裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

11日

金曜日

ドンナ・アンナでよかったら

 命預けます。朝、8時起床。よく“勤勉な日常ですねえ”と感心されるが、生理的にこの時間になると腹がへったりトイレに行きたくなったりして、どうしても目が覚めてしまうんだよなあ。それに、AB型の特長と能見正比古の本に書いてあったが、夜に徹底して弱いということ。血液型は信じてないが、これが私の場合、まったくあてはまる。徹夜仕事が出来ないではないが、すると翌日いっぱい、何も出来ない。だから、朝早く起きて夜はどれだけ仕事が残っていても9時には飯を食って酒を飲んで早めに寝てしまう、というのが、実は最も効率的なスケジュールで、現にそうしながら、この3〜4年は年に十冊の本をコンスタンスに出し続けている。できれば午前中にその日の仕事は全部片付けてしまう、というのが理想なのだが、なかなか理想は現実にならず。

 朝食、ハムとトマトをバタロールにはさんで。K子にはマカロニのカレー炒め。それとオレンジ一ケ。あとはK子に弁当作った他は、いちにちじゅうやまみち、ではない、いちにちじゅうげんこうかき。ネットものぞかず、電話もかけずかかってこず、本も資料用以外読まず、モノカキとしての本分をまっとう。もっとも、それで最終的に完成したのが十一枚のみ。少し情けない。昼はウドン玉がひとつ残ってたので、それと豚バラ肉でミソ煮混みうどん。

 夜7時、買い物に出る。これが本日最初の外出。大盛堂書店で雑誌立ち読み、西武デパートで食材買い込み。帰って夕食の準備。三遊亭圓生のCDを聞きながら。私は圓生至上主義者であり、文楽志ん生談志志ん朝それぞれに好きだが、総合点でやはり圓生が昭和の名人という名に価するだろうと思っている。だけど、これだけコトバを大事にする人にして、何故か船頭に“目的”と言わせたり、宿屋の主人に“農業”などという文句を使わせたりしている。江戸の庶民のコトバじゃあるまい。他の部分があまりに江戸の美意識に則って語られているので、それらのコトバが浮き上がって聞 こえてしまうのである。

 9時、夕食。イカとセレベス芋の煮付け、ピータン豆腐、牛タン塩焼。K子が自分の日記にけしからんオタクの悪口を書いていたので、さらに徹底してオタク教育をしようと、LDで『宇宙人東京にあらわる』を見せる。私も十五年ぶりくらいの再見なのだが、そのころはSFに慣れぬ当時の大映の、庶民感覚あふれた日常描写が映画のリズムを崩しているように感じてイヤだった。ところが今見ると、陳腐なSF部分より、映画の作られた昭和三十一年当時の日本のカラー映像による描写が貴重な記録として面白い。怪星の接近でなぜか崩れ落ちるビルに閉じ込められた山形勲が恐怖で絶叫するシーンがエンエンとあり、爆笑。これだけでも観る価値アリ。パイラ星人が、拍手の代わりに手の先をピョコピョコ動かすシーンも可愛い。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa