である。ただ、普通の若者たちというのはこんなにみんな揃って、自分の選んだ人生に対し自問自答しながらやっているのかな、とは感じる。私が若かった頃を思い出すと、私も周囲の連中も、自分の選んだ道に対しては、根拠はないがそれ故に深い自信を持って、千万人だとわからんが一万人くらいなら吾往かん、という気概で周囲の声など気にせずに突き進んでいた気がする。身を置いていたのがマニアックな 環境だったからかも知れないが。
風が強く、選挙用(近くの小学校が投票所)に道に張られた駐車禁止区域表示のビニール製テープがバタバタとはためく音が寒々しく仕事場に響く。投票所はちょっと閑散とした雰囲気だった。帰宅して時間がやたらたっていることに驚く。雑事をすませただけなのにもう3時を回っている。冷凍讃岐うどんを温め、豚バラと茄子を煮たものを上に乗っけて啜る。食って横になったらそのまま寝てしまい、眼が覚めたらもう4時半。アスペクトから送られた村崎さんとの対談に赤を入れて、メール返信。5時には窓外既にして真っ暗である。
メールチェック。次回のと学会例会についてのことなど。こないだのSF作家クラブのパーティに行った人(私の通知で知って)から報告もあり。それにしてもSF畑の人というのはパーティが好きだな、と思う。と学会十周年のときも、記念パーティをやろう、と先頭に立って騒いでいたのはSF業界人の永瀬さんだった。他のメンツは“別に特別なことしなくてもいいんじゃない?”という感じでノリが悪く、結局流れてしまったが、これはと学会らしいクールさで、案外いいなと思ったものだ。あとNHKのYくんからメール。彼は早稲田出身だとか。申し訳ない、カン違いしていました。
7時半、K子と一緒にタクシーで新宿。東口のセントラルホテル東京に投宿している母を訪ねる。少し話して、飯を食いに出る。どこというアテもないので、またタクシーで参宮橋に行き、クリクリへ。珍しく子供のお客がいる。両親が背のスラリとした美男美女で、子供がまた可愛らしい女の子。この夫婦の子なら美人に育つだろうと 思うが、残念なことに両親とも、子供の前でタバコをふかしている。
ルンピア、野菜オーヴン焼き、ひな鳥半身など食べながら雑談。雑談と言っても、来年の母の上京のことが当然主になる。いろいろと家を買いたいという人はやってきているとのこと。来年半ばくらいに本格的上京となるか。2月くらいと思っていたので、ややこっちにも準備する余裕が出来たかという感じ。K子はもう徹底して下調べをしていて、神楽坂がいいなどと勧めている。話がはずんでワイン三人で二本、あけてしまった。小雨の中、タクシーで帰宅。選挙速報をしばらく見る。前半の民主党独走にやや、自民党が歯止めをかけたあたり。それはいいが、ワリを食った共産党、社民党の命運や如何に。