10日
木曜日
盆から先ゃオーランドー
夏期休暇が終わって後期授業からはバージニア・ウルフを取り上げます。朝8時起床。朝食、味付け卵と、アワビタケのスープ。ノーベル化学賞受賞の田中さん(しかし、ごく普通の会社員と紹介されていたが、名前もレオナとかノヨリとかいうのに比べ、本当に普通だな)、どこかで見た顔だ、とゆうべから思っていたが、そうだ、例の親の名知らずの高橋に似ている、と思い出した。彼の顔をうんと知的レベルを落として貧乏くさくすると高橋敏弘になる。それにしても田中氏の奥さん、眼鏡が似合ってロングヘアで、オタク受けをする美人だな、と思っていたが、さっそく今朝、あちこちで騒がれているのを発見。こう記号に速やかに反応すると、動物化していると東浩紀氏に指摘されるのも無理ないか。呵々。
郵便物チェック。気楽院さんが送ってくれた、財団法人キリスト教文書センター発行の『本のひろば』10月号で、編集後記の中ではあるが私の夏コミ同人誌『ジャック・チックの妖しい世界』を取り上げてくれている。大層な賛辞でいささか面映ゆいがうれしい。“我々の業界でもこのような興味深い本が出せればいいのだが”とまで言ってくれているが、キリスト教関係書籍の本家本元がそこまで柔らかくなってもどうか。お固いところはお固く、柔らかい方はぐっと柔らかく。世の中分業で。
原稿、雑用で午前中は書けず。昼飯、国営放送Yくんからもらった鮭茶漬の素でお茶漬けを掻き込み、まずと学会会誌原稿、も少し増やせと編集のK子から言ってきたので書き足し、原稿用紙4枚分。最中に電話数本、細かな用事や打ち合わせ。一行知識掲示板の書き込み、大変に活発化。やはりテレビでの放映のせいか?
買い物に出ようかと思ったが、そのまま次の原稿を書き出したので仕事場に居残りとなる。Web現代『近くへ行きたい』。極めてテンション低いままに書き出し、最初は規定文字数を何とか埋めることに専念しよう、と書き進めるが、結局、書きすぎてあとで行数を詰めねばならなかった。久しぶりに低テンションで書き上げた原稿であるが、低テンションならではの面白さが出たものになった。低テンションでの執筆に慣れないと、これからの年齢では苦しくなるのだが。
文章を書くとき、新人のうちはとかく、人をアッと言わせるものを書こうと意気込む。多数うごめいている新人ライターの中から一頭地を抜くにはそれが必要なことは当然だが、さて、それで売れて仕事がどんどん入ってくる(入ってこないと食べていけない)ようになると、毎回アッと言わせる文章では身がもたないことに気がつく。第一、それでは短いものは書けても、長いものが書けなくなる。また、読む方の方でも、奇矯な文章というのはある程度の分量を読むと疲れてしまうし、案外、すぐ慣れて飽きがきてしまうものである。ごくごく普通のテンション、普通の文字使いで、人を惹きつける旨みのあるものを書く訓練のできていないモノカキは、結局短い寿命で終わってしまう気がする。
クルー原稿のFAXがあったのでチェック。別に原稿の他に資料を送っているわけではないのだが、毎回、イラストの仲峰志穂子さんの、よく調べて描いてくれることに感心する。この原稿が本にまとまるときはもちろんだが、その他にも一度コンビで 仕事をしてみたいと思う。
6時半、タクシーで新大久保へ。老運転手が道を間違え、なんかすさまじく見当違いな方角のところへ持っていかれてしまう。なんとか元の道にもどって刻限ギリギリに到着。今度はこっちが方向感覚狂って少し道に迷い、10分遅れでチュニジア料理『ハンニバル』。好美のぼる本『呪いのB級マンガ』完成祝い。Yくんと前担当Iくんの四人で。Iくん、90キロ代であった体重を70キロ代にまで落としたそうで、確かにスッキリとした顔になった。そう言えば好青年であったのだな、とようやく思い出す。今日はナオコさんがおらず、モンデール一人で忙しく応対。そのかわり、厨房に新たに二人、メンバー(全員外人)が入った。相変わらずモンデールは愛想がよく、陽気で、いかにも日本人のイメージする外国人、という感じ。今日はおすすめのホロホロ鳥のコース。ワインはチュニジアの大統領官邸のワイン醸造所で作られたという、マシニッサという赤ワイン。もう日本では手に入らなくなるそうで、この店にもあと二ケースあるのみ、というのを四人で三本も空けてしまった。悪い気がするがしかし、極めて深いコクがあるのにまったく味にクセがない、本当においしいワインであった。
料理はまずタヒーナというガルバンゾー豆とガーリックのペーストサラダ、それからチュニジア風ギョウザのブリック、そしてクスクスが出て、メインがホロホロ鳥のロースト。ホロホロ鳥というのはキジの仲間らしいが、鶏よりずっとさっぱりしていて、腹にたまらない。デザートはチュニジア風ナタデココ、そしてテアラモント(ミントティー)。タヒーナは今日のはいつものより手のこんだ、いろいろなものが入っている風なもの。名前も別なのかもしれない。食べながらいろいろと雑談。おエラい編集者たちの裏話など。いやあ、みんな人間味あふれていらっしゃる(ひでえ、とも言う)。帰りに恒例の記念撮影。またウサギのシーズンらしいので(11月から)、ウサギが食べたい食べたいと言っている談之助夫婦と来ようか。