裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

13日

日曜日

ヘンゼルはグレてる

 婆さん焼き殺したりして。朝、8時起き。朝食はアボカド半個、オレンジ一個。朝からずっと原稿書き。週アス一本アゲ、ブツと共にK子に渡す。それから単行本。去年の十一月なみのスケジュールである。体、またコワレなきゃいいが。

 底冷えがするというか、ヒンガリとして部屋がさっぱり暖まらない。ネコ、エアコンの温風があたる椅子の上にじっと坐って、眠り猫みたいに動かない。昼はK子の弁当用に作った、ピーマンと豚肉、シメジのメンタイ炒め。これの残りと大根の即席味噌汁でご飯イッパイ。来月27日の二人会のゲスト、誰にしようかと仕事しながら考える。リイド社の山咲トオル本の解説を書き上げて、メールし、そうだ、なにしろプロのゲーノー人であるところの山咲センセイに出演を依頼しようと思いつき電話。留守だったが留守録に入れておく。

 原宿のアメトイ屋から、“カラサワさん向きのオモチャが入ってますよ”と電話。ずっと原稿書いてて煮詰まりそうだったので散歩がてら出かける。日曜で、若い連中がゾロリゾロリ。私向け、というのは、ケナー社がイタリア輸出向けに作ったスターウォーズのキット。R2−D2がイタリアじゃC1−P8という名になっているんだね。呼び方の関係だろうか、他のキャラはアメリカ版の通りなのに、ドロイドだけが変えられている。さっそく購入。D−3BO(C−3PO)も欲しかったが、誰かがもう買っていった後だった。あと、原宿の道路でフリマ状態で出ている店に、古いレコードが安く売っていたので、これも数枚買い込む。全部で4500円支払ったら、売ってた女の子が“今夜はおかげで豪遊ですよぉ!”とヨロコんでいた。

 青山まで足を延ばして買い物。帰ってみたら留守録に山咲センセイから出演OKの電話。3/27、歌うホラーマンガ家のお姿をいずれも信心のともがらは近う寄って 御拝とげられまするよう。

 ネットのあちこちで荒井注追悼。みんな、そんなに荒井注が好きだったのか、という感じ。ドリフターズのファンというのは二世代にまたがるが、荒井注のいた時代を知っている、というのは、あきらかな自世代認定の示準になるからなのだろうな。誰もに認知されている、ある特定の期間のみ限定の事象、というのが大事なのである。明治の歌舞伎ファンの“九代目の由良之助をあたしゃア知っている”なんてのはそれだろう。九代目爺い、なんて言葉まで生まれたが、歌舞伎というのは案外、庶民のそのような世代確認手段として重宝されていたのじゃないか。現今の小劇場ブームも、“いま、このときだけの瞬間を限られた人数で共有する”ことに重点がかかっていることはあきらかである。南方の原住民の中には、結婚式のことをみんな忘れないように、出席者同士殴り合ってその痛みで記憶しておく、という部族があるそうだ。猟奇事件にみんながワイワイ騒ぐのも、畢竟、“オレの生きた時代にゃこんなスゲえ事件があったんだぜ”という、次代との差別化のような気がする。

 9時、夕食。豚肉と水菜で、トンハリ鍋(ハリハリ鍋の豚肉バージョン)。昨日、安達Oさんが食べたとパティオで読んで、こっちも食べたくなった。あと、昨日の鱒の残りと、野菜の梅干しサラダ。ビデオで『サムライ』途中まで。この映画における日本語(日系俳優がしゃべる)の凄まじさ、どうやら日本語らしく聞こえるという限界のラインで、これまでさんざ見てきた日本誤解映画の中の言語中トップクラスのものである。

・今日のお料理「梅干しサラダ」
 梅酢を切らして、即席梅酢を梅干しでこさえてみたら、これがイケたのでわが家の定番となったもの。梅干しの大きいのをタネをとり、フォークでつぶして、寿司酢で溶く。それを半分に切ったミョウガ、スティックに切った胡瓜、大根などに小一時間ほどまぶしておくだけで、箸休めに格好な即席漬物になる。上に千切りのシソなど散らすと料亭の突きだしみたいになる。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa