裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

1日

水曜日

♪あ、さて、さて、さては年金玉すだれ

ちょいと改竄(ひね)れば、ちょいと改竄れば、5等級下に早変わり。

※NHK『にっぽん巡礼』特番収録 朝日新聞書評委員会

朝3時45分ころ、目が覚めてしまう。読書しばし。
風邪気味、頭がボーッとして喉、痛む。
風邪をひくのも久しぶり。
一カ月公演終って、疲れが一気に出たのであろう。

5時ころ起き出し、ネットでニコ動映像集め。
妙に熱中してしまう。
7時、また寝る。夢を見る。
楽園で怪談の会。
ただし“逆怪談の会”で、まず幽霊とかオバケが出たところから
はじめ、それがどうして、いつ、どこでと、順序を逆に話していく。

9時半、朝食、バナナジュース、パンプキンスープ。
風邪だが狂はNHKの撮りなので、葛根湯を湯で溶いてもらい服用。
ラジオライフ原稿、普段なら楽勝で書き上げられる時間あったが
体調不良でわずかに1/3くらいを書き出したのみ。
弁当(煮物がお菜)も口つけられず。

2時、タクシーでNHK。
『ニッポン巡礼』秋特番収録。
控室のデリのサンドイッチ一切れつまむ。
オノによれば7月の読売テレビ『マジかも? ミステリーツアー』、
関東圏での放送が決まったとか。
岡田斗司夫氏との対談も、ちょっとMLの調子が悪いので
直にメールして当日の都合をつけてもらうよう、指示。

プロデューサーY氏と打ち合わせ、コメンテーター3人のうち、
高橋睦郎さんが“情”担当、八代亜紀さんは“直感”担当とやら。
私は? と訊いたら“取りまとめ担当でお願いします”と。

メイクして打ち合わせ室で高橋さんと挨拶。
いきなり宗教における稚児信仰、などというディープな話になり
私が高橋さんに
「天草四郎なんてのも、九州の稚児愛好文化で乱の首謀者に
奉られたんですかね」
とフると、九州出身の高橋さん、ヨカチゴばなしになって、
「福岡には食用のイソギンチャクがいましてね」
「ああ、ワケノシンノスでしたっけ」
「そう。翻訳すると、若えのの尻のス(穴)、つまり稚児の肛門
ですな。これから見てもあの地方の衆道文化は……」
と話が転がり、NHKのディレクターさんたち、
「凄い話になってきたなあ」
と笑う。

陣中見舞にYくん来る。
いろいろと番組で大変で、ホラリオンに行けなかったお詫び。
オノが
「奥さんだけでもいいのに」
と言ったら、
「ああ、どうせボクは女房のお供ですよ! わかってるって!」
と笑いながら。

収録開始。NHKにしては驚くほど豪華なセット。
発注先がなかなかいい腕を持ったところだそうで、Yプロデューサー
会心のセットだそう。司会のうじきつよしさん、中條誠子アナに
挨拶。高橋さんに続いて八代亜紀さん入る。
初めてお会いするが、イメージよりずっと小柄な可愛い感じの方だった。

番組内容は放映まで書けないが、うじきさんが途中で号泣したり、
なかなか考えさせる深い番組であった。
私の話、どうも長くなりがちだが、しゃべらせてくれるのは
有り難い。八代さんの天然っぷりにもやや、のけぞる。
これまで、オタ番組では憑かれたように早口でしゃべっていたし、
それを要求もされていたが、これだけゆっくり静かにしゃべった
のは私としては初めてではないか。
BSハイビジョンで10月11日(土)夜8時から放映、
その後同じハイビジョンで19日、BS2で25日に、さらに
地上波で11月3日(月・文化の日)に放映。

収録中、スタジオにでかいカマキリが迷い込んできた。
セットの樹木にくっついていたのかと思われるが、最近なかなか
見られない大カマキリ。
カーテンに張り付いていたが、スタッフがガムテープにくっつかせて
あえなく捕縛。収録後に帰る際、見せてもらい、
「逃がしてやってね」
と頼んでタクシーに乗り込む。

タクシーで築地まで。朝日新聞本社にて書評委員会。
車中でまた咳込みはじめる。
収録中は風邪をほとんど意識しなかった(汗をかなりかいて、
メイク直しが頻繁だったことをのぞけば)のは、やはり
収録モードに入ってスイッチングされていたからか。

今回の候補本、やたら委員会同士での花丸でのぶつかりあい
多し。一冊、“これは絶対H先生とぶつかるべえな”と
思ったのがあったが、果然、花丸で対決した。
私は今年の書評メンバーでは無専門の遊軍みたいな立ち位置なので
いつもはこちらでドウゾドウゾになるのだが、
今回のはちょっと譲れず。周囲もその対決を大いに無責任に
楽しんでいるみたいなので、前回、H先生に譲ったことを
盾にとって、何とか勝ち取った。
担当のN氏がこの分野の大マニアで、
「カラサワさんの花丸、嬉しいなあ〜」
と言ってきたこともあって、なのだが、考えてみればH先生も
Nさんの担当なのである。どっちにしたって、Nさんは嬉しい原稿
チェックが出来るわけである。

9時、アラスカで雑談。国際問題専門の某先生の近辺から
「ウルトラ兄弟は……」
という声が聞こえてきたのでギョッとして訊いたら、
なんと先生、ゴレンジャーのマニアで、戦隊もの研究家で
いらっしゃるとか。
「若い頃はSFファンでね、短編を翻訳してSFマガジンに載った
こともあります」
と。いや、人というのはわからないものであります。

Mさんとは前回犬食について話したが、奥泉さんにも
「犬食べましょう」
と言われたので、Kトシューにスケジュール算段をお願いしておく。
10時、タクシーで帰宅。今日はNHKからの往路で夕刻の
ビル街風景を見、帰路は夜も更けての同じ風景を見られた。
『にっぽん巡礼』で、最後に“人間が作り出した風景もまた、
心の情景になり得る”と結論だしたが、まさにこれだな。

帰宅時には風邪で頭ボー状態だったが、ニコ動画像ニコ動画像、と
病気のように収集を繰り返し、途中で昼弁当の煮物をつまみにして
ホッピー二杯。1時に就寝。しかしいい歳してバカだねえとつぶやきつつ。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa