裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

26日

火曜日

ゴジラとミック・ジャガーでパンチ! パンチ! パンチ!

♪人(ブライアン・ジョーンズ)が作ったグループだけど〜。朝、隣りに寝ているK子が体をこずいたような気がして、ふと時計を見るともう7時半。おや、起きなくては、と思い、着替えて台所に行き朝ご飯を作って、K子を呼ぶ。新聞受けを見てみると、産経新聞が配達されていない。後で新聞店に文句を言わなくては、と思いながらコーヒーを入れていたら、そこにねぼけた顔で起きてきた彼女が、“なんで今日は早く起きるの?”と言う。早く起きるも何も、もうそろそろ8時、とテレビ画面で時間を確認したら、なんとまだ7時になるやならず。一時間間違えて6時半に起き出してしまったらしい。ではまだ新聞が来ていないのも無理はなかった。うちの祖母が晩年に、3時とか4時に起きだして、家の中が静かなので家族がみんないなくなった、と思い込み(ボケというのともちょっと違うのだが)、パニック状態になって玄関に転がり落ちて怪我をしたり、という騒動が何回かあった。オレもそろそろ晩年になって きたか、と苦笑する。

 朝食、K子にはクルミパンとカレンツ入り黒パン、私はトウモロコシ1/3本と枝豆のスチーム。果物は紀ノ国屋の400円の二十世紀梨。800円のを食ったあとだと、やはり落ちるように感じる。……これまでは喜んで食っていたのに。人間、上を知ると不幸になる。服薬、いつもの小青竜湯、黄連解毒湯、救心、百草胃腸薬の他に 先日からサプリメントの亜鉛カプセル。

 昨日送りますと明言して送れなかった光文社原稿、今日コソハと午前中からバリバリ筆をすすめ、1時半に完成、メールする。最初は乱歩作品の中における言葉使いの使用例といった、ちょっとアカデミックなものではじめたのだが、書いているうちに自分の編年的な乱歩体験の部分がどんどんふくらんできて、これはむしろこっちの方を主にしよう、と、全体の三分の一にあたる最初の構想部分を削除し、あらたなテーマで書いているうちに、その中で触れた少年探偵団シリーズの某作品のことがどんどんふくらんできて、イヤこれは、と驚き、こまごまとした体験談的部分を全部削除して、結局、一作品を通した乱歩論、というようなものになってしまう。乱歩のことなら気軽に書けるさ、と思い、全体像をほとんど立てずに書き出したおかげで、やけに 手間取ってしまった。400字詰め11枚。依頼より1枚オーバー。

 書き上げてシャワーを浴び、外出。外は蒸し暑く、気圧も乱れがち。夜半には雨の予報。チャーリーハウスの冷やし中華が食いたかったがランチタイムはすでに終了。やむなく兆楽で冷やし中華。駅前の三菱銀行で振り込み一件、のつもりが書きつけたメモが間違っていたらしく振り込めず。渋谷古書センターを冷やかして帰る。帰途、センター街でせむしの女性を見かけた。若い女性だったが、まだこういう病気があるのかと驚く。

 メールやりとり数通。打ち合わせの日取りなどなど。某社、及び某社から出版の企画に関する打診。どちらもまだ構想段階だが、一日に二社から、というのもまあ、近ごろかたじけないくらいの話ではある。4時、時間割にて村崎百郎氏と『社会派くんがゆく!』対談。久米宏じゃないけれど、このところ対談などでの頭のキレがしごく悪くなってきていて、それはひとえに記憶力の減退というか、とっさに事物や人の名前などが出なくなったり、また瞬発的なコメントが出なくなってきていたりして、もうトシであるか、と思っていたのだが、今日は人名もつかえずスラスラ出るし、コメ ントも好調。亜鉛のんでいるせいか?

 6時ちょっと前に終了。家に帰ってシャワー浴びる。湿気ひどく、全身がネバつく感じ。しばらく猫と遊ぶが、この猫ももういいかげん歳とっていて、猫じゃらしなどにもあまり反応を示さない。肉体的には、15歳(人間の年齢に換算すると90歳)にしては歯も一本も抜けていないし、階段なども跳んで上がるし、エサも一日に猫缶1/3をぺろりと食べるし、大丈夫かというくらい元気なのだが(今日の日記は年齢の話が多い)。台所で買い物を少し整理。湿気のせいで生ゴミがえらい臭気。

 7時半、博多のMさんからいただいた焼酎『豪放磊落』一本持って、下北沢『虎の子』で恒例・仙台野菜を食べる会。メンバーは平塚くん夫妻、とみさわ昭仁氏、開田あやさん。枝豆はあのつくんが“もう大豆寸前”と言っていたものだが、甘くて香り高くて、もう最高。大鉢いっぱいの豆がみるみる無くなっていく。それからトマト窯とでもいうか、完熟トマトをくり抜いて、中にモツァレラチーズのサラダを入れたもの。トマトも湯むきしてドレッシングに漬けてあるのでそのまま食べられる。

 あとキャベツの豚肉のせサラダ、モロッコいんげんと油揚のおひたし風、キュウリ炒め(これ、絶品)、ビシソワーズ(トロロ汁のように濃厚なもの)、ミニトマトのドレッシング漬け、タラモサラータなどなど。平塚くんに一行知識掲示板のデータの件、お願い。とみさわさんには、浅野耕一郎氏を紹介していただいたお礼。“彼、アツいですよねえ”“アツいんですよ”と。あやさんに先日の芸者遊びツアー(世界文化社のDさんから誘われていたのだが都合つかないのであやさんに回した)のことを訊く。巽孝之夫妻も参加していらしたとかで、これは参加できなかったのが惜しかったと思う。もっともご夫妻、最近私が山形浩生よりなのに不満の意を述べておられた とか。“より”とかいう意識でモノ考えてるから駄目なのである。

“豪放磊落”、名前のインパクトで持ってきたのだが案外好評。透明感あふれる色あいと味だが、しっかりイモ焼酎としての個性は発揮している。とみさわさん、キミさん、私とほぼ三人で半分あけた。K子とあやさんは私が最近飲みすぎだというが、別に二日酔いとか内蔵の不調とかはまったくない(ワインには弱くなった)。要は酒に強くなったのである。これも亜鉛のせいではないか、と考える。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa