裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

4日

土曜日

衆道一直線

 オトコの道に命をかけて・・・・・・。そう言えば司馬遼太郎がアメリカ旅行記の中で、かの国のゲイ文化のことに触れ、衆道の起こりから説きあかしていて、読んでいて先生、そりゃ違います、と思ったもの。朝7時半起き。朝食、サツマイモとネギスープ例の如し。K子にはベイク野菜。1時からBOOKTV収録のため、超特急で日記を書いてUP、その後また超特急で週アス一本、アゲてブツと一緒にK子に渡す。ヨンガリのことをネタにし、図版用ブツは二年前の韓国旅行のときに買ったヨンガリのボディガードベル。やっとこのブツを有効利用できた。

 風呂入り、12時、出かける。BOOKTVに出演の際は自分のお気に入り本を三冊まで紹介できるのだが、今日は筒井清忠『時代劇映画の思想』(PHP新書)と、神野オキナ『南国戦隊シュレイオー』(ソノラマ文庫)、それに立川志加吾『風とマンダラ2』(講談社)の三冊にするつもりが、『風とマンダラ』が、確か著者謹呈で送ってきていた筈、と思っていくら探しても出てこない。どうやらこちらのカン違いで、もともと送られてなかったということがわかる(送られていたのはチラシのみであった)。あわてて行きがけにパルコブックセンターで一冊だけ残っていたのを買い求めて、天王洲アイルのスタジオまで。車中、読んでみたら私ばかりでなくK子まで出演していた。この回は見逃していて知らないでいた。

 1時5分遅れで到着、打ち合わせしながら弁当を使う(コンビニで買ったおろし立田揚げ弁当。飯がワカメゴハン。コンビニ弁当もたまに食うと案外美味也)。収録、1時半開始。冒頭の話題は世紀末進行のこと、それからニュースでは神田青空古本市のこと、ベストセラー紹介では女子マラソンの小出コーチの本が二冊も入っていることを指摘して、まるで金を取ることを最初から予想していたかのようなその凄さを語り、書店紹介コーナーは霞が関にある船舶関係書籍専門書店であったので、自分がホレーショ・ホーンブロワーシリーズのファンであり、船舶に関しての小説を読む場合には用語事典が必携であること、などをコメントする。以上、全てその場でのブッツケ本番である。以前、同じような番組に出ていたとき、中野貴雄監督に“カラサワさんなら、いきなり「コンニャクのことをオタク的に話せ」と言われても話せるでしょう”と言われて苦笑したことがあるが、われながら器用貧乏であることに時々イヤになる。ただし、便利な男ではあると思う。

 普通は途中で一回休みを入れるのだが、カラサワさんならいいでしょう、という感じで今日はそのまま後半までやっつける(実は少し休みたかった)。おすすめ本では『南国戦隊シュレイオー』を、言霊信仰をモチーフにしたユニークな内容もさることながら、作者が地の利を得て抜群の強みを発揮し、沖縄旅行をした人なら非常にリアルに場所の光景を思い描くことができる、バーチャル・SF観光ノベルにもなっている、と紹介。『風マン』の方はマグナム小林(昨日も風光寄席に出ていた)の話をしようと思ったが、マニアックすぎるので、前座生活のつらさを説明し、しかし中にはバイオリン弾く人もマンガを描く人もいるわけで、マルチな才能が最近は落語修行にも求められているのであります、てな話をする。作者お二人には勝手なナナメ読みで申し訳ない。

 この番組のコーナーで、街角を歩いている人に、今カバンに持っている本を教えてもらう、というのがあるのだが、今日のインタビュー場所は早稲田。最初に声をかけられた20歳の男(早大生)が持っていたのは雑誌『ファミ通』が一冊。ゲームはよくおやりになりますか、という質問に対し、ガッコの帰りにゲーセンで二時間くらいやって、家ではファミコンゲーム、それから通学の電車の中でゲームボーイ、と答えたのに呆れる。他のことをやる時間ってあるのか? 最後に読書クイズが出され、コナン・ドイルの生んだ名探偵といえばシャーロック・ホームズ、では江戸川乱歩の名探偵は? という問いに、このバカ学生、答えられないでいる。これで早稲田に入れるというのだから受験勉強というものがいかに意味のないものかがわかろうというもの。次にマイクを向けられたのが、60代のおばあさん。持っている本は英文法の本が二冊。“英語を勉強していらっしゃるんですか?”の問いに、“教えてます”と答えたのが笑った。さすが早稲田で、学生と教師ばかり。このおばあちゃん教授も、乱歩の名探偵の名はわからず。ムッとした表情で、“私は英文学が専門ですから、日本の本は読みません!”。それにしても、総勢四人に質問して、明智小五郎と答えられたのが一人(50代の古典文学の先生)きり、というのが意外であった。四人で統計を出すわけにもいかないが、ワセダ・ミステリ・クラブの栄光今いずこ、という感である。

 録り終わってトッパライでギャラをもらい、渋谷へ帰る。恵比須に建設中のゴミ焼却炉のエントツ塔が、未来少年コナンぽくてすごい。某出版社から手紙が来ている。ここの雑誌に連載を持っているので、その件かと思ったら、別の部所から。ちょっとオイシイ話なので、のってみよう。少し昼寝したら、体がゾクゾクしてきた。風邪は別に怖くないが、去年の暮れのようにインフルエンザが目にきたりすると、人前に出る仕事が連続するだけにちと困る。ユンケルとカコナールを飲む。7時、新宿行。東口のツタヤで、ビデオをあさる。児嶋都さんに偶然会った。

 K子と待ち合わせて、鳥源に入る。“あ、センセイ、いらっしゃいませ、いつもどうも!”と、例によってまるで大得意の旦那のような感じで挨拶されるが、本日は満席で追い出され、苦笑。K子の提案で参宮橋まで戻り、くりくり。ここのチーズフォンデュを味わう。他にシュシャリク、アナゴのオーブン焼きなど。赤ワインでホンワカ。帰って用心に麻黄附子細辛湯のんで寝る。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa