雪男と雨男。

※書き下ろし原稿　アスペクト打ち合わせ

やはり気分的・体力的に落ち着くと長い夢を見る。
夢は五臓の疲れ、というが私は逆か？

ゆうべ吉祥寺を歩いたせいもあるだろうが、
東京郊外の住宅地の雑居ビルの二階にあるイタリアン・レストランで
編集と打ち合わせする夢。このビルには、日本でも歴史の古い、
某アニメ製作会社が入っている。
レストランは自家製生ハムとチーズが名物の店で、喫茶店替わりに
入ったのだがワインもうまかったので、もう夜だしここで
メシを食いませんか、近くに住んでいる作家さんたちも
呼びましょう、と編集が言う。

やがてやってきたのが知り合いの声優さんの家族親戚一党。
子供たちが飲み物を持ち込みするが、冷えてないので
店の冷蔵庫を借りて少し冷そう、と持って行く。
席に戻ると、作家や評論家たちがいろいろ来ている。
実在の人がたくさんいたが、みな、私とは微妙につきあいがない
（顔くらいは知っている）人たちばかり。

やがて、このビルのオーナーのアニメ製作プロダクションの人が、
「これだけ作家さんたちが集まっているのだから、うちの創設者が
昔、作った作品のパイロット版を上映してお見せしたい」
と言い出す。
『妖怪刑務所』というモノクロ作品で、ややアートっぽい絵と静かな
音楽に乗せて進行するアニメ。日本中の妖怪（というか自我を持った怪獣）
を収容した刑務所から、毎回一匹づつ妖怪が自由を求めて脱出するが、
後を追った刑務官にとらえられ連れ戻されてしまうという話で、
何か救いがなく、妖怪（怪獣）の巨大さをリアルに表現する、という
名目で、その全体像を出さない。部分々々しか見えない。
脇にいた親しいマンガ家に
「これじゃ放送されなかったわけだね」
と言って、ベランダに息抜きに出るが、外は手元もよく見えない
くらい真っ暗。
「こんなところで彼らは40年も前にアニメを作っていたんだなあ、
じゃあ点数をもっと甘くしないといけないかなあ」
などとぼんやり思う。

９時２５分、起床。
寝汗臭い体のまま朝食。
バナナジュースグラス一杯、温かいトマトスープカップ一杯。
サプリメント剤一式。

自室で日記つけ。
明日の日記用に、長い夢を見たときには忘れないうちにと
先にメモをとる。
実相寺昭雄監督の遺品の中の夢日記、あれは絵まで入った
凄いもので、本にして出版しないかと思うのだが、
手書きの文字が達筆すぎて読めないらしい。
桜井さん曰く、“あそこまで達筆だと悪筆の部類よね”と。

朝日新聞のゲラをチェック、それからＴ編集長の異動を
送る送別会の件でメール。
大阪行きの件（せっかくなので複数の案件を片づける）
で各方面にメール。

書き下ろし単行本原稿書き。
昼はカツ弁当。
ウスターソースをじゃばじゃばかける。

４時、新宿に出て、珈琲西武。
アスペクトＫ瀬さん。
打ち合わせは十分ほどで済み、その後、某超有名ジャーナリストの
失速の理由などをいろいろ。
あ、某書の文庫化の話もした。
最近のＫ瀬さん、頭を完全に剃っている。
ここに来る前に彼、新宿駅で十年ぶりくらいに知り合いの編集に
合ったのだが、相手もその間に坊主頭になっていて、いきなり
「何使ってる？　○○のバリカンはいいぞ」
などという話で盛り上がったとか。

別れて、買い物と思ったがタルくなり、
そのまま地下鉄で新中野に帰る。
途中でハッシーから電話。
サントクで買い物、メール等する。
一件、用事がバッティングしているのがわかり、ムシャクシャ。
仕事続けるのもタルくなり、７時半くらいからもう、メシにする。
カツオ飯、イカ明太、油揚焼き。

朝、古いアニメの夢を見たせい、というわけでもないが
（とはいえそれくらいしか理由が思い浮かばないが）、
白黒アニメを猛烈に見たくなり、ＤＶＤで『エイトマン』。
当時、放送が夕方６時からと早かったために、この番組は
家ではなく、隣の、母がやっていた美容院の待合室で見る
ことが多かった。後番組の『スーパージェッター』は
道庁の地下で見ていた記憶があるから、その間（エイトマンの
放送終了は昭和３９年、スーパージェッターの放送終了が昭和４１年）に、
母の美容院は道庁地下に移転したのだろう。

その後、岩波新書『紫禁城』（入江曜子）など読む。
著者はあの『教科書があぶない』（同新書）の著者で、あれは
被害妄想にかられたような筆致の、ちょっと困った本であったが、
こっちは面白い。