裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

19日

火曜日

みんなにテクノフォントと呼ばれ

 ああ、YMOのときなんかに流行ったよねえ、こういう字体。朝、ふと目が覚めたら8時。よく寝たものである。朝食はトウモロコシと枝豆。朝のニュースショーで、北九州のクラブが暴力団員らしき男によって爆破され、男はとらえられたが舌を噛ん で死亡、との報道。舌を噛んで死ぬとは時代劇の忍者みたいだ。

 われわれの子供の頃は『伊賀の影丸』なんかで、もう、しょっちゅう登場人物が舌を噛んで死んでいた。大河ドラマの『風と雲と虹と』でも、米倉斉加年の興世王が舌を噛んで死ぬシーンを見せていたが、その方法で、彼の絶望の深さを表していた演出だった。……実際、あれは死ぬにしても、よほどの精神の高揚がないと出来ない手段ではないか。失敗例の方が多いと思う。去年の暮にテレビ東京系で放映された『忠臣蔵』では三船美佳が舌を噛んで死ぬ女間者をやっていたが、目が完全にイッちゃった目で、なるほど、これなら舌も噛み切れるだろう、と思ったものである。

 メール、電話数本。アスペクトからは『裏モノ日記』のサイン入れの打ち合わせ。100冊限定先行発売、という企画だが、まあ50冊くらいでいいだろうという話であったのが、やはり注文がかなり来ているので、100冊やってもらわないと、と言うことになる。大変ではあるが、注文が多いというのはうれしいもの。

 昼は参宮橋に出て、道楽でノリラーメン。そこからさらに新宿に出て、ビデオマーケットに行く。探していたブツ、見つからず、ちと落胆。中野貴雄コーナーがレジ前に大きく出来ていて、『不思議の国のゲイたち』も並べられていた。アダルトビデオでネタになりそうなものを二本、買って帰る。帰ってさっそく見てみたが、一本はハ ズレ。もう一本の方は案外よかった。

 バイク便でモノマガジンに図版ブツ、送付。電話で、有線放送番組『山田五郎のスタジオ‘58』出演依頼。ロフトの斉藤さんからも、出演依頼。嶽本のばら氏との対談はゆまにの私のシリーズの刊行後の方がいいと思う。だいぶ前にやった『今あえてロリコンを語る!』をもう一回やってほしいというので、談之助師匠にスケジュール 確認。山本会長あたりにも出演してもらえればいいのだがな。

 歯石が気になってきたので、西永福のS歯科に電話するが、17日から24日まで休みだとのこと。まるまる一週間休暇がとれるとは優雅なことである。エレン・ラペル・シェル『太りゆく人類』(早川書房)読む。先日の『デブの帝国』で興味を持った肥満問題に対する、また別の面からのアプローチ。内容とはあまり関係ないが、映画『遠すぎた橋』のことが出てきて、“不朽の名作”と書かれている。“そうだったかあ?”とツッコんでしまった。やたら金をかけて、大スターを並べただけの、スカ スカな映画だった記憶しかないのだが。

 雑用暫時。8時、家を出てまた新宿。三笠会館でK子と食事。梨(二十世紀)好きのK子、これまで紀ノ国屋の本店と渋谷店の梨を食べ比べていたが、今日はさらに、伊勢丹と三越で二十世紀を買ってきた。どこが一番おいしいか、食べ比べてみるという。8月のメニューで、温泉卵とジュンサイのコンソメジュレ、うなぎと茄子のティエードというのをとってみる。コンソメはおいしかったが、うなぎの方はどう見ても蒲焼きそのもの。ソースも蒲焼きのタレで、おまけに山椒までかかっている。蒲焼きに茄子と野菜を添えたもの、としか思えない。ティエードというのはフランス語で蒲焼きという意味なんじゃないか、とK子と笑う。

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