15日
水曜日
ギャラクシー生まれも育ちも葛飾柴又です
寅次郎超銀河伝説。朝6時に目を覚ましたら、まだ二日酔いで、ノドがパンパンに腫れている。昨日のホッピーと焼肉のせいだろう。ジュース飲んで、8時まで寝る。起きたら宿酔いもノドも大分回復していた。まったく、昨日はうまくて飲みすぎた。あのホルモンの、脂っこくてジューシーでトロけそうに柔らかくて甘くて体に悪そうな、あのオイシサは舌によみがえる。朝食、サツマイモと葱花湯。サツマイモは今日から紅あずま。固い芋で、レンジで下調理しようと思ったら中からハジけるように割れてしまった。それとブドウ、ミルクコーヒー。
午前中、某製薬会社PR誌原稿。いい仕事だからといって張り切って内容を濃くすると読者が読んでくれないから、ごくごくレベルを一般的に、と、言われているし、薄いものは当然書くのがラクなのであるが、薄いもの書いて高い原稿料いただくというのは、どうも良心がとがめていけない。
それから午後2時半までかけて週刊アスキー、一本書いてK子にメール。これはイラスト指定用で、文章は翌日朝くらいにミガキをかけて編集部に渡す。内容はイッキ書きが一番ノリよく書けるのだが、文章は最低一回は読み直して手を入れたい。最近はそれも出来にくくなっている。終えて昼飯、パックの御飯温め、レトルトのカレーライス。それから講談社Web現代原稿、校正チェックが入った部分を手直し。モノカキになったばかりの時分は、この校正というのが入るのを恥と思い、また“俺の書いたものを勝手にいじるなぁ”と、よく大ゲンカしたものだが、最近は“いやあ、いろいろチェックしてくれてすいません。楽でいいわあ”と思うようになっている。ダラクしたのか、システム内合理化に体が自らを合わせたのか。
3時ちょっと過ぎ、テレビ録りのため家を出る。時間ギリギリだったし、雨も降っているのでタクシーで東京タワー下の芝公園スタジオ。元東京12チャンネルだったところ。BSフジ『コンテンツファンド』収録。各種クリエイターさんたちが、自分の作品を直接持ち込み、電通、トミー、タカラ、コスパ、フジテレビ、ショウワノートなどの担当者に売り込むという趣向である。それに岡田斗司夫、私、小松沢陽一、陸川和男といったメンメンが勝手な批評を述べる、というわけ。
到着するとすでに1時間近くオシている。喫茶ブースで岡田さんと柳瀬くん交えて少し無駄話。岡田さんがらみのデマを某氏が流していることについて、書いた某氏の評論家生命奪うような決定的反証をオタキング側は持っているが、相手がもっとカミついてくるまで黙殺しているらしい。なかなか意地悪なことである。
4時半収録開始、のはずが、なにしろ第一回なものでダンドリに時間かかり、6時近くの開始となる。ブレーン席で小松沢氏や、内藤陽子ちゃん(“あの”内藤陽子ではもちろんなくって、同姓同名のアイドル女優)などとブツブツと文句言いながら待つ。なにやらフロアスタッフの数がやたら多い。二十人以上いる。大道具(われわれやバイヤーの席とクリエイター席が、最初は壁で仕切られていて、かけ声でそれが開く)があるせいなんだろうが、それにしたって多い。NHKだって半分程度である。司会は勝村政信。正露丸のCMに出ているんだとか。まあ、まだ第一回で決めの文句も入っていないだろうが、さりながらダンドリがいかにも悪い。小松沢氏と陽子ちゃん、『タモリ倶楽部』の収録の手際のよさを語る。まあ、長寿番組でスタッフが手慣れている、ということもあるし、タモリ自身がスタッフに指示を出せる立場の番組だから、それと比べちゃ可哀相ではある。アシスタントの女の子はさらにひどく、ほとんど台本ボー読みだが、これは後で声だけ撮り返させるつもり、らしい。最初登場のクリエイターさんは、その慣れぬダンドリにいちいちつきあわされて、気の毒のようである。6時過ぎ、やっと始まるが、終わったとき、思わず“これ、このまま流すんですか?”と訊いてしまった。小松沢・陸川両氏が苦笑しながら“そうらしいですね え”とつぶやいた。
もっとも、同じことを一回収録で四人ぶん四回、二回同時収録だから八回、繰り返すわけで、だんだん慣れてきて早くはなる。それに、クリエイターさんたちの作品を見るのは楽しいし、それにエラそうに批評タレる立場にいられるのは悪い気分ではない。岡田斗司夫絶好調で、番組のワク組にまで干渉してトバすトバす。ハイな彼に対抗しようとしても絶対かなわないし、他のメンバーは岡田リズムに慣れていないようなので、今回はひたすら彼の暴走の抑え役に回り、地味、かつマトモな批評役に徹する(番組終了後、“意外な抽き出しでしたね”と言われた)。小松沢さんの、若いクリエイターたちへの情熱伝わる人情家ぶりはいいキャラであった。お荷物になるか、と最初思われていた内藤陽子ちゃんが案外、いいツッコミぶりを発揮して、私などよりよほど番組に貢献。
・・・・・・収録前の打ち合わせでもみんな口を揃えて言っていたことだが、とにかく、今回出演の方々に限らず、若いクリエイターさんたちには共通の弱点がある。一つはテクニックは抜群なのに、みんな“どこかで見たような”可愛くてキレイな絵しか書かないこと。売り込みに必要なのは他者との差別化である、という認識が弱いこと。そのくせ、自分の作品や才能に対するプライドが強く、若いうち(新人のうち)から自分の方向性に対しガンコになりすぎること。さらにそのくせ、我が道をゆくというよりは、他人に何か言われたくないがゆえに、無難なものを創る方に走りがちであること。陸川さんなどと、“結局、誰に対しても同じことしか言えないんですよねえ”と話す。ところが、番組の収録が始まってみて意外だったのは、作品以上に、作者たちの個性に際だつものがあったことだった。“いいじゃん、この人の顔!”“一○○メートル先からでも芸術家ってわかる”“自分をどうして商品化しないんだ”と、ブレーン席でみんな、盛り上がる。
作品としては、岩井天志(『独身者の機械』の作者)さんの人形アニメ新作『玉 蟲少年』に、これはアニドウ出身者として肩入れせざるを得ず、またデザインでは加藤麻衣子さんのデザインとイラストレーションのちょうど中間のポジションである『パンダ』が、アイデア勝ち、という感じで私はじめ他の面々には大好評。神戸の藤井アキヒト氏は、その小動物的キャラクターが主に岡田斗司夫方面にバカ受け。
ただし、やはり不景気の時代、バイヤーさんたちはシビア。今回は二回とも買取りランプはとうとう点かず。『玉蟲少年』に交渉ランプも点かなかったのをはじめ、最高でも加藤さんの作品が交渉ランプ三つ、というショボさ。なにもここでOK出したからといって法的拘束が生じるわけでなし、ちょっとでも興味があったらランプつけてみて罰は当たらないと思うが。
収録、オシにオす。晩飯は8時ころ、豚肉しゃぶしゃぶ弁当が出たのみ。“これぁ日をまたぐか?”とカクゴしていたが、なんとか11時半には終了。タクシー呼んでくれたので、まっすぐ帰る。K子が家にいない。携帯で呼んでみたら、寿司屋で晩飯を食っていた。オリヅメ持ってきてもらい、寝酒二合ばかり、クリストファー・リーがホストのホラー映画予告編集などをビデオで見て、1時に寝る。