裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

14日

火曜日

細川チチカカ湖

 いい受けも思いつかないし、細川ちか子なんて今の人は誰も知らないだろうけど、まあ思いついたのでとりあえず。朝、7時15分起床。朝食、豆サラダ。トウモロコシ1/3本分と、ふかし大豆、豆モヤシ、サラダニンジンの角切りを茹で、ノンオイルドレッシングで。それと二十世紀。新聞休刊日にて手持ちぶさた。雨しとしと。講談社Yくんから原稿催促、他にもいろいろやらねばならぬものあるも、気圧すさまじく乱れてテンション、ピクとも上がらず。

 11時、アシスタント来て仕事場の掃除。私もどうせ仕事が手につかぬのなら、とどうしようもない状態になっていたパソコン回りを少し片付ける。少しだけ本を整理し、新聞類を取り捨てただけでぐんと環境レベルがあがる。なら、毎日少しずつでも整理整頓したらいいに、と思うところだが、仕事モードになると、そういうことが一 切出来ないのである。

 早川書房から秋のブックフェア用にサインをしてくれと送られた自著数十冊にサインする。添える文句はいい加減に考えて“世界はキッチュ、人類はみな狂弟”。しかしこの元セリフももう知らない世代が読者層にはいるかもしれない。クロネコヤマトに電話し、集荷お願いします、と電話したら即、取りに来たので驚く。ちょうど近くを回っていたらしい。昼はアシスタントの持ってきてくれた栗おこわ、豆と昆布の煮物。じつに素朴でじつにうまし。昨日カレーに入れた筍の残りで味噌汁を作る。これ も香りよし。

 Web現代はすでに連載最終回までの取材は終えてしまっているし、使用写真の件も今日、都合がついた。SFマガジン原稿も、居間にあるガラクタ箱を整理している最中に、いいネタを発見。いつでも書ける体制にはあるが、テンションのみが不足である。ただ、このガラクタ箱を引っかき回したとき、箱の上に、この数ヶ月、なくしたと思ってばかりいた腕時計がちょこんと乗っているのを発見したときには驚いた。

 これをなくした(と思った)のはいつのことだったか、黒のゴムバンドのスウォッチで、ゴムなので夏などはめていると汗がバンドの内側にたまって気持ち悪いので、外して胸ポケットに入れていたが、ある朝、出がけに探して見ると、いつも時計を置いてあるテーブル脇の盆の中に見あたらず、ポケットの中などにもない。前の晩は飲み会だったので、酔ってどこかに忘れてきたのかもしれないと思い、あきらめて新しい時計を買った。見つけたのは、別に隅っこの方にあったものでもなんでもない、いつも朝食を摂っているテーブルの脇にある箱である。文字盤が黒く、バンドも黒なので、黒の箱の上に乗っていて、保護色の役割を果たしていたのであろう。と、いうかいつもは決してそんなところにはおかないが、さりとて“まさかこんなところに置くとは”という程意外な場所でもない、という、その中途半端さが盲点となっていたと 言う方が真実に近いか。

 電話数件、こないだのトリビア四コマ誌のことなど。それで3時の打ち合わせに少し遅れる。モノマガジンK田さん、電話の声で想像していたのとまったく同じ顔だったので喜ぶ。DVD特集の見開きページをひとつまかせるので好きに構成してくれというお仕事。いろいろ話をするが正味はわずか15分。遅れていくと、後れを取り戻そうとするためにてきぱきと話を進めるので、逆に打ち合わせはサクサク進むような 気がする。

 結局、夜中まで雨はふり続き、一日中まとまったことは何も出来ず。9時過ぎに家を出て、虎の子でポーランド語教室終えたK子と待ち合わせ。店に行くとまだ私だけだったが、店内、お客は知り合いらしい人が一人だけ。キミさんが、“うわ、うれしい。魔の火曜日に来てくれるなんて”と叫んだ。カキのオイル漬け、新ショウガの醤油漬けなどで飲む。K子来て、常夜鍋復活を喜んで、さっそくそれを頼む。雨止まずに客は知り合いさんが帰ったあと一人も入って来ず、、キミさんとバイトの子と四人で。いろいろ話しながら。閉店時間になり、キミさんが“『すし好』行こう!”と言いだし、店を閉めて三人で。それまでさんざ飲んでいたところにさらに酒が入り、もうナニがなんだかわからなくなる。“××は腹が立つ、こんど会ったら殴ってやる”とか言うような話になって大笑い。雨の日にあまり飲んではイカンですな、べろんべろんになってしまう。べろべろにはよくなるが、べろんべろんは最近珍し。帰ったときにもう二日酔いの症状だった。しかも2時。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa