裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

28日

金曜日

東大門本の世界

 ソウルの市場歩きガイド本を徹底批評!(東大門はトンデムンと読みます)。朝、8時半起床。朝食、元に戻ってトウモロコシとサツマイモ、クレソンの蒸したの。果物はオレンジ。朝、『男の部屋』原稿一本書いてメール。河出書房Aさんから電話。藤野一友(中川彩子)特集のこと。やはり、関係周囲の人間がちょっとした奇人揃いで、弱っているらしい。夢ムックの澁澤本は重版したとのこと。したのなら、あの文章も前後のつながりがおかしくなってしまっている箇所があったので、ナオシを入れたかったのだが。夏と秋に連続して本を出したいらしい。来週打ち合わせを約す。寝不足でどうも調子出ず。平塚くんの事務所から同人誌ゲラ届く。

 昨日、2次会でJCM関係の人たちとコスモスのこと話した。やはり円谷関係、相当苦しい状況らしい。それと松本零士のダビデの星事件、ちょっと前に松本センセイがらみで変な動きのウワサが伝わってきたが、これか? と思う。とにかくオタク関連受難の年である。元・志加吾に“つらいのはアンタだけじゃないんだからね”と言葉をかけた。なぐさめになるのか。12時、どどいつ文庫伊藤氏来。ここの目録をコミケで配布することを話す。

 昼は参宮橋でノリラーメン。帰りのバスを待つがいっかな姿見せず、待ち合わせ時間に遅れそうになってあわててタクシーで渋谷まで。高いラーメンになった。2時、時間割で太田出版Mくんと待ち合わせ、の筈であったがこっちも姿を見せない。20分遅れで汗だくになって飛び込んできた。高橋敏弘記事の号を手渡され、今後の展開などについて話す。他に、彼が編集した天久聖一『バングラデシュ日本』ももらう。全ページカラーという凄い本。天久という人物は“意味”というものを憎んでいるかのような男だなあ、と読んで思う。もちろん、その表現は意味がある(と、信じて)創作された過去のさまざまな作品のコラージュで成り立っているのだが、天久はそれらを記号化し解体して徹底した無意味の世界を描き出す。以前聞いた彼の家庭(ことに父親)というのが破天荒なまでに無軌道だったらしく、また後に彼が就職した神戸の施設のヤク中・アル中患者たちの電波言動が、若い彼の人生観に大きな影響を与えたようだ。そうでなければここまで人間、“意味”によりかからないものを描けたものではない。とまれ、Mくんはこれで睦月さんに約束した、20代に一冊、自分が本 当に作りたかった本を出す、というノルマを果たしたことになる。

 2時45分、一旦家に帰り、3時、また出て時間割。テレビ東京『芸術に恋して』制作プロダクションM氏。テーマは怪談ということで、夏目漱石・森鴎外、芥川龍之介等の文豪がなぜ怪談のような小説を書いたのか、ということでインタビューしたいという。“もともと番組の発想は唐沢さんがユリイカで書いた『漱石とオカルト』を読んだことでして”と言うので、ざっとその理由や時代背景、近代という呪縛とのきしみなどを話すと、“あ、もうこれで番組が出来ました”などという。そのくせ、私はビデオインタビューどまりで、スタジオには招かれない。そっちにはタレント系文化人が出るらしい。どうもこのへん、納得いかないところである。

 それからすぐに新宿に走り、数軒書店を回って書評用の本を物色。道新のトンデモ本書評である。いや、実際はもう今回取り上げる本は決まっていて、『ひとが否定されないルール』なのだが、これをトンデモ本と言い切るには“笑えない”という難点があり、躊躇していたのだ。オカルト関係の棚を見て回るが、それに変わるものもなし。滝本弁護士の『異議あり! 奇跡の詩人』(同時代社)が出ていたので、これと合わせて取り上げることにする。帰宅、『異議あり〜』をざっと読む。

 飯面さんから電話、ちょっと長話になってしまう。原稿急いで書き出し、8時には完成させてメール。焼鳥屋『パパズアンドママサン』でK子と夕食。帰ったらもう、ゲラが届いていた。こっちはその情報で頭の中があふれかえっていたので“ドーマン法”とかFCとかについて何の説明もなく書いてしまったが、一応ざっとした解説を入れてほしいとのこと。メール数通、I社のFくん、ついに退社とのこと。これでこの会社には社長以外、連絡取れる人がいなくなった。文庫化の際のトラブルもあり、もし引き継ぎの人がいないのなら、版権、彼がまだ社にいるうちに引き上げようかと思う。もひとつはウルトラマンコスモスがらみ。被害者がアレは狂言だった、と告白したとか。と、するとこれは冤罪事件としてほとんど日本最大の被害額を出した事件となるか。しかし、まだ様子見の必要はあるようだが。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa