裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

16日

金曜日

いざキャバクラ

 高そうだな、ここ。ホテルで朝7時起き。ノドはゆうべ風邪薬をのんで寝たので、なんとか無事。部屋の乾燥で鼻の穴の中がバリバリになっている。シャワー浴び、8時半、下のレストランに全員集合、朝食。金沢に来てはじめてまずいメシを食う。あやさんはしきりに眠がっている。このひとは一日二十時間寝るそうだから無理もないか。彼女の日記を読むと案外いろいろなことをやっているが、あれはみな、四時間の うちになされたことなのですね。

 10時チェックアウト。とにかくさんなみで貰ったカブラとキャベツが重いので、他の荷物は全部宅急便で送り、K子の黒いバッグの中にその二つを入れて手に持つ。ずっしりともち重りがしているので、ひったくりが何か価値のあるものが入っていると思い、奪って中を見たらあきれるであろう。タクシーで金沢駅へ行き、金沢から小松駅へ電車で。小松駅でK子がまたイタイプーへ行きたいと言い出し、オミヤゲ屋の方を通りでさがすが、見当たらない。消えたか? と驚く。実はカンバンなどを一切出していない店で、シャッターが閉まっているとまるで痕跡がなくなるのであった。仕方なく本店でコーヒーなどを買う。

 小松空港までタクシー。さんなみやしゃもじ屋での食事は脂っ気がないから、いくらお腹がくちくてもすぐ消化されるが、ホテルの朝のオムレツが胃にもたれて、昼時になってもあまり腹が減らない。マスの笹寿司を買い、これを飛行機の中で食うことにする。オミヤゲ屋をあさり、へんてこな造型のガラス細工などを買う。あと、書店で機中の読み物。さすが地元で、森総理の自伝が置いてあった。東京じゃ、探したってどこにもない。

 飛行機に乗り込んだら、“あら、カラサワくん!”という声。見るとなんと、イッセー尾形と、マネージャーの森田夫人。奇遇というかなんというか、今朝、北国新聞でイッセーの公演の記事を読んで、“へー、来てたんだ”と思ってたところである。“記事、今朝読んだよ〜”“偶然ねえ〜”“ファーストクラスに乗ってると思ったけど”“余計なお世話じゃ”などという軽口を叩いて、自分の席へ。イッセーは何か、性別が判然としないオバサンみたいな顔になってきた。マス寿司食いながら、一路東京へ。

 浜松町で他のメンバーと別れ、私とK子は山手線で帰る。車中、朝日新聞の夕刊のコラム記事をまとめた河谷史夫『一日一話』(洋泉社新書)を読むが、文章も内容も取り立てて本にして読む必要性のなさそうなもの。K子はそのまま仕事場へ直行。私も帰宅してすぐパソコンの前に座り、夜までかかって本日〆切のモノマガジン五枚半書き上げる。書いて買い物に出る。夕食の準備。簡単にカモ肉の湯豆腐風。それと、貰ったキャベツを短冊切りにして、ソバミソをなすってバリバリ。さすがに甘い。ビデオでウルトラマンのキーラの回を見る。エンベル・アルテンバイが出ていたことに改めて気付いて驚く。スーパージャイアンツ、ウルトラマン、コンドールマンと、思えば華麗な出演歴である。この回でニードルS80に撃たれたサイゴがバラバラの破片になって吹き飛ぶところ、前回の復活ドラコがスパーク8に撃たれて部分々々消失していくところ、手作業光学合成の頂点とも言うべき凄さ。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa