裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

19日

日曜日

ミュシャの不養生

 アール・ヌーボー。朝7時起き。さっそく、好美のぼる先生の作品をと学会で発表する、という夢を見る。なんという単純さ。フロイトに叱られそうだ。他に、滝沢修(徳川夢声かも)が歌うヒデバロ・ソングのレコードを古本屋で聞く、という徹底してわけのわからない夢を見る。バランスが取れている。

 朝食、サラダスパゲッティとリンゴ。午前中に薬局新聞一本アゲ。と学会に持っていくブツの選定。母から電話。60の手習いで、いまパソコンを習っているそうだ。 “先生、マウスを動かすのと反対の方向に矢印が動きます”“カラサワさん、マウス が上下逆です”というやりとりに、豪貴が“『電脳炎』だ”とからかっているらしいが、本人は“だって、マウスと言ったらシッポは下にくるもの、と思うじゃないの。シッポが上に書いてあるネズミの絵なんてないわよ”と平気なもの。指先を使うことはいいことだと思うが、折り紙の研究書を何冊も出している好美先生も晩年はボケがきた。奥様曰く“指使っていればボケないっての、アレ、ウソよ!”・・・・・・まあ、先生は酒を飲まないかわりにノーシンを一日に何十服ものむ、というクセがあったからだと思うが(もともと折り紙に凝ったも、そのノーシンの包紙を使って鶴などを折っ ていたのが始まりだったそうだ)。

 12時過ぎ、家を出て駒場東大へ。20世紀最後のと学会例会。校門のところで、本日初参加のB級マンガ評論家、新田五郎さんと挨拶する。いつもの××号棟に行くと、なにやら別の学会のパンフレットなどを配っている。ありゃ、間違えたか、と一瞬ドキリとしたが、会場の教室に入るといつもの通り。そりゃ大学だから、いくつもの学会の研究会が行われていて不思議はないが。本日誘われて初めてきたゲストの中には、こっちの方に入ってしまった人もいるらしい。昼飯は、途中のコンビニで買ってきた焼肉弁当ですます。

 会の模様は、太田出版の日向さんが記録していたので、そのうち出る(だろう)本をお楽しみに。いつもの通り、爆笑と苦笑に包まれた数時間。不思議なもので、例会本が出るとなると、一般会員諸氏もみんなはりきって、いいネタを探し出してくる。イーハトーヴのあの本はお世辞にも出来がいいとは言えなかったが、マンネリズムに陥りかけていたと学会に、それなりの活性化をもたらした、とは思う。ただし、全員がそのような感じでハリキルもので、時間が延びる々々(延びるるる、とは読まぬ こと)。1時から始めて、十分の休憩をはさんで6時までかかった。その間、五分に一回は笑うもので、最後はクタクタになる。今日はK子までネタ(北海道新聞の永瀬唯の写真)を持ってきた。

 私のネタはシンプソンズのバカデカリュックをはじめ、数点。アメリカのやおい同人誌作家(スラッシャーと称する。日本の攻め×受けの“×”に相当するのがスラッシュ“/”であるため)のコンベンション記事を紹介する中で、その作者の女の子たちの写真を見せるのを忘れてしまった。これがどうにもイタくてよかったんだが。

 すでに外は暗くなっている中、渋谷に出て、魚や一丁で打ち上げ。前回もここで打ち上げたんでまあいいか、と思っていたんだが、駅から遠い上にここがなんともマズい。チェーン居酒屋でうまいものくわせるわけもないじゃないか、と言われるかもしれないが、それにしたっていろいろ手はあると思うが、テール鍋(?)は具がほとんどないし、ラーメンサラダには肉っ気がほとんどないし、鯨ステーキはひからびた燻製(マジにクジラスモークかと思った)みたいなものだし、これで三千三百円取りますか、というシロモノ。

 いいかげん腹が立ったので、終わって解散したあと、K子と、談之助、植木不等式氏、開田夫妻、FKJなどの面々と、大久保の幸栄に行く。こないだのスライステールと極ホルモン、それに豚トロ、豚タタキなどをむさぼり食う。豚タタキというのは豚の軟骨を包丁で叩いて食べやすくしたもの(ハモの骨切りのようなもの)で、コリコリしていて珍味。豚トロはいわゆる霜降り豚肉で、もう、一口喰っただけでコレステロール値が一気にハネあがるだろう、というもの。体に悪いものはやっぱりうまいね。ホッピーとマッコリをがぶがぶやって、豚足と冷麺食って、これで一人三千円。おい、一丁より安いぞ!

Copyright 2006 Shunichi Karasawa