6日
日曜日
シェラザード言って聞かせやしょう
かくして千夜一夜物語は始まった。朝、8時起き。朝刊に京都幼稚園児殺害犯自殺の報。犯人の自殺はまあ、仕方ないとして、“てるくはのる”の謎がこれで永遠に答えの出ないものになってしまったのが、野次馬ファンにとっては一番歯がゆいことだろう。朝食、K子にポーチドエッグとハム。私はゆうべ京王プラザで買ったツナサンド。日記書いて風呂入り、有明ビックサイトまで、ワンフェス&トイフェス。
招待状忘れたことに気がつき、ちゃんとパンフレット(入場券代わり)を買って入る。一般口から入るのは慣れてないため、入場通路でないところを歩き、係員に注意されてエンエンもう一度、来た道を戻らされたりする(FKJ氏に会ったが、彼もパンフレット買わずに入ってしまい、エンエン戻らされるところだった)。こっちの名前を名乗って取材と言えば融通をきかせてくれたかもしれないが、まあ、郷に入っては郷に従え。東浩紀じゃないんだからこの程度のことでは怒らない。ただ、厚着していったので場内の人いきれで汗をかいて困った。
ワンフェス会場、井上デザインのみんなも来ているとのことで探そうとしたが、いや人で人で。こんなのは初めて。挨拶回りもロクに出来ず、一時退去。トイフェスの方へ行く。さすがにこちらは顔パスで入れた。準備と受付の応対でバテている柳瀬くんに挨拶、会場を回る。知り合いのディーラーさんたちに声をかけられたり、サイン求められたり。やっぱり、私は古物業界のヒトか? ゲゲゲの鬼太郎に出てくるたんたん坊みたいな、オバケの頭だけの器具があり、何かと思ったら50年代のアメリカのパンケーキ焼き器具。こりゃオモロイわ、と思ったらビンテージギャラリーのおっさんが顔を出して、カラサワさん、どうも、と言う。やっぱりここの商品か。これが3000円。おっさん“損をさせられた”などと文句を言う。こんなん、私の他に買う奴がいるものか。安くて喜んでいたら、ロボット型で、サウスパークのアイク(カイルの弟)にそっくりなランプ台をめっけた。これが1万8000円。おお、と思ったらおっさんがニヤニヤして、“いいでしょう”と言う。やはりここでは金を使うことになっている。それでも若い店長が私の顔を見て、1万円にまけてくれた。
他に、一宮から出店してます、というコーナーに、オリジナルスタトレの通信セット。これ、ピカピカとランプが明滅するところが安っぽくて、オリジナルのセコさの感じが実によく出ている。1万5000円のところ1万4000円で購入。店主、
「いやあ、こういうどうしようもないもんを喜んでくれる人がいるということは、東京ってのはスゴいところだと思いますわ」
などと言う。そこで肩を叩かれたのが北原さん。この一宮の店主は北原さんの親友で、このオモチャも一緒にアメリカ行ったときに買ってきたものなんだとか。何か、やはり因縁みたいなものがある。昼になったので、オリエンタルカレーの出店で食事する。会ったファンに、“リニューアル以降、ホームページが見られない”と言われる。今朝も沖縄の中笈氏からそういうメールもらったばかり。何かファイル指定でミスがあるらしい。
ソノシート類、本類もかなり買い込む。“渋めのところがお好みですねえ”と感心だかなんだかわからないがされる。昭和12年に出ていた『Gメン』というアメリカギャング小説の少年向き翻訳本(『日本少年』付録)などという珍品を買った。黒岩涙香なみに、登場人物の名前が全部漢字に置き換えられ、ダン警部が団探偵長、マッキーが松木、カドーが加藤、キッチーが吉蔵にサリーが佐理子。あっという間に七、八万が消えた。少し主催者控室で休息。岡田斗司夫氏は風邪で主催者なのに休んでいるそうな。モノマガN田くんと雑談。業界の裏ばなしいろいろ。
3時ころ、そこを辞する。帰る前にもうひと回り、と思ったら、アメリカ製ショーグンウォリアーズのゴジラを見つけた。これが、ゴジラにまったく似てないガマ顔の実にぶっさいくなゴジラで、前から探していたやつ。値段を聞いたら、保存状態が悪いので1万でいいという。中を見せてもらったが、要は腕を飛ばす(ショーグンウォリアーズはゴジラだろうとなんだろうと腕がロケットパンチ)ところのバネがバカになっている、というだけで、私には関係ない。早速買い。“状態がよければ5万くらいしますよ”と、店の男が言う。こういうアンティーク店の主人というのは、客にいい買い物をされると必ずブーたれるのが面白い。去年も、パチもんの『のらいぬ二等兵』(のらくろのヒゲがない)というマンガを500円で買ったとき、そこの店主が“本物だったら3万はする”と言っていた。そら、本物だったらするかも知らんが、でも、パチもんだもんなあ。
タクシーで渋谷まで帰る。なをきに電話。買ったソノシートの話いろいろ。今日、私の買った『名犬ロンドン』の主題歌と、なをきがこの間手に入れた『アッポしましまグー』の主題歌をそれぞれダビングしあうことにする。オタクな兄弟だなあ。
8時半、夕食。カツオのヅケ刺し、塩焼、青のり豆腐。カツオ塩焼はゆず胡椒で食べる。ビデオで1957年大晦日のNHKニュース。この当時の日本の先行きを考えない突っ走り、今公害問題などで批判ばかりされているが、文化現象として見直してみれば、これほど面白い時代はなし。