14日
月曜日
遠い星から贈り物文房具エース
ほら、この分度器はセスナが変身するんだよ。朝7時45分起床。朝食、セロリ一本、紅玉リンゴ一個。二十世紀梨は昨日で紀ノ国屋にもなくなった。休日ではあるが朝のワイドショーその他は平日通り。さるにても天気に恵まれた連休であったこと。秋の連休としては実は珍しいのではないか。
読売新聞に興味を引くコラム。筆者は小学校の校長先生(“和”の署名)で、担任から“ある母親が「学校は戦争好きな人間を育てるのか」と抗議してきた”と相談があったという。転校してきた6年生の男子の母親が、運動会で騎馬戦が行われることに抗議し、“民主主義を教える学校で、なぜ戦いをやるのか”と、文句を言い、“昨年もやったようだからやめろとは言わないが、自分のところの子供は参加させない、と言ってきたのだそうだ。徒競走も争いだから参加しない、玉転がしも紅白対抗ということなので参加しない。最後の運動会だから、と校長室に母親を呼んで説得しよう としたが、彼女は
「学校では“みんな仲良く助け合おう”と教えているでしょう。でも運動会は、相変わらず戦いや競争ばかり。こういう運動会で、子どもの心に助け合う心が育っていくのですか」
と主張するばかりで、結局平行線に終わった、と書いてある。
「確かに徒競走は競争だし、騎馬戦は戦いである。しかし民主主義の世界だって、競争がないわけではないであろう。むしろ、社会に出てから、自分や自分の所属する集団の存亡をかけた激烈な競争や戦いを経験することも少なくない。ある程度の競争心を育てていくことも大事な教育の一つだと思う。平等も大切ではあるが、学校だけが無菌培養のように“平等・平等”ということが、本当に子どもの生きる力を育てていくことになるのだろうか」
と結んでいる。
この校長先生は、私の見るところ無能であるように思える。この程度のバカ親を説得できない情けなさはさておいても、報告している内容と結論が自己矛盾を起こしている。“学校教育を無理に平等主義一辺倒に染めることには問題がある”という考えはまず、正しい。で、あるならば、運動会への参加だって平等でなくていい。この男の子を、無理に他の児童と一緒に運動会に参加させる必要などないのである。この母親はバカではあるが、別に運動会や騎馬戦そのものを廃止せよと迫っているわけではなく(たぶん、6年の最終学年で、そういう運動をしても無意味だと思ったからだろう。転校生ということだが、その理由が気になる。前の学校で似たような原因で問題を起こしているのではないか?)、自分の子を参加させたくない、というだけの話である。ならば、そういう考え方の親子がいる、ということを他の児童生徒に説明し、世の中にはさまざまな考え方の人がいるのだ、ということを理解させる一助に利用すればよろしい。個人主義がもっと進んでおり、さらに宗教問題がからむアメリカなどでは、こんな問題は問題とも言えないものだろう。この子が将来、母の手から放れた後に世間でかなりの苦労を味わうことは容易に予想できるが、そこにまで学校が口をはさむ権利はないのである。まさにこの校長が慨嘆するように、これは熾烈な競争と不平等、理不尽の渦巻く社会に出ていく子どもたちに、争いはしてはいけないだの、話し合いこそ全てだの、人はみな平等だのというウソを教え込まなくてはいけない、現代教育の抱え込んでいる根本的矛盾に関わる問題なのだ。それで破綻が出ていないのは、誰も学校で教えられたことがホントだと信じてなんかいないからに過ぎない。この母親みたいなのを除けば。
昼はまた青山に散歩。NHKの回りには地方から来たらしい中学・高校生たちがたくさんタムロしていて、写真を撮り合っていた。アイドルの出待ちの格好だが、本当の追っかけ・出待ちをしているのではなく、東京体験として出待ちごっこのようなことをしているらしい。すでにモノに関しては首都も地方もそんなに格差がなくなっている。彼ら彼女らにとり東京の魅力とは、“常時アイドルたちがいる”場所、なのであろう。立ち食いソバ屋で冷やしたぬき一杯。店長が韓国系か中国系かで、下の店員たちが店長の話す言葉がよくわからず、往生していた。
買い物して帰宅、また冬コミ用マンガ選択。面白いことは面白いが、ちとククリが難しくなってきた。SFマガジン原稿もやる。ページ数をだいたい埋められるという当たりがついたところでまた明日として、東急ハンズに出かけて買い物。正面入り口のところに大きなサンタクロースが飾られている。星新一の『進化した猿たち』の中で、デパートのクリスマスツリーの飾りつけを見て“早いもんだ、今年ももう10月になった”と通行人が言うというマンガを紹介していたが、まさにそれを地でいっている感じである。まんがの森が明日で閉店で、アメコミを今後どこで買おうかと困っていたが、なんと入れ替わるかのように、ここにアメコミコーナーが出来ていた。売れるのか? 『ビッグガイ・アンド・ラスティ・ザ・ボーイロボット』で日本フリークなところを見せてくれたマーク・ミラーが作者の一員になっている『ザ・オーソリティ』の総集本を買う。やはり日本が出てきて、『ほのほのレイク』だの『レユノクリーム』だのといった看板をバックにヒーローが闘っているシーンがあった。やたらレイクの文字があるところ、よく観察している。ところで、まだこの号ではそこまで行ってないが、最終回ではこのオーソリティーのメンバーであるスーパーヒーローのアポロ(スーパーマン的ないかにもアメリカンヒーローという超人)と、同じくメンバーのミッドナイター(バットマン風闇のヒーロー)が、なんと結婚して“夫夫”になるんだそうである。アメコミってやつは。
http://www.hotwired.co.jp/news/news/culture/story/20020809205.html
8時、夕食の準備。のっぺい風(トロミはうちではつけないので)野菜汁、鮭わっぱ、それとラムチョップのかたまりを水と焼酎で一時間茹でたボイルドラム。ネギ、ショウガ、ニンニク、ローズマリー、ベイリーフなど手近にある香味野菜を適当に放り込んで、泡盛と塩を加え、後はただ茹でる。それを自家製ニンニク醤油で食べるのである。以前内蒙古飯店で食べたやつを再現したくてやったのだが、かなり上品な出来になってしまった。これは肉が青山のおハイソ連中向けのものだったからだろう。それでも素朴で、脂のところには何とも言えぬ甘味があり、K子が最初に肉の盛られた皿を見て、余ったらどうするのよ、と言っていたが、結局二人でペロリといってし まう。トウガラシミソなどをなすってもいいかも知れない。
八海山飲みながらコロンボ見てたら、白山先生から電話。“オノクン(白山先生はいつもノにアクセントをつけてこう発音する)から電話があったよ”という報告。私が芸術祭のあと、ロビーで白山先生の芸と伯父の芸の比較をしたのを、何故か小野伯父が喜んで、電話をかけたらしい。20分ほどで済むが、先生は大変ごきげんの様子であった。“オノクンも酔っぱらっていろいろ話していたけど”とのこと。酒を飲まない人のところに酔って電話をするんじゃない!