裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

4日

土曜日

ブーフーウー警報

三匹の子豚が脱走しました! 狼さんはご注意ください。

※風邪回復 観劇二本ハシゴ@池袋

ちとミステリアスな夢体験。
ゆうべは寝てから夜半に咳と熱がひどくなり、一旦起きて
ロン三宝風邪薬と、アスクロンせきどめを一度にのんで、
またベッドに入った。

その、二つの薬に配合されている鎮痛剤成分による作用で夢を見た。
オレンジ色の光に包まれた南国の飛行場に私はいる。
私は東北の大学の名誉教授で、教え子をこの地方の大学に就職
させるためにおもむいたのだが、そこで病気にかかってしまう。
目の前には巨大な門があって、その門をくぐると死ぬ、と
魔法使いみたいな男が現れて私に告げる。
すると急速に手足が冷えてきて、瘧にでもかかったように全身が
ガタガタ震えてきた。手足の冷えは尖端から根本へと進んできて、
これが心臓に達したときに死ぬのだろう。
門は次第に開いてくる。
あわてて布団でしっかりと全身を包み(と、いうことは
この段階では目が覚めていたということであろう。
夢と現実が境目なしにつながっている)、じっとしているうちに
体中が汗ばんできて、熱くなってきて、助かった、と思うと同時に
半開きだった門がガシン、という音と共に閉じ、
目が覚めた。布団にくるまった全身は寝汗でぐっしょりと
濡れていたが、咳も止まり、熱も下がり、全身が軽い。
「あ、風邪、治った」
と思った。
たかだか風邪で死の門がどうこう、というのは大げさな夢だが
なにしろこの数日、体力が極端に落ちていた。その衰えが
病との体内での戦いを、こういう夢で形にしたのだろう。
とはいえ、夢に魔法の世界が出てきたのはあきらかに寝る前に
見たハリー・ポッターの影響。
夢に出てくるくらい印象に残っていたということで、
クリス・コロンバス監督、“個性がない演出”などと昨日の日記に
書いて悪かったです、すいません。

朝9時、改めて起床。
風邪は夢のおかげ(?)でほぼ回復したが、左側前頭に
片頭痛のようなもの残る。
9時15分、朝食。
どろりとしたバナナジュースコップ一杯、コーンスープカップ半杯。
今朝から服薬するサプリも、効果確認のためちょっと減らした。

体力回復のために今日はおとなしくしているつもり、だったが
予定を調べたら舞台のハシゴ(両方とも池袋)だった。
昨日でなくてよかった、と思う。

昼は母の室でとろろ蕎麦。
病み上がりに“栄養があるからとろろを全部飲みなさい”と
言われて、何か懐かしさを感じる。
ものを食うときに“滋養になる”という言葉をよく祖母の口から
聞いた。今のわれわれは、ダイエットなどのために滋養にならぬものを
選って食っているようなありさまである。

仕事やって、机回りがあまりに雑然たるありさまなので片づけていたら
汗をびっしょりかいて、シャツからパンツから全部取り換える。
やはり病み上がりだな。
そんなこんなで時間がなくなり、あわてて池袋へ。

池袋芸術劇場で、原田明希子ちゃんの所属する劇団スーパーグラップラー
公演『SHAMAN-BOY〜小角伝〜』をまず観賞。
相変わらず劇場の右から左へとめまぐるしく人物が行き来して
凄い量のセリフが交錯する。まだ公演中なのでネタバレは書かないが
基本設定中に、なるほど、これをもってきたか、というものあり。
膝を打った。

あぁルナのように、ギャグを大事にしてボケを必ず誰かが拾うコント的
演出に慣れていると、受けるギャグをこんなに扱うのはもったいない、
と思えるやりとりが多いのが気になるが、これは笑いより脚本を
大事にする演出法なのだろう。

主役を演ずる川野直輝は元ジャニーズ・ジュニア。
客は彼目当てのファンが当然多く、ほぼ全席満員御礼なのは
彼のキャスティング故だと思うのだが、こういうお客ははっきり
言って芝居の内容とかギャグを理解しようとせず(舞台というものに
慣れてないのでそもそも理解できないのかもしれず)、特にギャグは
すべる場合が多い。モッタイナイと思ってしまうのも事実である。
とはいえ、こういうやり方で集客する、という手法は現在の劇団の
主流でもあり、どうこれの上手いやり方を修得するか、も考えねば
ならないだろう。今回のこの舞台はそういう意味では成功例なのだ。

役者としてはもちろん明希子ちゃんの後鬼がいいが、
コンビを組む前鬼の伊藤今人のゴツいご面相がいい。
こういう顔の役者がいないと舞台は面白くない。
終って、パンフレット買い、出てきた明希子ちゃんに無理矢理サインと
写真をねだる。
しかし、ルナに出演していたときの明希子ちゃんは、かなりふっくら
していたのだな、と思う。

終って、キンカ堂で安物の普段靴を買う。私は足の形が変形している
ので、靴も履いていると変形してしまい、高価な靴を履けない。
もちろん、テレビなどに出演するときにはそれ用のいい靴を履くが、
つい、“どうせ俺の足など映らないし”と、安物の靴のまま出て
しまったりする。

それからシアターグリーンに回り、オノ・マドと落ち合って、
劇団カラーチャイルド公演『インセクターズ』を観る。
ハッシーのマネージメントやっているSさんがいたが、
ここの里中くんのマネージャーもやっているんだそうである。
席を二回も間違えて座り、ちょっとあわてる。

で、こっちの芝居は……いやあ、舞台って本当にいろんな
やり方があるんだなあ、と思えるもの。
素舞台で役者たちが演じる芝居はいままでもたくさん観てきた
(というか、そういうところに関係もしてきた)けど、
これはその最極端な例と言えるだろう。
とにかく役者たちが走り回りしゃべり回り踊りまくる。
里中くんからの公演案内に“今回は1時間15分と短い芝居ですが”
とあったが、役者の体力が、そこらで限界になる、ということだな
と観てわかった。公演期間が三日で五ステージと短いのも。

役者で注目していたのは、里中くんの他には前にノーコンタクツに
出ていた前田綾香さんだったのだが、もちろん彼女もよかったが、
“蚊”の役で出ていた多田井里沙という女優さんの、凄まじいはかなげ
さ(まさに蚊)にハマってしまった。ブログを検索したら、
いま23歳なのに、いまだに居酒屋で“年齢を証明できるものを
お持ちですか”と言われるそうである。このインセクターズは再演で、
以前はマイミクの市森くんがやっていたそうだが、どんな風に
演じてたんだろう?

ダンスは見事。あれだけ踊れたら気持いいだろうな、と思うほど。
それに比べて芝居とストーリー展開は役者たちがイッパイイッパイ
という感じだったが、そこが狙い、というか、限界まで必死で
やっている姿をまず、最前部に出してお客に呈示したい、というのが
演出意図なのだろう。粗削りなところに途方もない楽しさを
感じてしまったのは、私が演技願望のある人間だからだろうか。
いや、こんな体技芝居、やれと言っても絶対不可能であるが。
主催者の渡辺浩一氏、いいお歳だろうによくまああそこまで、と
思っていたが、後で聞いたら里中くんと同い年だそうである。

終って、同じく観に来ていた松原由賀ちゃん、麻見拓人さんなどに
挨拶、オノ&マドと近くの加賀屋に行く。昭和〜な雰囲気に
全員、大喜び。里中くんも途中で加わって、今日の舞台のことを
聞いたり、いろいろと雑談、歓談。

11時、丸ノ内線で帰宅。
山手線で新宿で乗り換えの方が15分は早いのだが、病み上がりの
体力で荷物が多く(しかも、急いで出たのでカバンの中に、家に
置いてくるべきものを出し忘れ、本などいろいろつまっていたので
重い)、乗り換えがイヤだったのだ。

メールチェック、文藝春秋、角川書店からそれぞれ面白い原稿依頼。
角川のは私を見込んでの依頼、文藝春秋のは記念イベント的依頼で
ある。焼酎を一杯だけ、追加して飲んで寝る。

※原田明希子ちゃんと。私の顔がやたら大きく見えるなあ。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa