25日
火曜日
注意一秒、今一生
まさか今一生なんて名前をこの日記タイトルで使おうとは。朝、7時半起床。どんよりとした空模様だったが、程なく雨が降り出し始める。はたして昨日の不調はこの雨の前兆なりしよな。降ってしまえば降る前よりはいいが、しかし不調にかわりはない。朝食、セロリ、トマト、フジリンゴ。朝刊にあった女性誌の広告の見出し、市川染五郎の挙式を前に、捨てられた女の告白文、タイトルが“うらみはらさでおくべき か”。凄まじや。とはいえ、歌舞伎に縁のある科白ではある。
〆切が土曜日だった『新刊ニュース』の今年印象に残った本アンケート、あわてて書いて出す。間に合ったかな。『神は沈黙せず』『デブの帝国』、それから中野貴雄監督の『国際シネマ獄門帖』。信仰問題を描いた著作から、飽食信仰の行き着いた果てのアメリカを描いた本に移り、そこから糖尿病闘病中の著者の書、とつなげたところが眼目なのであるが、こんなところで凝ったところで誰も感心してくれない。
植木不等式氏の日記に“赤影の前にやっていた忍者もので、バラモンの妖術使いが敵方なのは何という番組か”と出ていたので、と学会の例会に関してのML投稿の後ろに“『妖術武芸帳』だと思われますが、赤影よりはまる一年、遅れた放送です”と書いておく。赤影からユーモアを抜いたような作りの番組で、佐々木功、藤岡重慶、月形龍之介、原健作という豪華キャストでありながら、1クールしか続かなかった。佐々木功はこの番組のために東京から京都に住居を移すほどの入れ込みようだったそうで、移した直後に打ち切りが決まり、平山亨プロデューサー、“あれほど伝えるのに困ったことはなかったな”とのことである(このこと、前に書いたか?)。
郵便局に振込に行った(高価画集、やはり買ってしまった)他は家に閉じこもり、原稿をずっと書く。昼は卵かけ飯。雨は次第に強くなり、昼過ぎにはすでにどしゃ降りとなる。サンマークから印税振込先を教えてくださいとの返事。印税に関してはちょっと前に一社、トラブルがあったところがある。いや、“あった”と過去形で書いたが、実際いまだに払い込まれておらず、ちと困っているのである。フリーの商売をやっていると、トラブルの一件や二件、常に抱えていて当然ではあるが、金がらみのことは、真面目に生活に直結するのだ。
それやこれやで、4時の時間割、村崎百郎さんとの対談に30分遅刻。困ったもんだ。この一年の対談のゲラを渡される。来年一月末刊行予定。早いものでこの対談集もこれで三冊目。外道の顔も三度。さて、対談はまたネタが多すぎて困るほどで、マイケル・ジャクソンから山拓落選、ゴスロリ少女からエリート信金ストーカー犯までさまざま。村崎さん、山本弘の『神は沈黙せず』を絶賛、“デンパ来ている奴には全員これを更正用教科書として必読させるべき”と。とりあえず、社会派くんコンビの推薦図書にしておく。それにしても困るのは、今回もまた、われわれの対談が非常に“まともなことを言う”ものになってしまいがちなこと。テープ起こしチェックの段 階で少し鬼畜度を色揚げしないと、と話す。
帰宅、原稿、冬コミ用の同人誌のものもあって大変。開田さんの『特撮が来た』に書いているものはいくら書いても終わらず、原稿用紙にして20枚を越してしまう。明日から東京を離れるのだが、ちくま文庫のものは旅行中モバイルで書いて今週中になんとしてもアゲねばならない。岡田さんのところの食玩原稿もあるし。
9時半、だいたいメドのついた原稿を最後ちょっと残して放棄、タクシーで中目黒『すし好』。K子と待ち合わせ。やはりカウンターで食べるとネタが違う。白身、コハダ、甘エビ、イワシおつまみ。ワカメも別におつまみで貰う。ワカメなんてものが好きになるとは思わなかった(昔は大嫌いだったのだが)。髪の毛に不自由する年代になると、それを補う食い物に嗜好が移るのか。カウンターの並びに、ちょっとクセはあるがスリムで大変な美人が座っていた。目鼻立ちが美人、というのではなく、表情の変化や、ちょっとした仕草、健康的な旺盛な食べっぷりなどが魅力的な女性なのである。誰かに似ている、と気になっていたのだが、山咲トオルだ、と気がついた。 彼からあの独特のキモさを抜いた感じなのだな。
かなり食った筈だが値段は大変エコノミカルで結構。帰宅して、少し仕事を続けようかと思ったが、諦めて寝る。明日は11時家を出る。今週いっぱいまで、日記更新は休ませていただく。あしからず。