裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

21日

水曜日

いやな都政だなあ

 座頭市@反石原陣営。朝7時半起床。朝食、シポラタソーセージ、イチゴ。イチゴはとちおとめで、K子のメル友の女性からいただいたもの。気温はかなり温かく、一気に春が来た感じ。朝、日記より先にデジタル・モノの映画評原稿二本、書いてメールする。ここの原稿は現在連載中のものの中で一番、イキオイでダダダと書いているもの(そういう語り口を用いているもの)なので、できるだけ体力ある時間に書かないといけない。

 その後日記つけ、今日持っていく海拓舎の原稿に目を通す。K子には弁当、金沢丸一のお婆ちゃんから送っていただいたフグの粕漬け、かなり塩っからいものなので、これを微塵に切ってチャーハンを作る。K子の新しい弁当箱、御飯容器とオカズ容器の重ね方が複雑で、今日やっと正しい重ね方がわかった。

 昨日、ロフトの斎藤さんから電話あり、またオタク世代論で、宮台真司さんとトークをやってほしいとのこと。基本的にOK(宮台氏とは以前にも対談しているし)なのだが、五月はすでにエンター本のトークがあるし、六月くらいにしてほしい、と希望する。斎藤さんは、私にしっかりオタクを語らせたいらしい。

 昼は金沢のタクアンで茶漬け。ざーくざくのボーリボリ。春用の上着に着替えて、タクシーで浜松町。フジBS『コンテンツファンド』収録。さて到着して、タクシー代を払おうと胸ポケットをさぐったら紙入れがない。上着を替えて、サイフを前の奴のポケットに入れっぱなしにして出てきてしまったのであった。あわてたが、何気ないフリを装い、“ちょっと待ってて”とスタジオに飛び込み、入り口の喫茶部で待っていたFくんに“金、貸して!”と五○○○円借りて、それで支払い、ことなきを得る。ここを待ち合わせ場所にしていてよかった。フロッピーを手渡す。

 コンテンツファンド、今回からリニューアルで、スタジオのセットもちょっと豪華になっている。司会のアシスタントの女性も、“もう少し落ち着きのある”ヒトに、という感じで押田恵さんという人に交代。われわれブレーンは別室(セットは同じフロアにあるが)にこもり、そこでクリエイターと顔をつきあわせて、“この作品を売り込むためには”どうしたらいいか、をレクチャーする、という形式になる。控室で西山英一さん、鈴木昭さんと打ち合わせ。クリエイターと面と向かって、ということになると、悪口がいいにくくなるねえ、と話す。

 収録開始。いつもこの番組、二回同録で、今回は#9と#10を収録予定なのであるが、都合上、#10の方を先にやることになる。いつも感心というか、不思議なのは、テレビ関係の人間というのは、よく不安じゃないなあ、ということである。この番組だって、司会役二人、クリエイターが一回三人、ブレーンが五人、計十人が揃わないと番組が始まらない。ブレーンは一人や二人欠けてもなんとかなるが、司会やクリエイターが、何らかの都合やアクシデントで来られないことって、決して起こらないことではないと思うのである。一回でもそういうことが起こると、善後策立てるにしろ何にしろ、むちゃくちゃに大変なことになるだろう。まして、こういう録画番組でなく、生番などになると、そういう予測をするだけでノイローゼになって眠れなくなりはしないか。TV関係者に鈍感な奴が多い、とよく私はこの日記でも苦情を言っているが、こういう神経症的不安に陥りがちな現場でノホホンとやっていくには、これは多少鈍感な神経の持ち主でないと持たないのかもしれん、と思えてきた。

 #10はブレーンの女の子もレギュラーの内藤陽子チャンに変わって、同じプロダクションの福岡沙耶歌チャン。これはリニューアルに伴って、ということでなく、内藤さんがドラマ出演で忙しくなり、この収録に毎回つきあうことが難しくなるので、今のうちに違う子も出しておこう、ということで。後半は内藤さんだったが、比較しては福岡さんにかわいそうだが、さすが、という場へのなじみ方。慣れは強いな。

 今回のクリエイター。まとめて紹介すると、いやし系のネコのイラストを描いている小野寺知美さん、布製の人形ボタンマンをデザインした三木謙次さん、クレイドール製作の工藤道絵さん(以上#10)、北海道と沖縄在住の二人のアーティストが光ネットワークで互いの仕事場を結んでCGアニメを作っているキャラクターファクトリー、世界中を旅行して、その地の子供たちに描いてもらった絵で絵本を作っている伊勢華子さん、謎の生命体“ぷにぷに”のデザインを家庭雑貨に持ち込もうとしている菅井淳さん(以上#9)。今回、全員の名前を列記したのは、前回(私は前回は出られなかったので前々回となるが)までに比べて、クリエイターたちの“プロ度”が格段に進歩していたため。“ロイヤリティ”“完パケ”“プレゼン仕様”などという単語がクリエイター側からポンポンと飛び出す。岡田斗司夫が感心していた。

 個室でクリエイターとブレーンが顔をつきあわせて話すという方式、無責任なことが言えなくなってやりにくくなるねえと話していたのだが、それがどうもいい目に出たのではないか、と思う。より具体的に、売り込み値段の考証やプレゼンの方法をサジェスチョンできるようになり、まさにブレーンという役割を背負う形になった。ボタンマンなど、私たちの忠告にしたがって値段を倍近くにツリ上げさせたのだが、まさにその値段で即買い取りの青ランプがついた。他のクリエイターさんたちも、小野寺さんのネコが青ランプだったのをはじめ、全員、最低でも黄色ランプ一個は点灯して、外れというのがなかった。こういうときは本当にホッとする。それでも鈴木・西山両氏と、“また××さんのような人が来たら、面と向かって何と言いますかねえ”と今から心配をする。

 岡田さんはブレーン席に『フロン(夫論)』のゲラを持ち込んで、チェックしている。ネクタイ族の人たちが数名、楽屋を訊ねてなにかプロジェクトの打ち合わせをしている模様。相変わらず売れっ子だな。ただし、本人はモードをモノカキに切り替えているらしく、ブレーンとしての発言も“オレらもの書きと違ってキミらデザイナーは”というようなものになっているのが笑える。休息時間にブレーンたちで雑談。本が売れない原因とされてきたマンガが最近売れない、その原因とされてきたゲームまで売れない、今の子供はいったい何やってんだ? という話で、岡田さん“電話してんでしょう”と。芝崎くんが打ち合わせに来てくれて、しばらく話す。Fくんに渡したフロッピー、読み取れないとか。ひええ。

 リニューアル時はまた慣れないで収録に時間かかるかと覚悟していたら、意外にもほとんどオシ無しでスイスイ進む。司会の勝村政信が格段にうまくなった(場慣れした)こともあるし、新アシの押田さんが現場カン抜群。サクサクと進んで、9時半には収録終了。K子に電話して、タクシーで東新宿、ホルモンの幸永。

 ここ、昨日だかには開田夫妻がまた来ている。唐沢家と開田家で交互に通っている ようなものである。運良く空いてて、テールスライス、極ホルモンなどいつものやつと、冷麺。ホッピー二ハイ飲んだら鼻水とクシャミが出るは出るは。帰って鼻炎薬の んで、寝る。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa