裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

24日

月曜日

タランチュラでしゅ

 次回は『毒グモ大騒動』『網にかかったフネ』『カツオ踊り狂い』の三本でしゅ。朝7時50分起床。朝食、トウモロコシとカリフラワーの蒸かしたの。ネギスープ。青いものは切らしているのでリナグリーンをのむ。と、いうか、これずっとのんでいればいいのか。サッカー騒ぎの間に阪神は6連敗もしている。大阪旅行中には鉄砲光三郎が死んだ。若い人などは知らないだろう。実は私もよく知らない。とはいえ、その目立ちすぎる名前は子供心にも深く刻みこまれていた。一番印象深いのは『天才バカボン』の中の“一般人が鉄砲持ってたらいけないんだもーん”“そんなこと、国会で青島幸男が決めたのか?”“鉄砲光三郎が決めたんだもーん”“うーむ、かなり昔から決まっていたのか……”というセリフ。しかし、こういうアホらしさの極みのような会話が、赤塚不二夫って人はつくづくうまかったな。

 快楽亭の師匠から電話。7月27日空いてますかとのこと。上野広小路亭の出演依頼。ヒルヨルとってあって、昼席は快楽亭独演会、夜は上野のアラジンの主人に冠させて、“大人のオモチャ寄席”だそうで、そこで大人のオモチャウンチク講座を一席語れということに。面白そうなのでもちろん引き受ける。その翌・28日はボックス東中野で宇宙戦艦ヤマトトークである。イベントの夏であることは今年も変わらず。しかし広小路亭だのボックス東中野だの、快楽亭の回るようなとこ回るようなとこで私も仕事していることである。

 以前日記に書いた奥平広康くんの消息、いまだつかめず。と学会MLで訊ね人を出し、植木さんや太田出版のHさんから報告あるも、行方知れずのまま。本気で心配になってきた。彼のことだからまたひょいとトンデモ落語会やコミケに顔を出すとは思うのだが……。

 11時半、銀座へ出る。OTC『平成極楽オタク談義』録り。前回、日記で“弁当を出す金もない”と毒づいたら、今度は用意されていた。言ってみるもんである。場所が銀座だけに辨松の弁当である。ゲストのロッキー江藤さんと話しながら食べる。さすが老舗で、今どき珍しい木の折詰の弁当箱である。おまけに内容も伝統的で、芋の甘煮、卵焼き、蒲鉾、鰆の味噌焼きと味付けの濃いものばかり。きんとんがちゃんと入っているのには感心するというか、呆れるというか。いまどききんとんを喜んで食う人がいるのだろうか。伝統好きな私としてはうれしいが、甘味がごちそうであった昭和二十年代までの感覚を未だそのまま保っているのは伝統と言うべきかどうか。江藤さんが箸袋を見て、“http://www.benmatsu.co.jp”のURL表記に“ここだけ伝統ぽくないなあ”と苦笑していた。ともあれ、銀座でなければもう食えない弁当、かも知れない。

 遅れてきた岡田さん、柳瀬くん、もう一人のゲストあさりよしとお氏と雑談、最初の回のお題は『アポロ計画』、これは岡田さんの発案。もうハナから盛り上がる盛り上がる。ディレクターのNくんも心配して、“あまり打ち合わせで盛り上がらないでください”と止める。あさり氏は頭を坊主にしてタオルを巻いて来る。氏とは去年、例のSF大会での一件があるが、双方その件には触れず。いちいち気にしちゃいられないくらい話が面白い。それにしてもこのゲストお二人&岡田さんのアポロに関する知識というのは凄い。何を訊いても答えてくれる。この一般人置いてきぼり番組が、案外評判がいいというから面白い。本にしようよ、とNくんをそそのかす。私の進行もそろそろイタについて、話にキリをつけてトークを終わらせるのが上手くなってきたように思う。

 続いてがあさり氏居残り、新ゲスト佐藤良平氏でお題が『ビデオデッキ』。これは私の発案のもの。岡田さんの提案で中休みほとんどナシで始める。岡田さんもアドリブ人間で、楽屋での話と同じ話題は出来ない人なんである。いやあ、これまた濃いこと。若い人間はついてこられるかというもの。回りで撮っているスタッフが笑いを噛み殺しているのがよくわかる。例によって“そろそろまとめてください”のフリップが私に出るが、自分自身、今回は終えるのが惜しかった。

 番組終えて、“今日は仕事があるので”とお先に失礼させてもらう。タクシーで帰宅。仕事机に向かうが、収録終わってNくんと柳瀬くんが“今日はちょっと全員、異常なテンションでした”と言っていただけあって、いや、エネルギー使い果たしたという感じである。ヘタッとなって、キーボードに指を置く気になれぬ。腹も辨松の折詰弁当だけではちと足りぬ。明日の朝食の材料などを青山まで買いに出て、そこで立ち食い蕎麦屋に飛び込み、冷やしタヌキを啜り込んで、なんとか夜までの虫やしないにした。

 7時半、K子とタクシーで職安通りドンキホーテ前まで。そこから歩いてグリーン食堂へ。『ゑびす秘宝館』同人誌打ち上げである。編集の伊奈さんが“嫌煙家の宴”とシャレで出したら愛煙家の睦月さんが怒った。伊奈さん、あわてて藤沢まで謝りに出向いたそうである。おまけに同人誌に睦月さんの名前が“影朗”と誤記されていて睦月さん“普通、開田裕治の方を(裕司とか祐治とか)間違うだろう!”となんだかわからん怒り方をしていたそうだ。グリーン食堂、今日の参集者は都築さん、伊奈さん、平塚くん、開田夫妻、我々夫婦、都築さんの秘書の美女、辛酸なめ子さんにフルカワエツコさん。

 テーブルの関係で、都築さんともっぱらしゃべりながら犬鍋、豚足、ネギチヂミなど。サニーレタスとエゴマの葉に豚足の切り身を包み、ニンニクと青唐辛子をつけ合わせにして食べる。普段は青唐辛子は遠慮しているのだが、梅雨バテ気味なので何本か試みる。それほど辛いのには当たらず、しかし胃が活性化してくるのがわかる。都築さん、鳥羽の秘宝館の人形は買い取ったが、伊勢の秘宝館もそろそろ閉館の情報がある、カラサワさん、買いませんかと持ちかけてくる。置くところも金もないが、しかし、秘宝館のオーナーになれるというのはなかなか、オトコのロマンという感じがする。また札幌の坂ビスケット本社にあるレトロスペースに是非、お行きなさいと進められる。Web現代の次の連載で取材しようか。

 辛酸なめ子さんとフルカワエツコさんは終電の関係でほどなく帰る。あまり話が出来なかったのは残念。都築さん、“7月末に打ち上げやりましょう”と話す。しかし最終日も東中野なのだよな、私は。そのあと、開田夫妻とコスモスばなし。11時、冷麺食って解散。帰宅したらライターNくんからコスモス情報。杉浦太陽擁護の子供たちの嘆願書FAXが松竹に続々届き、その熱意に会社も再編集して上映に決定したというが、ホントに子供たちの筆になるものかどうか。日木流奈方式なんじゃアないか、などと話して苦笑。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa