9日
日曜日
アッシジには関わりのねえこってござんす
世俗の富や名声に未練はござんせん(聖フランチェスコ)。朝8時15分起床。窓を開け放して寝たが涼しい々々。朝食、サツマイモと黄ニラのスープ、ブドウ。小青龍湯、黄連解毒湯、ユチーフ(胃薬)。サンデーモーニングで各国のW杯報道を特集していたがこれが国民性丸出しでバカ面白い。トルコ戦で審判の誤審で勝てたブラジルではあの審判のファンクラブが出来たとか。K子が吹き出していた。
母から電話、急に川口松太郎の小説が読みたくなったから探して送れ、とのこと。ネットで調べてみたがほぼ全ての著作が絶版状態。古書店行くしかないか。鶴岡から電話。いつもは彼との会話はテンションがぐんとあがるのだが、今日はちょっと、妙にダウナーな感じとなる。向こうがはしゃぎすぎているということもある。はしゃいだように語りながら、何とかこっちの影響下から脱しようとしているのが如実にわかる。彼は今、志加吾とのコンビに燃えているようである。それを勧めたのは私だし、正直、これで、かなりのところまで行けるだろうと思う。成功してもらいたいと思っていることにウソはない。しかし、その結果、また若手ライターがこっちの業界に一人、いなくなることになる。どうも下の世代が育たぬ業界である。
メールでも、先日の件についていくつか情報が入る。苦笑するようなもの多し。ロフトの斎藤さんから、オールナイトで十月にまた立川流のトークをしてください、という件。やりたいことはやりたいが、さて、また同じ形でやることに意義があるか?もう少し、それぞれが“答”を出すまで待った方が賢明なのではないか? と、ココロいろいろに乱れる。今度は三部に分け、最初ブラック・談之助・私、二部が談生と私、三分が志加吾・鶴岡と、分けてやったらいいのではないか、と考える。そう言えば炙り屋でいきなり斎藤さんが“結婚しようかと思いまして”と言いだしたときにはオドロいた。私や開田夫妻がエッ、エッ、相手は? と訊きこんだらイエイエ、思っただけですと口を濁していたが、果たしてどこまで本気か。
横になって『中世都市と暴力』(ニコル・ゴンティエ著、白水社)など読む。語られている内容は興味深いが叙述が極めて読みにくく退屈である。トロトロとしてしまう。冷蔵庫にあった鍋の残りに辛子味噌で味をつけ、冷や飯をぶちこんでおじやにしてかきこむ。2時、青山まで出る。さすがに人通り多し。古道具屋など冷やかす。
帰宅、海拓舎やり、さらに夏コミ用の同人誌のラフをざっと立ててみる。オモシロイものにはなるはずだ。ネタ整理の途中、自分でゲラゲラ笑ってしまったくらいである。6時15分、渋谷駅まで出て山手線で恵比寿。トランスギャラリー『ゑびす秘宝館』へ。自衛隊の防衛研究所などがある、薄暗い道を歩いていくと、鳥羽にあった秘宝館おじさんの巨大な像が路上に置かれていて異彩を放つ。早めについたので路上で待っていると、通行の若い連中がみんな“なんだコレ”“気味悪いけど面白そう〜”などと反応する。インパクトは充分。
ささきはてるさん、K子、講談社Yくん、開田夫妻、裏モノのやがもんさんと7人で入館、展示物を見る。鳥羽にこの取材に行ったのは98年のことだったか、凄まじくインパクトのある取材であった。さすがに展示場所が場所だけに今回は少し“アート”に近くなっているが、その猥雑さは変わらず。入り口の秘宝館おじさんもそうであったが、設置に金、かかったろうなあ、と思う。
恵比寿の住人のYくんの案内で、フカヒレ専門店『筑紫楼』に入る。メニューにフカヒレマークが描かれている。Yくんによると大変な人気店で、いつもは予約しないと7時台には絶対入れないそうだが、今日はガラガラ。やはり日本・ロシア戦をみんな見ているのか。だとすると、W杯もわれわれサッカー嫌いになかなかの恩恵をもたらしていると言えそうである。厨房の近くの席に座ったが、厨房の広さと料理方の人数の多さ、店員の数の多さに感心する。こうでなくちゃサービスは出来ない。もっとも、お冷やをK子が二回も繰り返して頼んだのに、なかなか出てこない。船頭多くして、か。料理はさすがにフトコロを考えてフカヒレ姿煮込みとかは遠慮(まあ、他の店に比べればさすが専門店で安いが)、フカヒレ入り土鍋ラーメンなどにする。マコモ筍の炒め物、車エビの蟹卵和えなどがおいしかった。薄味なのが今風。雑談多々、Yくんには次回連載のタイトル案を伝える。デザートの杏仁豆腐が濃厚。あやさんが 食べてた黒酢のアイスクリームも一口もらったがさわやかであった。
10時帰宅、鶴岡からまた電話。興奮気味にいろいろしゃべっているがウンウンとうなづくきり。紹興酒の酔いで頭がぼんやりしている。変にこっちを思い入れたっぷりに尊敬されても困るのである。言う通りにはなれんよ。