1日
土曜日
娘ジュワッチ嫁入り盛り
あんなウルトラマンオタクの娘も、いい年頃。朝、7時半起床。夢でまた19世紀に。イギリスの田舎駅に私や女房はじめとする一団がぞろぞろと着くが、実はわれわれは欧州を股にかける大怪盗団で、この田舎に隠された国家の財宝をねらっているのである、というもの。怪盗団来襲、のうわさに警察が見張りを立てていて取り調べられるが、こんな田舎警察など、われわれは舐めきっていて相手にしない。わざと訛りのひどい英語で、“フランスから来まスた、オリエントエクスプレスに乗ってきたありまス”などとやって煙にまく。警察官も田舎者で、“オリエントエクスプレスか。あれはトラッド(伝統ある)な列車である”と大まじめに答え、われわれは“ウイ、とらっど、とらっど!”と合唱したりする。ちなみに、デタラメであるが、上記の会話等、驚いたことに全て英語であった。
夢の中ではずっと雨が降り続いていたが、目が覚めたら本当に雨だった。朝食、変わらず豆。考えてみればこれまで、朝食にはサツマイモのふかしたのだの、ガスパッチョだの、玄米がゆだの、奇妙なものばかり食っている。ウルトラマンからタロウまでの商品の海外での販売権が、全てタイのものとなるという裁判での判決が出たそうな。当然控訴だそうだが、前社長の印が全部ニセモノだという主張、果たして通るだろうか? タイの人の名前というのは日本人にはなかなか覚えにくいものが多いのだが、この裁判相手の名は三件茶屋、と覚えていれば忘れないのでよろしい(サンゲンチャイ・ソンポテ氏)。
明日のと学会例会に持っていくものの整理、及び発表箇所の確認。原稿の〆切確認電話がゆまに書房から。書き下ろし、飛び込み、連載と、ギシギシのスケジュールの感があるが、本当の売れっ子はこんなものではあるまい。この日記を読んで、私がよほどの売れっ子だと思っている人がいるらしいが、私など、まだまだ売れないモノカ キの範疇である。ヒマがなさそうなのは、仕事が遅いというだけの話だ。
1時、雨の中、どどいつ文庫伊藤氏来。メキシコエロ漫画の研究本、香港マンガ雑誌資料集など、持ってきてくれる。心霊関係のオカルト資料本(肯定的立場のもの)があるが、この本の一番トンデモないところは、卸し時の値引率が0%であるということ。つまり、本屋がまったく儲からないのだ。そんな値段設定をして、入れてくれる本屋があるとは思えない(まあ、私はいくらか色をつけて買ったけど)。版元は何を考えているのか? こっちの方がよほどオカルトである。
昼をなんだかんだで食い損ねてしまう。4時、さすがに空腹に耐えかね、外に出てモスバーガーを一個、買ってきて家で食う。雨は本降りになっている。雑仕事ひとつ終え、青山に出て買い物。明日の例会のときの弁当などである。遅かったので300円引きだが、こうまで引かれると“大丈夫か?”と思う。他にABC本店など。帰りにタクシー拾おうとして、私の並びに外人さんが手をあげているのについ、譲ってしまう。こういうの、やはり劣等感なのだろうか。単なるお客様への親切、か。外人をお客様と思うことがそもそも国に塀を建てる論理だ、などと最近は言われかねない。
帰宅して仕事用メール数本。雨の日は体固まり、これ以上は進まず。8時半、『船山』にて食事。すでに二月のコースの案内が来ているが、いつもの、一番安い定食のコースで。一番安いといったってここのことで、質は保証つき。突き出しはふぐ皮煎餅、蛸の桜煮、ふぐ皮の酢の物。刺身はシマアジ、ヒラメ、スルメイカがちょっとずつ。焼き物がブリの腹身。蒸しものが巨大なるキンキの頭の半割。これが絶品、ことにオツユはコラーゲンそのままで、完全な液体なのに口に含むとぷるぷる感がある。眼肉の味は濃く、ヒレのところの身はもう、甘くて分量たっぷりで、たちまちのうちに箸でつつかれ目、顎、口とバラバラになり、原型をなくしてしまう。あとは春野菜の天ぷら、お飾りだが梅ソウメン揚げというのが面白い。干しソウメンにあられのようについた衣が、白梅がぱっと咲いた見立てとなり、口に含むとほのかな梅の香りがするというもの。それとお茶漬け。デザートの葛切りは見習いくんが作る。こないだ彼が作った葛切りは主人のそれに比べて端の厚さが一定しておらず、びらびら状だったが、今回のはきちんと隅々が一定の厚さ。ちゃんと進歩している。えらい。どこかのモノカキに見習わせたい、まあ、まず自分か。