裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

5日

水曜日

大バージン怒る

 何よ、30で処女じゃいけないっての! 朝7時15分起床。ハンパな15分をもてあます。朝食、豆。オレンジのすごく小さいの。読売新聞政治欄4面のウノ・カマキリのひとこまマンガで小泉首相がテツandトモのネタで“北朝鮮、イラク、進展しないのなんでだろ?”とやっているのがあった。昨日届いた『週刊ポスト』の巻末のタカノアキコのイラストコラムも、小泉(ジュン)&竹中(ヘイ)が“景気回復しないのなんでだろう〜”とやっている。毎日々々毎週々々、ネタ考えるのも大変だろうが、こういうあまりに応用しやすいネタを使うときは、よほどひとヒネリしないとかぶりますよ。

 ゆまに書房T氏から電話。昨日の原稿に関して、仕事とは直接関係ないのだが、少女小説まわりの年譜について、いろいろ話す。それにしても今回の解説原稿は自分ながら気合いが入ってしまった。読み返して、文体が無意識に吉屋信子調になっていることに苦笑する。

 1時、時間割にて海拓舎Hさんと打ち合わせ。『ブラックジャック・ザ・カルテ』第3巻いただく。2巻より出足よく、すでに在庫がないとか。このヒットにHさん、意気軒昂、私の名言本、及び現在ペンディングになっている都市論の仕切り直しにつき、いくつか案を出すが、イマイチの反応。まあ、こちらも無理はするまい。

 2時半までいろいろ話していた。出て、兆楽にて味噌ラーメン。東急本店地下で買い物。次のWeb現代のネタをぼんやり考えながら歩いていたら、BEAM裏手の駐車場に、2〜30人ばかりの女の子が集まっている。若手バンドの路上コンサートらしい。ああ、こういうところからみんなメジャーを目指して這い上がっていくことであるのだろうなあ、などと思って見てみたら、這い上がっていくどころではない、窪塚洋介の『GO』の主題歌やアニメ『ワンピース』のエンディングを担当しているバンド、『カレイドスコープ』の三人だった。ワンピースEDの『愛すべきひとよ』はスマッシュヒットを記録し、すでにブレイク済み。今年の7月には渋谷公会堂でのワンマンライブも決定しているという。そんな連中が、こんな路上で、せいぜい30人くらいの下校途中の女子中・高生相手に演奏している。不思議な時代になったものである。

 帰宅して、しばらくぼーっとしている。やらねばならぬことは山積みなのだが、どれにも手をつける気がしない。寒さのせいか、左半身がしびれている。横になったら前後不覚になって寝てしまう。自分が、見覚えはあるんだがどこかわからない街にいる、という、こういう体調の時の定番の夢を見る。体調には逆らわないようにしよう と思う。西田敏行だって倒れている。

 結局、今日は何の仕事も出来ぬまま、夕食。蕗をあっさり味で煮て、鯛(高かったので目鯛にした)の炊き込みご飯の上に乗せた蕗ごはんと、湯豆腐、蕗のキンピラ。氷川さんの奥様から送ってもらったキンキの干物。オーブンでじっくり焼いたが、これがうまい。皮がパリパリと煎餅のようになって、香ばしく、骨までしゃぶってしまう。送っていただいたとき、日記に“さすがサラリーマン経験者は社会常識が違う”と書いたが、こないだのと学会で藤倉珊氏が“経験者どころかわたし、現役サラリーマンですが、そういうことしたこと皆無です”と言っていた。

『DVDで見る世界のCMフェスティバル』第一集、続き。こないだ家で飯くいながらこれを見た日も、体調がかんばしくなく、昼寝をするとグーと寝てしまう、と日記に書いた。日記をつけることを習慣にしていると、われわれの日常というものが、出来の悪いシナリオライターによって構成されたドラマなのではないか、というような気になってくる。ここで紹介されている傑作CM群のように、アイデアと金をふんだんにかけたものでないことだけは確かである。神はいるのかも知れない。しかし、その神が才能あるストーリーテラーであるかというと、ちと疑問に思うんである。もっとも、『トラちゃんの冒険』が面白がれるように、年をとってくると、このようなユルいドラマがしみじみ、懐かしくなる。クリストファー・リーがホストの『ホラーの一世紀』なども飛ばし見。缶ビールとメローコヅル。少し飲み過ぎ。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa