裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

24日

金曜日

兄ぃよ銃をとれ

「兄ぃ、いっちょう頼むぜ」
「おう、俺っちに銃を持たせりゃそら、百発百中よ!」

※開田さん画集コメント原稿

朝、起きると窓外どしゃ降り。
雨足の一本々々が電線なみに太い。
当然のことながら、テンション大さがり。
動くのもイヤになる。
バルゴン男。
まったく、溶けてしまいそうだ。

9時20分、朝食。
バナナジュースとトマトスープ。
食べながらも(というより飲みながらも、だが)気分が
どんより。

当然この雨では外出する気にもならず、
こういうどんよりな気分の日には
どんよりなものを見よう、と、YouTubeで
ピーター・カッシング主演のBBCドラマ『1984』(1954)
を見たりする。オーウェルの原作を通して、
30年後の未来をイギリスではこう、想像していたのか。
http://jp.youtube.com/watch?v=HPy0GGXYLRY
↑コメント欄にもあるが、2分50秒あたりのところで
マイクの影がやたらはっきり映っているのがご愛嬌。

白黒の古いドラマっていいなあ、と思う。
それは、情報量が限られているが故に、寓意を伝えられるからだ。
演劇とか、あるいは人形劇とか、表現に制限がある表現手段と
いうものほど、その埒の外に、多くのテーマを詰め込める。
映画に色がつき、撮影技術が進歩してくればくるほど、
情報量は多くなっても、情報の外にあるものを伝えにくく
なるのである。

昼はハンバーグ弁当。
母の室のファックスのインクリボンを取り換える。
それから入浴、一本電話。
要領を得ず、取り越し苦労的にモヤモヤ考えてしまうのも雨のせい。

開田裕治さんの画集のコメント原稿を6時までかかって書く。
これで何とか元気が出る。
雨もあがったせいかもしれない。

母の室で豚とレタスの水炊きで晩飯。
送ってもらった宝のチューハイ缶を2缶あけたら、
何となく気分もよくなってきた。
私はヤケ酒というのは飲んだことがないのだが
(気分が高揚していても落ち込んでいても変わらず酒を飲む)
飲む人間の気分もわかるような気がした。

いろいろ話して、自室に戻り、
さらにホッピー飲んで、さらにハッピーになる。
「お酒飲め飲め、太鼓も叩け」
というフレーズが頭の中にぐるぐるリフレインするが、
ググってもわからず。
昔、北原白秋とかの歌にあったような気がしたんだが。

白黒B級映画観たくなり、DVDでロバート・ヴォーンの
『恐怖の獣人』。ロジャー・コーマン監督の超低予算映画。
http://jp.youtube.com/watch?v=zWAzrxS8KmE
『紀元前百万年』で使われたワニとトカゲ(恐竜、という設定)
の戦いが流用されていたり、おっそろしくダサい怪獣のぬいぐるみ
(これも流用)が出てきたりする。まあ、ずっと昔テレビで見たとき、
「いったい何で、どう見たって原始人には見えないご面相の
ヴォーンを原始人役に起用したりしたのか」
とバカにしながら見ていて、ラストでアッと絶句した記憶があるが、
しかしそれにしたって、洞窟に暮す人間がちゃんとヒゲをきれいに
剃ってポマードをつけたような髪を七三に分けているのは不自然
きわまりなく、そこが実に楽しい。

1958年の映画で、原題は『Teenage Caveman(十代の穴居人)』
(ケースの解説によると、このタイトルはプロデューサーの
サム・アーコフがつけたもので、コーマンは不満だったようだが)、
ヴォーンの顔は原始人にも見えないが十代にも見えない。
まあ、実年齢もこのときもう二十代後半に入っていたわけで、
よくまあそんなタイトルをアーコフも。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa