18日
月曜日
足利ヨシュア記
神の地は戦いとらぬことには手に入らぬのじゃ(織田信長・談)。朝、7時20分起床。夢の中で、植木不等式氏と原田実氏のお二人と、お好み焼き屋でしゃべっていたら、暴力団系の怖いお兄さんたちにからまれる。思いつきで、その中の親分格の男に、“好きです、結婚してください!”と迫ると、彼らは驚いて逃げて行く。その後で、またお好み焼きを食べにかかっていると、店員が出てきて、よくああいうテを使えますねえ、と感心された。……しかしどうしようもない内容の夢である。
朝食、貝柱粥。週明けからまた夏の天気が戻ってくると先週言っていたが、また外れ。今日も小雨パラつく感じ。母から電話、自宅のパソコンがウィルスに感染したという。話題のBlasterかと思ったらそうではない、極めて単純なウィルスだそうで、すでに生田くんが処理してくれたそうだが、が、母にメールをくれた、あるい は出したことのある方はご注意を。
昨日コミケで会った人、補遺。どどいつ文庫伊藤さん(中国のトンデモCDをくれた)、川井豪山くん(『不思議の国のゲイたち』ゲンドウ役。一時体を壊して痩せていたが、最近、以前以上に巨大になった)、某地方銀行職員K氏(アジア映画マニアで、私に『ファイティングマン』の存在を教えてくれたのもこの人。今回はなんと、あの大神源太制作の映画のビデオをくれた)、シネマ秘宝館の酒徳ごうわく氏、銀河出版のIくんなどなど。しかし、コミケでしか顔を合わさない人も多い。
涼しいせいかコミケバテもなし。藤倉珊氏の発見によると、今年のコミケカタログの中の開田あやさんのコラム中に“気象庁の話では猛暑って話だけど、お友達のマンガ家、ソルボンヌK子先生みたいに「気象庁が暑いと言った夏は涼しい」と言い切る人もいるし”とある。見事予言的中。昼は外に出て、サムラートでマトンカレー。マトンがおいしい。“ナンとライスと両方食いたい”と、二人前をムシャムシャやっている、故・粟津號そっくりのおじさんがいた。こういう食欲は好ましい。紀ノ国屋で買い物少し。そう言えば、畸人研究の今さんから、青山の紀ノ国屋がマンションに建て替えられるという話をメールで聞いた。まあ、そのマンションの地下に新に入るらしいが、学生時代からなじんでいたあの店がなくなるというのは、やはり寂しい。
原稿書き、モノマガジン。最初書き出したときのテーマが、僅々5枚強を書き終えるときには、全く違ったものになってしまっていた。こういうのは、書いている最中に筆が突っ走りはじめたときによくあることで、原稿としてはむしろイキオイがあって面白いものになっていることが多い。ただし、ヤバい内容になっている場合もまた 多い。今回は中間というところか。
メールしてすぐ、出かける支度。渋谷から代々木まで山手線、そこで総武線に乗り換えて浅草橋、さらにそこから都営浅草線に乗り換えて蔵前。筑摩書房にて、『トンデモ落語の世界(仮題)』打ち合わせ。“射的材料販売”“くじ引き専門製作”などという看板の間を通って筑摩へ。すでに談之助師匠来ている。担当のNさん、Mくん相手に、本の方向性について、少しツメる。前書きは、私が書いた企画書の発行趣旨を、そのまま分量を増やした形で載せましょう、ということに。Nさん、“この本はテンションを下げないよう、出来るだけサクサクッと作ってしまいたい、と言う。ちくま書房にしては珍しい方針かもしれない。それにしても、志加吾がいないのは惜しいねえ、と談之助さんと。
三十分ほど話して、映画を見終わった快楽亭が待っている浅草へ、タクシーで。車中いろいろと噂話。千束通りちゃんこ屋『三七三』。ここのご主人夫妻、『大江戸ホラーナイト』の千秋楽に私の隣の席に座っていたのだった。無事元のサヤにおさまった快楽亭にコトの次第をくわしく聴く。元々の原因となった男が、私も以前にちと、不愉快な気分を味あわせられた(まあ、こっちが勝手に不愉快になったのだが)人物である、ということで大いに納得。ともかく快楽亭は、そのことは無事おさまり、また怪我の功名で、平成中村座を使っての企画も勘九郎丈から思っていた以上の好意を得られた(歌舞伎公演が終わった後、取り壊しを一日延ばしてもらって、そこで落語を演じられる)というので、大のご機嫌。そこでの歌舞伎の演目が『文七元結』なので、『文七ぶっとい』をやろうか、というようなことを言う。“またお出入り禁止になりゃしませんか”“ナニ、お出入り禁止もなにも、小屋はそれを最後に取り壊すンだからかまやしない”と。Nさんが“二度と見られないダブル公演ですね!”と言う ので、“二度とやらせてくれないですよ”と言ったら快楽亭が吹き出した。
話している最中にグラリ、と大きな地震の揺れがあった。K子もやがて来て、NさんMさんと名刺交換。“この本は早く出したいんです”というNさんにK子、“あ、来週出して、来週!”などと言う。スケジュールをとにかくタイトにして、ということになり、刊行は12月ということに決める。鴨のロースト、カツオのたたきなどをつまみに酒。それとキムチちゃんこ。食べながら、とめどなく人の噂、エライ連中のコキオロシなどで話がはずむ。“評論家の○○○の監修したあの落語全集のつまらなさと言ったらもう……”とか、“作家の×××の作った新作落語って、ナニあれは”とか、悪口を調味料にすると、どうしてこうメシも酒もうまいのかと思う。最後のカレーうどん、おじや共々堪能。話が尽きないところだが店のお母さんにハイこれでおしまい的に、お酒を一杯づつおごられて、解散。タクシーで、新宿まで談之助さんを乗せて帰宅。