裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

15日

火曜日

羊はどうなることかと思いました

 タイトルには徹底的に意味がない。朝8時15分起床。朝食、ハムとチーズをバタロールにはさんで。コーヒー、バナナ。『創』原稿、15分で書き上げる。最短記録である。いつもはこれで今日の主なお仕事終わりで、いい商売なのだが、最近は次から次から次から次から次からと仕事が押し寄せてくる。ジャックは今に気が狂う。

 フロ入る。最中に鶴岡から、ちょっと重い内容の電話。うーん、不況に罪はあるんだけどね。とりあえず頑張れとしか言えない。それからノーザンクロス(札幌の業界誌編集プロダクション)用の原稿、これはいつも30分くらいで片付けるものなのだが、妙に手間取って1時間。どこかで帳尻が合っちまうんだな。昼は札幌からおめぐみのヤキソバ。ロフトプラスワンからメール。オタクアミーゴス整理券は配布開始して40分で全部ハケてしまったとか。

 さらに原稿、北海道新聞の書評星取り5番勝負。これに1時間。ここまでで執筆総枚数、400字詰め15枚程度。早いのか遅いのか。終わるとすぐ、早川書房から単行本原稿の催促。はいはいはい。必死で書き出すが、すでに精神力限界。出来たぶんのみをメールして、渋谷駅へ。外はえらく寒い。

 K子と待ち合わせて品川へ。品川インターシティギャラリーにて開催の『イタリアポンペイ展』。品川駅から東西自由道路なる吹きっつぁらしの通路をエンエン歩き、港南口を出て品川インターシティにたどりつき、やれうれしやと思ったらそこからさらにスカイウェイという、要するに縁側みたいなところをでかいビルの端から端まで歩かされる。イタリアよりちょっと近い、というくらい遠い。開田裕治夫妻、安達OBコンビと待合せて、入る。彫刻や絵画にはやや稚拙さが残るが、部屋の内部装飾がまるでアール・デコのようなモダンさなのに驚いた。ディオニュソス信者たちの秘儀が執り行われたという館の模様が興味深い。目玉展示である、“宝石を取りに戻って死んだ女性”の樹脂像、半透明樹脂から金の指輪や宝石が透けている。この女もまさか2000年近くたって、自分が欲かいて死んだ姿が展示されて人目にさらされるとは思ってもいなかったことだろう。

 そこからタクシーに乗って銀座へ。レオ澤鬼氏、堂昌一氏など出版美術家連盟の個展。睦月さんとここで合流、藍川京さん、村田らむくんなどと会う。神崎夢現さんに偶然会った。米田さんといま、仕事しているのだそうな。ちょっと話すが、なにしろ人で人で。外の寒さがウソのような人いきれの熱気である。官能倶楽部メンバーで出て、開田夫妻ごひいきのビヤホール『ピルゼン』。ここで植木不等式氏とも合流。ワインとビール、かなり飲んだ。カキのコクテル、カスラーという塩漬け豚肉が美味、美味。馬鹿々々しい話連発、そこからさらにもう一軒、『シェスタ』というワインの店に行く。ここではサングリアなど。植木氏と、駄ジャレの応酬の合間に、モノカキとしての唐沢俊一の今後について、ちょっと真面目な話もする。いろいろ考えさせられることあり。ここの、チロルハットみたいなものかぶったボーイさんが、なんと石井輝男監督の『地獄』で宮崎勤役をやった平山久能氏だった。あやさんが仰天していた。奇遇というのも世の中にはまま、あるが、モノがモノだけにな。飲み始めたのが早かったので、かなり飲んでベロベロになったが時間は10時ちょっと過ぎくらい。タクシーで帰る。

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