20日
火曜日
痛くもないファラオさぐられる
ツタンカーメン様、ここらへんはいかがで。朝8時起き。ゆうべはかなり遅くまで背中が痛んで、寝つけず。K子に背中をさすってもらったりしていた。コンドロイチンとアリナミンをのんで、なんとか眠れる。陰気な夢などを見たが、朝にはなんとか回復。朝食、ホタテのスパゲッティ。
原稿、『Memo・男の部屋』。三時までかけて9枚ちょい。ルーティンだが、まず、読んで面白いものにはなったように(自分では)思う。『ブンカザツロン』ミスチェック続ける。どんどん出てくる(笑)。特に、「」の閉じる箇所がなんでこんなになってるの、というくらいめちゃくちゃである。香西秀信氏の著作に、あとがきで“大方の御叱正をお願いしようとは全然思わない”と書いてあるのがあって大笑いし たことがあるが、気持はわかるような気がする。
昼は三時過ぎにK子の弁当のお菜にしたオムレツの残りと、金沢の桜井さんのお婆あちゃんが送ってくれたタクアンで。このタクアンが無闇にうまいタクアンで、いくらでも食べられる。お婆ちゃんが漬けているところをテレビが取材にきた、というく らいの逸品らしい。金沢というところ、どれくらいうまいものがあるのか?
こないだ鶴岡が電話で話した河井克夫氏のロフトプラスワン事件、やはりいろいろ聞いてみると事実と相違があるらしい。カニを投げて問題になったのは事実だが、訴えられたりはしていないとか。とんだ迷惑をかけた。河井氏自身は、“まあ、そういうことにしておいた方が面白いんですけどねえ”と言っている。事実よりオモシロサ を選択する、というのはギャグに生きるものの基本というか、業というか。
丸谷才一『犬だって散歩する』などを読みながらちょっと横になったとたん、グーと眠りこんでしまう。やはり、ゆうべあまり寝られていなかったためであるか。『犬だって……』には、イギリスのサンドイッチはうまい、と書いてある。私がロンドンで食ったシュリンプサンドは、人生で食ったサンドイッチの中で一番のまずさだったけどなあ。人間、うまいものの記憶は年月とともにあいまいになるのに、まずかったものの記憶は生涯鮮明に残る。うまいものは(たとえ“さんなみ”の料理でも)また再体験が可能だが、まずいものはもう、二度と口にすまいと決心する(つまり、ただ一回の経験であると脳が判判断する)ために、記憶中枢に深く刻みこまれるせいでは あるまいか。
6時、新宿へ出る。高野でちょっと買い物してから、末広亭前でくりくり夫妻と待ち合わせ。ホモショップ『カバリエ』並びの(なんでこんな風な場所説明をするか)新潟居酒屋へ行く。本日の同伴者のカメラマン(くりくりの常連)、生井氏の行きつけの店だとか。地酒を飲み、サヨリやワラサなどを食べながら、いろいろと話を聞いた。店員がやってきて、ひょっとしてカラサワさんご夫妻ですか、と聞いてきた。われわれのファンであるらしい。こういうとき、自慢して差し上げられる程の著作がある身になりたいものですねえ。ひょっとしてマカるか、と思ったがマカらず(笑)。生井氏はグルメで、東京じゅうのレストランを歩き回っている。おまけに博識多才。珍しく、一座の中で一番自分が若い、という立場でもあったので、酔って生井氏にいろいろとタテツイて、ケツの青いところを露出してしまう。後悔するが、なにか久々の経験でうれしかったことも事実。