裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

18日

火曜日

お宅の人

 家を捨て、妻を捨て、二次元の女と同棲し……。朝、7時15分起床。朝食、キャベツとリンゴを刻んだサラダ。アルカイダが日本をテロの標的にすると宣言、この件に関してテレビで井筒和幸が自民党議員を居丈高になって罵っていた。こういう時に一番いじめやすい立場の人間を徹底していじめるこのおっさんの神経を疑いたい。アメリカにペコペコするのは悪くて、テロリストにペコペコするのはいいというのだろうか。反米主張は個人の自由だが、それに入れ込むあまりに、あきらかな反人道テロ組織であるアルカイダに賛同してしまうような誰かさんみたいな愚かな真似はしない でもらいたいものである。それこそ国際社会から孤立する。

 トイレ読書『大地』、飢饉の土地を捨て都会へと出た王龍は、自分は人力車の車夫として働き、妻と子供たち、それに王龍の父は乞食をして稼ぐ。乞食行為が、貧民が食べていくための“労働”として描かれているのが非常に興味深く、どうやって物乞いをしていいかわからないでいる子供たちに、妻の阿蘭がそのテクニックを教えてみせる場面がいい。そんな知識まである悲惨な出自で、奴隷出身の不美人ながら、料理がうまく、家計の切り盛りに長け、どんな悲惨な状況にあっても決して絶望せず、飢饉の中で生まれた赤ん坊を自らの手で絞め殺す(それがその赤ん坊にしてやれる最善の方法なのだ)ことまでして自分と家族を守る術を見出し、時に感傷的になる夫と異なり現実にきちんと足を下ろし、周囲の噂話から情報を得て、チャンスをつかみそこねないよう夫に進言するスーパー・ウーマンの阿蘭が魅力的である。ちょっと暗いの が難だが。

 昼は外出し、青山へ。昼飯は軽く立ち食い蕎麦でも、と思ったが満員。イミグレイト・カフェなるところのランチを食う。夜はディスコになるような店らしく、特殊な作りで落ち着かず。ナシゴレンのランチを頼む。サラダにスープ、山菜、それにナシゴレンとコーヒーで780円。このナシゴレン、ちゃんとエビセンベイに目玉焼き、トマトなどが乗っているのだが、味がまったくしない。調味料を入れ忘れたのか? と思うような無味なナシゴレンであった。ヘルシー嗜好なのかしらん。半分だけ食っ て残す。まずかったためというよりダイエットのため。

 紀ノ国屋で買い物。すでにクリスマスまでのセールが宣伝されていて、移転の話はまったく告知なし。少なくとも年内は保たれるということか。肩凝り甚だし。帰宅してマッサージ予約。幸い空いていた。仕事すすめる。その合間にメールであちこちと連絡。いろいろ諸事情で滞っていたメール配信雑学マンガの件、やっと動きはじめて一安心。日刊ゲンダイから電話、新年特別号に短文依頼。本の紹介欄に今年ベストであった三冊を、とのこと。選定条件のひとつに“希望がわいてくる本、生きる勇気がわいてくる本、気持ちが明るくなる本”というのがある。日刊ゲンダイの一面見出しを見て希望がわいたり生きる勇気がわいたりする人というのはあまりいないのではないか、と思うのだが(なにせ選挙前に“小泉政権が続いたらもう日本は終わり”と大 書していたものなあ)。

 半チクな時間内で出来るベストの仕事を、と思い、冬コミ用同人誌の原稿を半分、書き上げてメール。それからモノマガに図版書影用の書籍をバイク便で送る。6時、新宿に出てサウナ&マッサージ。ここ、マッサージ師さん入れ替えたか今日も新しい人で、小太りのメガネの人。揉んでくれながらずっと話しかけてくる。中華料理屋のことにくわしく、チャイナハウスも仙園も行ったことがあるという。じゃあ、と小岩の楊州飯店を出して対抗。対抗することもないけれど。たまたま某店の話になり、あ そこは近くに出版社があって……と話すと、
「ああ、○○社ですね」
 とすぐ答えてきた。そこから出版社ばなしになり、自社ビル持っているのがどことどこ、自社ビル手放しそうなのがどこ、とか。それから雑誌の発行部数など、これもやたらくわしい。訊いたらなんと、以前老舗の某社の営業マンだったそうで、一度仕事したことのあるところであった。あまり話すと商売がバレる(ここではモノカキと も何とも正体をあかしてない)と思い、やや口を濁す。

 一回帰宅、雑用いろいろ。フジテレビからもメール。ものごとが(うまくいくかどうかはともかく)前へサクサク進んでいくのは気持ちのいいもの。少なくとも屈託感はなくなる。9時半、再び家を出て東新宿『幸永』。K子既に来ている。ゲタカルビに豚骨タタキ、極ホルモン。それとテールスープ、レバ刺し、キムチでホッピー二ハイ。仕事の話いろいろ。K子、早くWeb現代の次の連載の企画を立てろと急かす。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa