裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

28日

木曜日

おい、幾多郎!

父、西田得登(声・田の中勇)。
……ちなみに、得登はヤスノリと読み、母・寅三はトサと読む。かなり難読な名前の両親である。

※ミリオン原作 社会派くん対談

朝、8時起床。先に入浴して、朝食はスイカ。日記つけ、調べモノ少し。むっと蒸して、部屋にいるだけで息苦しい感じ。

ミリオン出版原作一本。事件そのものが面白いので、大して演出は加えずに書く。殺人犯というのは、行為のみを書き記すと、どんな猟奇事件でも、いや、猟奇事件なればこそ、マヌケに見える。実際、血なまぐささを排除してみるとコメディの要素が大いにあることがわかる。

トンデモ本大賞授賞式、前売りのハケが大変いいと報告があったが、本日、無事全席ソールド・アウトとなった。大賞を会の自前で運営するようになって5年目にしての快挙である。とはいえ、知らないで来場してのトラブルが窓口でありはしないか、心配になったがK子が受付を名乗り出たので、まず大丈夫だろう。

昼は昨日のシジミ豚鍋のダシに味噌を入れて雑炊。ちょっと失敗。
3時、家を出て渋谷へ。時間割でアスペクトK田くん。本の打ち合せちょっと。営業部は出版と他のジャンルのイベントとを結びつけたがるが最初から他ジャンルでのイベント(談笑の真打昇進とか)があればともかく、一から立ち上げるとなると大変である、というかそんなイベントがホイホイ立ち上がれば苦労はしない。K田くん、ちょっと心当たりがあるというので、そっちで当たってもらうことにする。

打ち合せ中に村崎さん来て、社会派くん対談。構成をどうK田くんがするか、という展開になる。終って、事務所に戻り、オノのモバイルで大賞で流す映像チェック。

それから、紙芝居の稽古。梅田佳声先生より直々に預かった『モンスター』。これまで何回かざっと読み通しの稽古はしてきたのだが、明日の『トンデモ大賞前日祭』でちょっと実験的にお披露目してみようという趣向である。さて、どうなるか。

8時半、帰宅。台湾旅行の準備。サングラスはどこへ行ったあ、と部屋をひっかき回す。何とか見つかる。京都のメガネ店(『冠太』の常連の映画マニアの人の店)で作って、最初に使ったのも京都(太秦での『猫三味線』撮影)だったな。

シャケ缶、キャベツの残り、ナスでなすかやきを作り、それとコロッケで酒。光市殺人事件の“元少年”(変な呼称だね)の証言をテレビが取り上げていたが、“押し入れの中のドラえもん”は、コメンテーターたちが“とても信じられない、ばかげている”と切って捨てているが、確かに悲惨極まる殺人と“ドラえもん”という語感の取り合わせはかなりキッチュ。しかし、と、考えるが、これ、アニメ世代にとっては“ばかげている”と同時にある意味リアルな言い訳、なのではないか。アメリカではよく“フラッシュ・ゴードンになったような気分で……”という言葉が日常に出てくる。宮崎哲弥氏によると、この部分は例の弁護士連が作った供述書にはなかった部分らしい。元少年のオリジナルである可能性が高い。妄想の中にアニメの設定などが出てくる、というのはある世代以降には自然であろう。そのうち絶対
「三十まで童貞だと魔法が使えると思って」
と言う被告が出てくるはず。

宮沢元首相死去。87歳で老衰死、というのはちょっと今の感覚では若過ぎるような。福田赳夫は100歳まで生きたし、中曽根は89歳でまだ生々しい政治への色気をただよわせている。小泉首相(当時)の引退勧告に、中曽根は大いに抵抗したが宮沢はあっさりとそれを受け入れた一方で、小渕内閣のとき、首相経験者がまた表に立つのは、というようなこだわりもなく、大蔵大臣に就任している。出処進退にこだわりがないのは清々しくも感ずるが、政治家としてやはり頼りなげにも映る。この人の首相のときに、自民党が発足以来の野党への転落を体験したのも、このこだわりのなさが原因ではないか、と思う。発言をコロコロ変えて中国や韓国の機嫌をうかがったのもそれ。個人的な感想を言えば、この人は政治的教養は凄まじいものがあったが、所詮、政治家ではなかったのかな、という感じである。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa