裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

22日

土曜日

ゲッコー、ゲッコー、カエル〜部隊〜

「拳銃は最後の武器だ。われわれは、カエル部隊だ!」朝、7時半起床。夢で『セーラームーン』の公開アテレコショーを見物している。ホテル内の中華レストランのようなところでやっているのだが、気がついたら、同じテーブルに徳川夢声のような老人が坐っていて、“これからはあなたみたいな人にがんばってもらわないと”と言われ、私はえらく恐縮していた。朝食、沖縄ベニイモとスープ。オレンジ半個。

 バグダッドでマスコミ宿泊のホテルと石油省の建物がロケット弾被弾。昨日書いた通りに、テロリストはどんどん自国内で無差別にテロを起こして内部崩壊し始めてきている。マスコミと同国人を敵に回してどうするつもりか。かなわないのはこれまでさんざイラク寄り報道をしていながら命を狙われている特派記者たちだろう。それにしてもフセインやラディンはテロリズムの基本教科書であるカルロス・マリゲーラの 『都市ゲリラ教程』くらい読んでいないのか。
「都市ゲリラに常に必要なことは大衆の支持を得ることである」
 マリゲーラは繰り返し言い、例えば鉄道破壊などの場合にも、“乗客の通勤者を死なせたり怪我を負わせたりしては絶対いけない”と特に注意している。同胞の支持を 失ったときがゲリラの最期だ、ということをよく知っていたのである。

 朝、母から電話。札幌の家が案外早めに売れそうだとのこと。額も当初のこちらのアテコミよりはやや(ほんの少しだが)高く売れそうである。とはいえ、東京にマンションを買い、生活費も確保して、となると、ギリギリの線をねらうしかなさそう。K子となにやら打ち合わせしているが、こういう実務に関して無能な私はツンボ桟敷 である。

 12時半、半蔵門線で神田神保町に出かける。駿台坂下古書会館にて“趣味の古書展”。そんなに大物を買ったわけではないが、ちょこちょこ買っているうちに一万二千円ほどになってしまった。それにしても改築されてからの古書展、地下でやっているせいもあるが、どこか近寄りがたい雰囲気になっているな。まあ、一般人には地下 だろうと屋上だろうと近寄りがたいのかも知れないが。

 それから靖国通りに出て、三省堂、書泉グランデなどの新刊書店、田村、小宮山書店等を冷やかしつつ、古書センター。中野書店が移った後の5階には精神世界専門のような店が入っていた。2階のマンガコーナーで一冊。それからボンデイ。少し廊下で待たされた。シーフードカレーを食べる。ここで初めてカレーを食ってから、もう四半世紀になるが、最近ちょっと口にあわなくなってきた。味が変わったのか、私の 舌が変わったのか。ともあれ、食ったあとだいぶ胸焼けがした。

 出てから今日はさらに豊田書房(演劇・演芸専門店)などで買い物。古本長屋の二軒の書店さんが閉まっており、そこに弁護士の記名で差し押さえの証書が貼ってあった。あまり立ち寄ったことはない書店だったが、学生時代からおなじみであった店で あり、こういう状態になっているのは寂しい。

 半蔵門線で帰宅、横になって少し休む。ちょっとウトウトしたが、そのたびごとにえらい胸苦しさを感じて目が覚める。4時ころ電話。誰かと思ったら大層久しぶり、大恐慌劇団の正狩炎氏。健康を害していたと聞いて気にはしていたが、元気そうでひと安心。いまもライターをちゃんとやっているらしい。彼のツナギで、出版社T社の編集長と話す。私の責任編集で、サブカルネタの雑誌(ムックになるか)を出したいという話であった。12月に入ってから、一度打ち合わせを、ということにする。

 8時半、神山町(と、ずっと書いていたが宇田川町だった)の『花暦』でK子と待ち合わせ。女将さんが、このあいだ、私の日記からここのHPをたどって、来てくれたお客さんがいたと感謝された。それはいいのだが、そのお客さん、コースで予約していて、10時に来店の予定が道に迷ってしまい、来たのがなんと12時になってしまったとか。何でも、華暦のHPの地図に、神山町交差点とあるべきところが“神谷町交差点”となっており、その地図を見て、六本木の方へ行ってしまったのであるとやら。それはまたマヌケな、と言いかけて、いや、私の日記を読んでくださるファンにそんなことを言ってはいかん、と思い直す。とはいえ、私のファンにはそういう人が多いのである。……ところでこの日記を書いている時点では華暦のサイトの地図は まだ訂正されていない。来店の方はご注意を。

 カワハギとマグロの刺身、ふぐ一夜干し、おでんなどで酒をあっさりと。新しいメニューに“きのこの土瓶蒸し”が加わったので、K子“まあ、私のために!”と大喜びであった。T社の話をして、もしやることになれば、編集実務は彼女にまかせることにする。前から、“原稿を集める側に回りたい”と言っていたのである。しかし、戦慄して原稿引き受けてくれない人が出てくると困るな。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa