裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

27日

月曜日

酸っぱいブードゥ

 へっ、どうせあんな野蛮な宗教、最初から入信したかねえや。朝、7時半起床。猫にエサをやり、自分たちのエサも作る。サツマイモを蒸かす。20分で芯まで柔らかくなるが、今日はちょっと短縮して15分で食べてみたら、やはり中が固い。それとネギスープ、昨日クリクリの帰りにコンビニで買ったフジリンゴ。やっぱりフシャフシャとした食感でダメ。それに皮がちとネトつく感じなのは、何か薬剤を塗っている ようで気味が悪い。

 メールチェック。ネット通販の楽天市場からのMLのタイトルが“いま睦月がねらう注目アイテムはこれ!”というものだったので、フェチ系グッズ通販でも初めたのかと思ったら、神谷睦月という人がセレクトした商品のお知らせであった。ネット通販と言えば、いま、それで見つけて買ったCD『シネマスタア・コレクション アクションスタア編』(ユニバーサル)を仕事のあいまにしょっちゅう聞いている。日活から小林旭・赤木圭一郎・宍戸錠、渡哲也など、大映から勝新太郎、田宮二郎、江波杏子など、東映からは梅宮辰夫、若山富三郎、梶芽衣子など、さらにテレビから天知茂、高城丈二、藤巻潤などの歌う曲が収められているこのCD、渡の『夜霧よ今夜もありがとう』や『くちなしの花』、梶の『怨み節』など有名どころもあるが、珍曲もかなり入っていて、藤巻潤が『ザ・ガードマン』のあのインストゥルメンタルのOPテーマに歌詞をつけて歌っているもの(冒頭部分、一番が“驕るなよ 悪の影 息の根は とめてやる”、二番が“美しく 隠れても 化けの皮 剥いでやる”というスゴい歌詞)だとか、高城丈二がテレビで演じた『七つの顔の男』の主題歌(さすがに片目の運転手などにはならないようだが、“ある時は 「プレイボーイ!」 ある時はX……X・Y・Z!”というわけのわからん歌詞。“セブン・フェース、セブン・フェース”という女性コーラスも爆笑もの)などがあり、聞き出すとやめられない。

 昼はヤキメシを作り、その上に焼いた卵を乗っけて簡便オムライス。オタフクソースをチラとかけて食べると、いきなり大衆食堂の味。2時、時間割にてミリオン出版Y氏と打ち合わせ。K子も同席。実録猟奇モノコミックの出版。これまで描いた原稿も使用するが、その分量が案外多い。話題のさくら出版に描いた原稿が多いのに苦笑する。これらの原稿は全て回収済みで、いまネットに上がっている、さくら出版の倉庫にあったという鹿野景子名義の原稿は、大半がN池社長が前の会社(編プロ)から 持ち出していたものである。

 ミリオンの編集のYさんは腰が低く、なんとなく噺家の感じもあり。スケジュール確認の件などを取り決めて出る。マスターに、店置き用の文庫本何冊か提供。帰宅、メールなどまた確認。担当さんが変わるという報告、またタコシェから同人誌の納入 についての問い合わせなど。

 4時、また時間割。村崎百郎さんとの『社会派くんがゆく』対談。今月も事件がてんこ盛りで、有栖川宮から日テレ買収事件、4歳児を母親の18歳恋人が蹴り殺す事件、オマエの血は汚れている教師など、目白押し。千葉のヤンキー亭主による16歳偽装結婚妻殺害事件など、メモを見て“あれ、これって今月だった? 先月もう話したかと思っていた”と言ったくらい、古びるのが早いはやい。人のうわさも75日どころか、最近じゃ2週間持てばいい方である。これだけずらりと並んだ事件を端から語っていくうちに、“いまの社会、どこか壊れているよな”という感にはなる。鬼畜を自称する村崎さん、裏者を自称する私が、ふと気がつくと、日本を憂い、若者を憂い、政治や教育を憂いているのである。村崎百郎の口から“子供が危険なときは自分の命を捨てても助けようとするのが母性ってもンだろうがよ”というセリフが飛び出したときには、思わず、
「……なんか最近、我々は“いいこと”ばかり言ってる気がするねえ」
 と口に出る。この対談、始まった頃は猟奇事件をエンタテインメントとして楽しんでしまおう、というコンセプトだった。毎月、“いやあ、これだけ今月の事件が濃いと、来月が大変だねえ”と言い合っていたのに、始まってすでに3年、その間、一月たりと“今月はちょっとネタ枯れかな”という月がない。毎度々々、落とすのがつらいくらい、いいネタが発生している。最初のうちは喜んでいたのだが、さすがに3年目に入ると、いささかウンザリしてくる。確かに猟奇事件、殺人事件は人間の社会が始まった頃から存在している。猟奇の歴史も人よりはちょっと詳しく調べている身として、それはよくわかる。しかし、少なくとも昭和くらいまでの事件は、事件というのは犯人自身のかなり特殊なメンタリティ(個性、境遇、精神状態など)がひき起こしたものがほとんどだった。いわば事件ひとつひとつに他とは懸絶した個性があったし、ドラマが存在した。21世紀初頭のこんにちの犯罪には、そのドラマ性が極めて希薄なのだ。そこから感じとれるのは、社会のワク組み、人間同士の関係、人としての常識といった、大きなククリ自体が、歪み、腐り、効力を失っているという実感だけなのである。ここまで来たら、そのククリが完全に消失するところまで見守ってやらなくては、という気もすることはするが。

 6時半、対談終わり。来春にまとめる三冊目の単行本の話など少し。サブタイトルで『“げぇ!”の本』というのはどうか、などと。村崎さん、今日は顔にジンマシンのようなものを作ってきている。何か食べ物にでも当たったか。理由を聞こうとしてつい、聞きそびれてしまった。帰宅、Web現代『近くへ行きたい』最終回の原稿をまとめようとするが、体力落ちて、明日回しにする。母に電話、先日のクルミの礼などを。このところ連日、家を買いたいという人が訪れているとか。

 8時半、神山町『華暦』へ。今日は満席の状態で、たまたま私たちが入る直前に二人、カウンター客が出たところにタイミングよく座れたのは運がよかった。刺身、豚と蓮のショウガ焼き、温野菜のサラダ、おでんなど。カクアジがまるでシマアジのような甘味。女将サンから、やっとホームページが出来た、と教えられる。
http://members.jcom.home.ne.jp/hana-goyomi/
 いずれリンクするけれど、とりあえず。女将サンはこの写真より実物の方がずっと美人です。魚は彼女が自分で毎日、鎌倉の市場から買ってくるからおいしいのだな。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa