裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

3日

金曜日

さんじゅうこわい

「あたしは三十になるのが一番怖い」(20代末で未婚の女性・談)

※どどいつ文庫さん来 書庫整理

朝9時起床。
そのときの夢。池袋の名画座の閉館記念演劇公演。
最後の最後の台詞でトチって、自分ではしまったあ、と思うが、
観客が誰も気がつかないようなのでホッとする。

9時15分朝食。バナナダイエットジュースにスープ。
頭がボーッとしていて、何も考えられず。
自室にもどって、日記などつける。
入浴するが、頭は洗わず。
湯上がりで冷えるとよくないと判断したため。

しかし、体調維持というのはゲームのようなもので
ハマると面白い。この二十年、体調の維持に関してはかなり
うまい具合にバランスをとってきて、食うだけ食って、
飲むだけ飲んで、そしてさまで体壊しもせず、
二日以上寝込むということもほとんどなく、五十の坂を越すまで
やってきている。今回の風邪はちょっとした油断で引き込んだ
もので、これをいかにうまく重らせずに消滅させられるかが
また、そこらのゲームよりよほど(当たり前だが)スリリングである。

熱で味があまりわからないが、母の作ったバーガーサンド、
美味。豆乳があったのでそれで。
K子からメールで、来年、講師の仕事が地方の大学で決まるかも
しれないので、そうしたら一年、東京を離れてそちらで住むかも、
とのこと。頑張ることである。

3時、家を出て渋谷へ。
車中、携帯に電話、全く知らなかった予定のことを言われてギョッと
するが、先様のカン違いとわかり、ホッ。
3時半、事務所。どどいつ文庫さん来たり、洋書数冊購入。
雑談。なんとか洋書のイベントをやりたいと思うが形をどうするか。
オノ、バーバラと話しあい、引越を来年一月に、と定める。
何とか年内にやりたかったが、もうあと三ヶ月しかないのに気づいて
ギョッとしたのである。書かねばならぬ書き下ろしは数冊以上あるし。

昨日の蔵書整理、続きを少しやる。
新事務所に書庫スペースをどれだけとれるか、という問題もあり、
まだ手探り状態。
とはいえ、とてもとても収拾がつかないと思っていた本棚の中身が
徐々に整理されていくのは快感。

作業中、体が極端に重くなり、どうにもならなくなる。
咳も止まらず、それもゴホンゴホンでなく、ゴボッゴボッ、と
いうイヤな音の咳。これは無理してしまったか、と思い、
早々に退散。バスで帰宅。車中、何度か意識を失いそうになる。

サントクで買い物して帰宅、とにもかくにもこういう状態で
腹に入るもの、ということで、扁炉にする。
妹尾河童氏の本で学んだ扁炉は、鍋のスープに塩と唐辛子で
食べるのだが、私は食欲のないときはポン酢で食べる。
そうすると、ツルツルという感じでどんな食欲がないときでも
入ってしまう(扁炉は鶏肉のぶつ切りと豚バラを干シイタケのもどし汁
で、白菜、春雨と共に煮る簡単な鍋物。扁炉という名称がそもそも
“ごく普通の鍋物”という意味だとか。コツは煮る前と煮えた後に
ごま油をたらりとひとたらしかけること)。

近くのレンタルビデオ店で一本200円で売っていた放出ビデオで
『ハリー・ポッターと賢者の石』を見る。
クリス・コロンバスの演出はいつもツボをきちんと押さえながら
それ以上に個性を突出させることのない徹底した健全娯楽作品で、
映画会社にしてみればヒット原作の映画化をまかせるのに
最適の監督であるが、映画好きには“面白いんだが何かひとつ、
物足りない”という感じを抱かせる人だったのだが、この
『ハリー・ポッターと賢者の石』に関しては、リチャード・ハリス、
マギー・スミス、ロビー・コルトレーン、ジョン・ハート、
イアン・ハート、アラン・リックマンから、カメオ出演の
ジョン・クリーズ、声の出演のレスリー・フィリップス(しゃべる
帽子役)に至るまでの英国のクセモノ役者たちの大量出演で
そこらへんがカバーされ、観た後の満足感が高い作品になっている。

ホッピー2杯飲み、もう一本、と思うが麻衣夢から
「飲みすぎ注意ですよぉ」
とメールが来たので、そこらでやめて就寝。熱も出てきた。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa