裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

4日

月曜日

ネタばれた学園

 要するにあのみちるって子は未来人なんでしょ? 朝、7時半起床。朝食、トウモロコシにクレソンのスチーム。と学会員であり、名古屋の某大学の教員でもあるA先生から、『壁際の名言』の感想がメールで来ていた。やや照れくさくなるほど評価していただき、“後期の授業で使わせていただきます”とのこと。恐縮。ついでに、いくつかこちらのミスも指摘していただく。返信メールでお礼を述べておく。それにしても、A先生の言う、今の若者の無事是貴人的性格、平和・人権・愛・人を信じる・本当の自分・ふれあいなどという、誰にも文句のつけようのない言葉さえ奉っておけば大丈夫だろうという嗅覚ばかり発達して、その言葉の用いられている文脈・内容等には判断停止状態にある、という現状は、前から私のイラついていたところではあったが、教育の最前線に立っている人にして、やはり同じように感じていたのか、との 思い強し。

 クリーニングの集配に、シャツ類を出す。つくづく私のシャツの趣味というのは悪い。と、言うか、一般人とは違いますよ、ということを主張しているオタクシャツであるのだが、一般人と見た目で区分されるのは、これは個人のキャラを商売にしている関係上、必要なことでもある。つまりヤクザさんのシャツ選択基準と、傾向こそ異なれ同じ方向性。カンフー映画のスチールのパッチワーク風とか、黒字に白で千字文が印刷されているとか、和風の絵柄でスターウォーズが描かれているとか。考えてみれば昨日のビッグサイトの本部事務室内は、そういう柄シャツ度が高かったことよ、と、思い出して苦笑する。もちろん、これらは“営業用”シャツであり、普段はもっとオトナシイのを着ているのである。

 午前中、フィギュア王原稿バリバリと。昨日のワンフェスにうまい具合にからめられた。この連載は毎回ネタが大きくて大変だが、書いていて楽しいもののひとつである。1時半までに11枚、アゲ。イラストのK子と編集Mさんにメール。講談社Yくんから電話、昨日ワンフェスでは来た人に会えなかった件を伝え、今日の写真撮影の予定を決める。昼は区役所脇のモスバーガーでチーズバーガー買い、ダイエットコー ラと。アスパルテームのケミカルな甘味で、胸が悪くなる。

 ちくま書房Mくんと3時、時間割にて打ち合わせ。『トンデモ一行知識の逆襲』の赤入れ本を手渡す。『〜世界』の方も、オビに『トリビアの泉』という文字を入れて実験的に並べてみたところ、凄いハケ方をしめしているという。なんだかんだ言ってテレビの方には出版ごときは足を向けて寝られないねえ、ということか。あと、懸案だった『トンデモ落語の世界』、どうにか企画が通ったという。企画書の文言を、企画というよりはマニフェスト並にリキの入ったものにしたおかげか。さっそく、談之助・ブラック等と一緒に、コミケ明けくらいに打ち合わせを、と話す。仕事が押せ押せになるのも困るが、企画というのは通せるうちに通しておかないといけない、と、 これは平山亨師匠の教えである。
「仕事が多すぎて大変なんて言っているとな、今にしたくても出来なくなっちまうんだぞ」
 ……周囲を見渡してみて、その言葉が真実であることはよッくわかる。あの当時を思い起こせば、今、残っている奴は全員、闇雲に仕事をしてきたワーカホリック的な 連中ばかりである。

 打ち合わせ終えて、その足で六本木へ。雑用一件済ませ、明治屋で買い物。帰ってすぐ、トンボを切ってタクシーで千駄ヶ谷へ駆け付ける。Web現代のエッセイでここの千駄ヶ谷トンネルを取り上げたので、写真を撮影するのである。先について、千駄ヶ谷トンネル上の仙寿院の墓地(下をくり抜かれてトンネルを通された)をロケハン。案外いい感じである。また下に降り、Yくんと落ち合って、墓地内で撮影。それからトンネル(と言ってもガード下みたいな長さ)の入り口と、構内の壁のアートを撮影。暑いので、近くのアート系喫茶店で打ち合わせ&昨日の精算など。この店はオブジェみたいなものが骨董や茶器と並んでいろいろ飾ってあって、いかにも神宮前といった感じの店。トンネルをはさんで千駄ヶ谷と神宮前となっており、Yくん曰く
「さすが、十メートルくらいしか離れてないのに、神宮前と地名が変わっただけであきらかに店とかがおしゃれになりますねえ」
 と。『トリビアの泉』の話また。なんであの番組の本がフジテレビなのに扶桑社ではなく講談社から出ているのか、と思ったら、フジが各出版社を集めてコンペをやったんだそうな。

 別れて帰宅、フウと一息つき、メール連絡何本か。少し休んで仕事再開。と、言っても昨日の日記つけなど。8時半、K子仕事場から帰る。昨日の写真、やはり会場広すぎてレンズ付きカメラでは光量が不足。外に出て、幸永で焼肉、と思ったが、この近くで、しばらく足を向けていない網焼き店『てぃら』へ行こう、と急遽変更。

『てぃら』は文化村通りハズレのビル2階に入っている店である(同ビル内には会員制クラブ『渋谷ショッカー』なんてのがある)。焼肉屋なのに、店内はバーみたいな内装である。たぶん、以前バーだったところを居抜きで買ったのではないかと思う。海鮮もの、仙台牛のハラミ、根本カルビ、鴨トロ刺身など。やはり夏は肉を思い切り齧りたくなる。海鮮は蛤が、今日は大蛤が切れたということで小さいやつだったが、うまい。北海道の白貝(北海道生まれだが子供の頃は聞いたこともなかった。知ったのはつい数年前)もまずまず。アワビの踊り焼き(1200円)も食べたが、この程度の値段のアワビなら別に食べなくても、という程度のもの。肉類はおしなべてうまいが、オリジナルのタレがいまいち。生ビール、焼酎サワーなどおかわりおかわり。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa