5日
火曜日
ハンナ・モーゲラ
「けねしめせ、チキチキマシン、へねべれて最終コース。はねめけはプシー・キャットのミルクなまけせ。あ、ブラック魔王かしねべった!」(懐かしいね、すでに)。朝、小野伯父にやたらリアルに説教する夢を見た。意識下のイメージでも想いでもなんでもない、常日頃考えていることそのままである。夢というものに何か神秘的な意味を見出そうというのはあれ、かいかぶりですわな。7時45分起床、朝食はトウモロコシと枝豆のスチーム。トウモロコシは昨日六本木で買った、最近珍しいお歯黒の もの。普段のものよりちょっと固めだが甘くておいしい。
湿気ひどし。ひと雨ある模様。髪が伸びて非常にうっとうしいのでヘアカットを予約しようと電話するが、いつもやってもらっている先生(スタイリスト、というんですねえ)が公休なので、明日に延ばす。オマエの頭なんぞ誰がやったって同じだろうと言いたい人もおいでだろうが、花魁と同じで、業界の仁義で浮気は出来ないことになっているのである。
K子が気まぐれで買ってきた、白いキーボードに今朝から変えてみる。キータッチの感触がソフトで指が疲れないのがいいが、キー配列がおかしく、()とか&とか@とかの位地がキーに記されている位地と違う(そのくせ%とかは同じ)。これはどういうわけか。どこかを操作すればきちんとなるのか、いろいろやってみたがダメ。
メール数通、実家の薬局に漢方薬注文。豪貴からの返事メールに曰く、早いもので息子ももう生後100日を過ぎ、体重が7キロを超し、抱くと重たくて参ります、とのこと。お天道様に対してまったく恥ずかしくなく生きている一般人の一家の主の平和な平和なメール。こういう内容の会話というのは、まず私やその周囲においては皆 無と言っていい。異世界の話かと思ったほどであった。
子供はいても同じ異世界の住人たる快楽亭と、ちくま書房の打ち合わせの件で電話を。12日からの佳声先生の猫三味線のデータをFAXしてもらい、サイトのイベント告知欄にアップ。参宮橋までバスで出て道楽のノリラーメンを食う。トツゲキラーメン亡きあと、ここがわが青春の(結婚当時この店の近くに住んでいて、当時は夜食 が習慣だったのでほぼ毎日食べていた)ラーメンの名残。
気圧変動はなはだし。男の部屋の原稿書きかけるが進まず。ちくま文庫Mくんからメール、こないだ増刷したばかりの『トンデモ一行知識の世界』、やはりぜんぜん足りないらしく、さらに増刷かかる。しかも刷数が前回の倍。うーむ、テレビの悪口を言うのはもうやめようか、とさえ思う威力。喜ぶより先に考え込んでしまう。扶桑社『愛のトンデモ本』8月11日発売決定、同25日アスペクト『裏モノ日記』発売決 定と、このところ出版ラッシュだが、この波に乗れるか?
日記本発売に合わせて、解説エッセイを書いていただいた諸氏にお集まりいただいてメシでも食いながら座談会をやろう(サイトでそれを公開したい)と、各氏の予定を問い合わせ。などしているうちに、空がにわかにかき曇り、スコールのごとき大雨となる。8月なのだから別にこういう雨があってもいいが、何か一足飛びに盛夏から晩夏になってしまいそうである。夏の大雨というと思い出すのが学生時代に阿佐ヶ谷でぶつかった大雷雨で、やはり8月半ばの夕方早く、突然四方の窓ガラスが割れたのか、と思うようなガシャンバリバリという雷の音と共に、降るなんてものじゃない、天水桶をひっくり返したという形容そのままにザバッという感じで水が落ちてきて、傘も何も役に立たず、頭から足まで水びたしになった。当時私は阿佐ヶ谷の商店街で買った、どこ製なのだか知らないが一足600円という、安物もいいところの革靴を履いていたのだが、それが、川のように水があふれた路上をジャブジャブ、くるぶしあたりまで水につかりながら歩いているうちに、突然バラバラに分解したのには驚いた。ノリでくっつけていたのが、濡れて剥がれたのであろうが、あまりの安物ぶりに 逆にちょっと感動してしまった程であった。
8時、雨も小降りになった中、渋谷『九州』へ。『なぜわれわれは怪獣に官能を感じるのか』打ち上げ。歩いていくうち、道に迷ったらしいメルさん(表紙モデル)に会ったのでエスコート。彼女と河出のSくんをはじめ、私ら夫婦、のざわよしのり、阿部能丸、ベギラマ、実相寺昭雄、河崎実、中野貴雄、菊地祐司、安藤礼二、睦月影郎、開田裕治、井上デザイン井上社長……と、関係者の出席率の異様に高い会となった(今柊二氏は社用で欠席、永瀬唯、品田冬樹両氏は来たらず)。K子が夏コミ同人 誌『あなたの血が欲しイーイーイー!』を配布。
ベギラマ、阿部の二人とは芝居談義、それから『無限の住人』ばなし、実相寺・河崎両監督とは、オタクアミーゴスに変わってバカばなしユニット作って全国回ろうという話、開田、睦月、井上とはおじさんの性欲ばなし(いや、志加吾や談生のドタバタって、あれこの年の男としちゃうらやましい話だよね、全てを捨ててもいいって女と出会ったわけなんだから……)、中野監督とは濃いスカトロビデオばなし、キューティーハニーばなし、ダジャレばなしなどなど。安藤礼二氏はシュールレアリズムの評論で賞を獲得した人にも似ず、『地球防衛少女イコちゃん』がフェイバリット作品なんだそうであって、河崎監督と会えたというので感動していた。菊地氏、意外にもこういう席での会話能力に長け、ベギちゃんとかとも話をはずませていた。ベギラマは、うわの空の舞台に立って以降、一皮剥けたというか、何というか、大変に“いい女”になった。そう彼女に言ったら、“あの舞台のお姉さんのイメージがついているからじゃないですか?”との冷静なお答え。うーむ、私は“家の美人のお姉ちゃん” 好みだったのか。
のざわ氏とは『リーグ・オブ・レジェンド』ばなしから、今の映画会社の宣伝のヘタクソさばなししばし。実相寺監督、私の顔ってのは映画に出してみたい顔だね、という。怪獣に踏みつぶされる役でいいから、ぜひとも、とお願いしておく。中野監督はスカトロビデオばなしを“いや、悲惨です”と言いながら楽しそうに。某劇団の衣装を全部家に引き取ったそうで、凄まじいことになっているらしい。ロフトプラスワンにも某造型師さんの衣装が引き取られて揃っている、という話に、河崎監督すぐ、あ、じゃ『電エース』で使おう! と、使い回し名人の本領を発揮。とにかく面子が面子だけに全ての話が濃く、一般人などとても入り込めない状態。札幌のあの平凡な薬局の息子が、まあ思えば遠くへ来たもんだ、という感。麻薬的に楽しいけれども。
気がつけば11時でおひらき、実相寺監督が“パート2を出そう!”とおっしゃってくれた。混乱と笑いと濃密な話題の4時間であったが、残念なのははしゃぎすぎ、飲み過ぎで、ちと予算がオーバー。いくらかは最初にカンパしておいたのだが、それでも足りず、一人頭の割がちと、高めになってしまった。反省。この本を売って、次はもっと版元におごらせよう、と決意。小雨の中、帰宅。留守録にラジオ出演依頼の 電話一本。