裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

29日

火曜日

ジオングの沙汰も金次第

 タイトルはオタク(?)。朝7時45分起き。朝食、こないだ西武地下で押し売り同様に買わされたソーセージをパンにはさんで。原稿、9時から。K子への弁当はサクラエビと青ノリをまぶした磯飯に牛肉とピーマンの煮つけ。

 1時まで仕事。今日のメディアワークスとの打ち合わせ、時間を失念して会社に電話かけたら、Tくん3時戻りということで、じゃあ1時だろう、と判断して出る。その前に、ミスタードーナツで飲茶ランチ。肉まん一ケ、蒸しギョーザ二ケに汁めんが ちょっとで580円。値段にしちゃいける。

 10分遅れでTくんと打ち合わせ。マガジンハウスで没になった出版企画をそっくり預ける。『痴的E級生活の方法』『トンデモ本男の世界』の二冊が当面の仕事、それからオタク論の本一冊と、雑文集一冊、さらにこのマガジンハウス没本。普通のモノカキならこれに専念してこの一年過ごすところだ。実際、せわしなさすぎる。来年は出版点数を半分くらいにして、じっくり一冊々々を売っていきたいと話すが、Tくんの見通しでは、サブカル系ライターが来年までに半減どころかほとんど絶滅状態になるから、生き残った者は今以上に忙しくなるだろうとのこと。もちろん、生き残れば、の話だ。どんなに今、忙しくても、来年のことはわからないのがこの浮草稼業。まず、生き残ることを考えねばならない。忙しいうちにせっせと営業に回るつもり。芸能プロダクション時代痛感したが、仕事がなくなってから営業に回っても遅いことが多いのですな。

 ウェイン町山氏から人ずての人ずてでの話。柳下毅一郎氏が、『裏モノの神様』の後書の件で、とにかく怒り狂っているとのこと。“なぜ俺がアイツに言われなくちゃならないんだ”と言ってるとのこと。・・・・・・おや、ご自分は日記で、佐川一政氏のピクニックのところで、私のことを“佐川氏とケンカするような奴はどんな理由があろうとダメだ”などと書いておられなかったか。“唐沢俊一はシメた方がいいですぜ、村崎さん”などと書いてなかったか。私が本を出すずっと前の話である。なぜ、私が柳下氏にこんなことを言われねばならないのか。そっちの理由をまず、お聞きしたいものである。そう書かれていることは百も承知の上で、私は柳下氏の才能、業績を認めている。そのことは、この日記でも何回か表明している筈だ。ありていに言えば、柳下氏がいなかったら日本という国はずいぶんつまらない国になってしまうだろうとさえ思う。ただ、惜しむらくは文章に一般読者をして惚れ込ませるだけの力がまだない、と言っただけの話である。これは悪口ではあるが、正直な感想である。私は確かに人の悪口を軽く言う。これはサガみたいなもので、仕方がない。その代わり、人が私の悪口を言うことも、かなりの限度までは容認しているつもりだ。世の中の九九はこういうところで合わせねばならない。柳下氏は、どうも自分で人の悪口を言うのはいいが人が自分の悪口を言うのはガマンできない、というタイプのお人らしい。それでは世の中、さぞお暮らし難いことであろう。同情する次第である。

 帰ってから『3Dグラフィックス』用の原稿。『アイアン・ジャイアント』、もういろんな人が褒めているので、違う切口で褒めるのに苦労する。さらに同じ雑誌で、新潟の少女監禁事件のレビュー。こうも分野の違う原稿立て続けに一誌のために書いたのは初めての経験。

 ここらへんでガックリ力尽きる。総原稿枚数10枚に満たず。やれやれ。8時15分、豆腐料理屋『二合半』でメシ。オコゼ薄作り、おぼろ豆腐、湯葉。酒とビール。アルコールを醒ますため、一時間ほどK子とカラオケ屋でアニソン歌いまくり。帰ってまた少し原稿。こういうことも珍しい。

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