裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

11日

火曜日

オスシ、ガンプラ、スキヤキ

 ミンナ日本の名物デース。朝6時目が覚め、また眠って7時半起床。何だったか忘れたが悪夢を見た後の呼吸の空回り感。朝食、私はいつも通りサツマイモとトウモロコシ。K子にはトウモロコシ炒めとトースト。ニュースもW杯は中休みらしく静か。昨日のロシア戦後のニュースでは、日本までわざわざ観戦に来たジリノフスキーが、負けた後のインタビューで“選手たちがサボっていた。全員クビだ!”“監督は収容所行きだ!”とわめいていた。非常にわかりやすくてオモシロイ。日本でこれ以上わかりやすいキャラクターは“ロシア戦で勝たないと北方領土が帰ってこない”と言っていた石原慎太郎くらいか。マスコミの発達は結局、わかりやすいことを言う政治家ばかりを突出させる。わかりやすいイコールいい、ではないんだけどね。

 英語翻訳ソフトの古いのを引っぱり出してきて再インストール、試してみるがやはりほとんど使い物にならず。しかし調べてみるとマッキントッシュ用で期待できそうな翻訳ソフトってほとんどない。バテた体にむち打って仕事。しかしながら進まず。この季節は仕方ないんだが仕方ないなどと言ってられない。田谷力三の浅草オペラのCDを聞きながらやる。

 昼はレトルトのカレーライス。食うとバテることはわかっているんだから、この季節はいっそ昼を抜かそうか、と思う。2時、家を出て新宿、総武線で新小岩の造形工房ビショップへ。品田冬樹さんの作った『くもとちゅうりっぷ』のてんとう虫のフィギュアを見に行く。駅からタクシーに乗ってくださいと指示されていたので並んで乗り、森林公園入り口近くで、迷いもせずすぐわかった。品田さんと挨拶、さっそく見せてもらう。オオ、という出来。思っていたより日本風な顔でなく、キューピー人形を思わせる西洋っぽい顔である。そう言うと、“みんなにそう言われるんですが、あまり原作に忠実にやっちゃうと引く人も出るんじゃないかと思って”とのこと。ただし体型はちょっとスマート過ぎたので、実際にはもう少し幼児体型にするとか。

 二階の事務所でしばらくアニメばなし、いつしかB級ホラーばなし、海外エロキャラばなしに脱線。B級はB級というジャンルで確立したもので、金をかければA級になるというものじゃないし、金をかけたものが優れたものになるとは限らない、という意見で一致を見る。中野貴雄くらいしか今、日本にその精神をわかってやってるB級作家はいない、と二人で盛り上がる。今度中野監督、新作撮るらしいと言うと品田さん、“ああ、うちに仕事依頼こないかな”とつぶやく。“金にならぬ仕事ばかり喜んでやる人”と聞いていたが、まさに筋金入りだな、と感心する。品田さん、奥からどんどん海外で買ったエロ漫画などを出してきて、ここがいいあそこがいい、これを今度はフィギュアにしたい、などと言い合って一時間半経つ。試作フィギュア一体と資料写真預かって帰宅。行きの総武線の窓外風景、照りつける日光に映えて輝いていたが、帰りはどんよりとした雲の下で、非常につまらぬ街に見える。

 帰ってすぐパソコンの前に座るが、テンション値が下がりっぱなし。どこかに穴が開いて漏れているようである。田谷力三のCDがついていた清島利典『恋はやさしい野辺の花よ』(大月書店)など読む。田谷の評伝という形をとっての浅草オペラ盛衰記。草創期のオペラ関係者がオペラを上流階級に根付かせようと血の涙で努力し、その切り札として彼らが見いだしたスーパースター田谷のキャラクターひとつで、あっという間にオペラが大衆娯楽の代表として浅草に根付いてしまった皮肉。これは著者の意図したテーマではもちろんないが、その視点で読んでみると、悲喜劇も悲喜劇、 まさにオペレッタの題材みたいな感じのストーリィである。

 9時半、家を出て東新宿。タクシーのカーナビの画像に映る東京の街路がやたらにカッコいい。幸永でK子と焼き肉。ポーランド語教室の連中はみな沈んでいたとか。例によっての極みホルモン、豚骨叩きなどの定番メニューだが、夏バテの腹に脂がやや、こたえ気味。財政の話などをいろいろ。夏バテなどしていられない状況である。明日からしかりやろうと決意。

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