裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

3日

月曜日

柔道三段再起動五段

 オチたパソコンを再立ち上げする技はそりゃ見事。朝、7時半起床。朝食、豆サラダにイチゴ。雨もよいである。一昨日ほどの本降りではないが、気圧は乱れ、調子悪し。パソコンになかなか向かえず。気圧のせいばかりでなく、昨日、あまりにハシャギすぎてアドレナリンを分泌させた反動のようにも思う。いい年をして。

 机回りを整理していたら、こないだ羽田で入った寿司田のお品書きが出てきた。羽田ばかりか成田・関空などの空港、三井ビル・野村ビルという高層ビル街、赤坂東急や新宿ワシントンなどのホテルと、大きくチェーンを広げているのだな。ニューヨークにもマディソン店とロックフェラー店の二店舗がある。それはいいが、裏にコラムのような形で、例のDHAのことが書いてある。『魚を食べると頭がよくなる』という記事である。その中で曰く、
「日本人の母乳にあるDHAの平均的な量は欧米人の2.3倍だ。人生のスタート時点で差がついている」
 ずいぶんと無邪気な日本人バンザイ的記事である。このコラムはニューヨーク店にも置かれているのだろうか。そんな母乳で育てられた日本人の子供の学力低下が叫ばれたり、キレる子供が増えているというのは、今どきのお母さんたちがやはり魚をあまり食べられないのが原因なのか。日本の将来のために、少し寿司田チェーンは女性 たちへの寿司の値段を下げてやったらどうだろう。

 郵便局に通販で買ったものの振り込みに出る。雨はやや、やんできた。資料探しに書店、コンビニ等回るが見あたらず。西武デパート地下で昼の弁当を買う。他にもまだ用事があったのだが、急に、今日の昼に打ち合わせがあったのでは、と強迫観念にかられ、急いで帰宅。別になかった。ホッとするが、自分のスケジュール管理のいいかげんさに腹もたつ。営業兼マネージメントの係がそろそろ必要か。弁当を食い、デ ザート替わりに牛乳一本。

 何をなすでもなく、ふと時計を見るとすでに4時を回っているのに仰天。無為に過ごす時間の早さよ。あわてて、今日までと電話で確認があったゆまに書房の原稿を書き出す。吉屋信子少女小説選2の解説。吉屋氏の遺族が私の『美少女の逆襲』を読んで、私の吉屋論に非常に共感していると、先日編集部Tさんから手紙をいただいている。書いていたときは、こんなことを書いて怒られるのではないか、とビクビクしていた原稿だけに、ちと、いや大いに意外であった。7時までかけて7枚。もう少し枚数のほしいところであった。書き上げたところで、ゆまに書房のFAX番号(変更になったので)のメモをどこにやったか、しばらく探して仕事場をウロウロ。いつもの ことながらイラつく。

 それから、今夜の打ち合わせに使う資料をカバンに詰めて、また外出。雨はあがって、夜空に明るさがある。これはもう降らないだろうと判断して、傘は持って出ず。新宿駅のキオスクの新聞見出しで、生島治郎の死去を知る。70歳。小泉喜美子の悲しい死のニュース以来、イメージがどうしても悪い方に向かう。編集者出身でありながら、作家志望の女性(しかも自分の編集していた雑誌に応募してきた)と結婚する際、家庭をとるか作家の道をとるか、と選択させたなどというのは、本人はいろいろ言訳しているが、およそプロとは言えまい。好きな作品(『頭の中の昏い唄』とか)も多々あるのだが、晩年の作品のボケ具合(ことに『暗雲』とかは、別の意味で面白かったほど文章もひどくなっていた)を見た身には、出来れば小泉喜美子と死去の時 期を逆転させてほしかったと、これは本気でそう思う。

 8時、阿佐谷駅で、次回ロフトプラスワン(7日)の打ち合わせ。斎藤さん、ベギラマ、声ちゃん、K子と。宇多まろんは体調不良で欠席。葉山房へ行こうとしたが、残念ながら満席(相変わらず流行っているな)、あちこち回って、例のうなぎ屋(滝沢の婆さんや、小野伯父ともよく行った)にする。ロフトプラスワンのS氏と、このイベントのDVD化についてもちょっと。うな重食いながら、何を読むかの選定。とりあえず、ベギちゃんには極めてオーソドックスなエロ本、まろんには女王様ものなどを読んでもらい、声ちゃんには奇譚クラブから女性切腹ものを読んでもらうことにする。本人も“最後は天皇陛下バンザイって言うんですか、いいですねー”と言う。K子が“オマエの声で読むとドラえもんが切腹しているみたいだ”とかつつく。うなぎ屋が早く仕舞うので、珈琲茶館で打ち合わせ続き。声ちゃんが奇譚クラブの文章にいちいち“これ、なんて読むんですか?”と字を訊くので、K子が“こんなもんも読めないのかーッ”と怒る。その様子が面白く、ベギラマが“漢字SMっていいかも、ですね”と言う。私も“うん、ほらほら、この鴎外の小説をお読み! とか、今度は露伴を読んでもらうよ! とか”と悪ノリ。斎藤さんがとにかく熱心で、衣装は、とかセットは、とか細かく指示。最後はまた、あの好美のぼる『にくしみ』のルリをみ んなで演じることにする。ベギちゃんも声ちゃんも大喜び。そんなにルリが好きなのか、みんな?

 声ちゃんには6月7日のトンデモ本大賞東京開催のアシスタントを正式依頼。帰宅して、メールちょっと。昨日の記述で少し訂正個所。編集さんの発言と私のものが、ゴッチャになっていて誤解を招いてしまうようなものになっていた。フィギュア王N編集長から、今度一杯おごらせてくださいとの言葉。こっちの大人げない発言がもとなので、ちと恐縮する。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa