裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

8日

土曜日

カフカのおっちゃん

 目エ覚めるとな、ワシ虫になっとってん。朝、8時15分起床。朝食、黄ニラのお粥。テレビでサッカーのデータを見る。どこが勝った負けたどういう試合だったには興味がないのだが、その周辺のバカ騒ぎは大好きである。実況のあのブッ翔びぶりは凄い。ストレスのたまった労働者階級がその解消のために考案したスポーツなのだなということが。これほど露骨に見えるものもちょっとない。現代に最も適したスポーツだろう。逆にストレスを好む上流階級はクリケットなどという、世にも悠長な競技を開発したわけである。

 こないだの日記でタイトルの駄洒落のリストを作らねば、と書いたら、作ってくれていた奇特な方が何人もいて、送ってくれた。まことにありがたい。日記書き冥利に尽きるとはこのことである。感謝々々。ねだりついでに、アイウエオで検索できればもっとありがたいのだが。

 昨日の炙り屋での打ち上げ、もったいぶって明日書くとか記したがナニ別段大したことではない。日記書く時間がなくなっただけ。ロフト終わってPマン作っている創映会のY氏、自衛隊のY田氏、福原鉄平くん、阿部能丸さん、JCMのMくん、セブンシーズM川さん他。その他と学会関係やオタク関係、裏モノ関係の人々と挨拶、いろいろ雑談。打ち上げは20人ほどで炙り屋へ。談生は急に帰ります、と言ったが、あまりこの座にいるとヤバい、と思ったのではないかと思った。志加吾となにやらヒソヒソ話していたが、励ましているようでもあり、ロクでもないことを伝えているようでもあり。かたくなに志加吾が話さないところが怪しい。

 炙り屋は金曜日でさすがの込み具合。開田さんと業界ばなし。ひし美さんはやっぱり豪傑であるねえ、というようなこと。M田くんは“古典落語を知ろうと思って今、読んでるんですがあまり面白くなくって……”と、ちくま文庫の桂文楽集を出してみせるので、アアこりゃ飯島友治編集でしょう、この人のはオモシロクないですと切って捨てる。例の談志の“いうこと聞いてたらうれなくなっちまわアね”の人である。快楽亭、談之助両師と、今度全女見に行こうと話す。談之助さん“しかしミゼットがなくなったのは残念です”。海外ではこういうのは逆に自分たちの職業を奪う、と訴えられるのだが。斎藤さんがギャラを配分してくれる。さすがに入った。2時半、タ クシーで帰った。

 昼飯は参宮橋でノリラーメン。とにかく今日じゅうに講談社Web現代、片付けねばと猛攻をかけて、ちょっとゆがんだ出来であるが原稿、4時半までに9枚、アゲ。新宿に出てマッサージしてもらう。今日は若い坊やみたいな笑顔の先生で、肩をつかんで、“うひゃあ、こりゃうれしくなるような凝りですね”と、十分に揉みほぐしてくれる。休息室にいるサラリーマンがずっとイングランド対アルゼンチン戦の話。アメリカはなぜサッカーが嫌いか、という考察で、うるさいが面白かった。

 タクシーで大久保へ。駅で待ち合わせ、チュニジア料理『ハンニバル』で羊の丸焼きを食おうという会。兎にくらべ羊は大きいので、総勢17名という大所帯となる。GHOST、鈴之助、かなえさんなど裏モノ系、植木不等式、立川談之助、ひえだオンまゆら、睦月影郎などいつもの面々、それに国営放送Yくん、Web現代I、Yの新旧担当者。

 モロヘイヤのスープがなにか味噌汁みたいで結構、次に豆いろいろとフェタチーズのサラダ、オジアなる野菜とソーセージの煮物。これが日本に渡っておじやになったのであろう、古代チュニジアは日本だった、などとバカ話。気楽院さんとひえださんは幸福の科学の会誌だとか薔薇族だとか、ちと人に見られてはヤバい物件を見せあってキキキ、と笑っている。そして羊の丸焼き。もっとも、5キロ級の羊がいいのがなかったというので8キロの大物になり、姿焼きはオーヴンの関係上出来なくなった、と三つ割で持ってくる。三つ割でも大したものである。胸のあたりの肉が肋骨ごとドン、とテーブルに置かれると、みんな歓声を上げる。足を一本、むしりとってかぶりついたが。野生に帰ったようで大変に結構。8時間かけてじっくり焼いたとかで、脂が落ち、羊くささがまったくなかった。鶏のような味になる。その点では内蒙古飯店のあの強烈な羊臭にまみれた野蛮さが懐かしい感じである。

 睦月さん、ひえださん、かなえさん、談之助夫妻といろいろ雑談。ちと外聞をはばかるような内容につき省略。店は満員の状態で、しかも次々人が来ては中をのぞいて驚いて帰っていく。W杯でマスコミに取り上げられた効果の凄さ。ムッシュモンデール、大奮闘である。デザートはゴマのババロア、それにイチジクのブランデー。おいしくてひえださん睦月さんとおかわりした。かなえさん、この日記に料理のレシピがなくなったのが惜しいという。植木さんとIくんはモロヘアヌードとか、駄洒落合戦を繰り広げている。これでこの二人東大出である。談之助さんと教養とは何か、としみじみ話す。食って飲んで、11時過ぎまで。代金一人一万ちょっと。さすがにちと高いが、これは羊でなく、ワインがぶ飲みした値段。11時半まで。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa