裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

2日

土曜日

ハム太郎侍

ひとつ人の世、ヒマワリの種を噛り(ゴロが悪い)。

※生駒市講演 山田監督と会食

ゆうべ帰ったら、明日の朝用のパン(ベイグル)とコーヒーが玄関に置かれていた。で、7時起き、風呂に湯を入れて、たまるまでまたベッドにもぐりこんでいたら、7時20分ころ、母がちゃんと起きているか確認に来て、
「もう起きないといけないんじゃないの」
と声をかけてきた。49の息子つかまえてコドモ扱いである。『サザエさん』によくそういう親子がネタで出てきたがあの作者も母親がいつまでも自分を子供扱いしていたのをマンガに描くことでエジャキュレーションしていたんだろうな。

そう言えば昨日、事務所でオノに
「明日の新幹線、何時だったっけ」
と訊いたら、
「9時半ですね」
と言うので、そのつもりで7時半起きしたのだが、チケットを見たら10時3分発だった。これも、10時というと私がのんきに朝寝をしてしまうからだろう。ここでもコドモ扱い。

風呂使って、ベイグル噛って、メールチェックのみして家を出て、地下鉄で東京駅へ。新幹線の中で、今日の講演用のメモなど作る。相変らず、新幹線の中ではエアが通じづらくてイライラ。

新幹線は京都まで。そこから近鉄線特急に乗り、大和西大寺駅まで、さらにそこから奈良線に乗り換えて生駒に到着。係の人が出迎えてくれる。昨日、プロダクションの人から電話があって、
「お役所が、6月1日からクールビズという決まりなのでノーネクタイで来るのですが、お気を悪くなさいませんよう」
とわざわざ電話があって、オノが大笑いしていたが、中にはあるのでしょうねえ、
「オレを何だと思っている」
と怒り狂う人が。

駅から車か、と思ったら、歩いて1分のところだった。市民会館というか、よく劇団が稽古場に使うようなところ。和室の控室で、迎えに来てくれた係のおじさんに
「すいません、ではこのモバイルをプロジェクターにつないでください」
と言ったら、エッ、と、世にも理不尽なことを言われた、という表情になり、
「いや、しかしもう、食事が来ましたので、それの後で……」
と、嫌なことは出来るだけ先に伸ばしたいという感じで、脇の若い女性に、
「キミ、どうする? これをプロジェクターに……」
とあせった表情で言うと、その女性、いとも軽く
「あ、はあい、わかりましたぁ」
と持って行った。

食事はサンドイッチ。食べてほどもなく時間、600人ほどの会衆の前で健康と日本人のつながり、というタイトルで講演。1時間半、ときに笑いも沸いて、まずまずの出来、と自分で思う。5分オーバーは私の講演としては珍しい。会場から控室に戻るとき、サインを求められた。色紙一枚、『トンデモ美少年の世界』一冊。
「こういうもの、もう書かないんですか」
と言われた。書きたいのだが場がなくてねえ。

色紙にサイン、10枚ほど。市長の名を入れてくれと言われる。
「本来なら市長が挨拶に来ないといかんのですが、いろいろとゴタゴタしておりまして」
と。昨今の事件のことをかなり気にしているらしい。

大和西大寺まで送ってくれる。途中、いろいろ市の事情など聞かせてくれて面白し。奈良という場所についても、
「修学旅行生も、奈良には必ず来るんですが、素通りして京都に泊まるんですな。大阪料理、京料理というのはあっても奈良料理というのはない。グルメの方面で人寄せられないところはダメですわ」
と。なるほど、私の修学旅行の時代からそうだった。
「奈良の食べ物ですぐ出てくるのは奈良漬けと鹿せんべいだけですからねえ」
と言うと笑っていた。

さて、行きの路線を逆にたどって京都。オノがホテルをとるとき
「何かあるんですかね、市内のホテル、ほとんど満員ですよ!」
と言っていたが、どうも修学旅行シーズンらしい。われわれの修学旅行のときは、もう木賃宿みたいな宿に泊まった記憶があるが、今の中学・高校生は高級ホテルに泊まるようだ。

で、今回宿をとったのはホテルモントレ京都。住所を確認したら烏丸三条。駅が七条だから、四条くらい歩いていけるだろう、と歩き出したら、これがまあ、遠い遠い。三十分かかった。汗だくになる。

ホテルにチェックインして、SPAで足をほぐし、メールをチェック。せっかく京都へ来たのだから、と以前映画でご一緒した岩澤侑生子ちゃんを食事に誘ったのだが、彼女、いま大学の卒制の準備で身が空かないというのであきらめた。そしたら、講演お疲れさまでした、とメールが来て、何とか時間を作って来てくれるという。山田監督と冠太で飲むので、そこで、と。

着替えて外へ。京都も蒸し暑いが、汗を流した後にはなかなか快適な気候。6時45分、愛車のミニローバーで迎えに来てくれた監督と、太秦へ。いま、監督は劇団新感線のパンフの原稿で大変らしい。
「もう金田一に関してはあらゆることを書き尽くしているんですよ」
と。

冠太、大将、あいかわらず店はこういうときしか開けないが、元気な模様。弁護士の卵(まだ卵かい、とよくからかうのだが、なかなか
難しいらしい)のAくんも呼んだという。山田監督と、例の件、また例の件などでいろいろ話す。今日はジュンサイとウニの先付、小さいキチジの塩焼き、馬刺し、馬レバの胡麻油和え、鯛のかぶと蒸しなど。〆はもちろん、ぐじ飯とぐじのかぶと汁。お腹一杯。

大将、ぜひまた母を連れてきてえな、と言う。雷蔵話がしたいそうである。

ゆっこちゃんもちゃんと来てくれる。若い子の食欲は見ていて気持ち良い。彼女の実家は延暦寺の梵鐘を鋳造したという、京都でも有名な梵鐘屋さんで、冠太の大将、そこの人とも知り合いらしく(この大将は京都のほとんどの著名人と知り合い)大喜びしていた。また学校に戻る、という彼女ととりあえず記念写真。

冠太の娘さんももう中学生。友達と携帯でずっと電話していたのだが、いや、その内容というか、電話相手と共通の嫌いな友人の話を
している、その嫌いな友人への言及がキツいキツい。人格どころか存在を否定するようなイキオイ。Aくんと山田監督もアテられて、
「今の子は怖いですねえ」
と言うが、いや、女の子って千古万古、こんなもんなんじゃないのか?

さすがに、列車乗り継いでの生駒入りと、ホテルまでの歩きで、体がバテたか、酒が途中でつらくなり、ウーロン茶にする。山田監督に送られてホテルへ帰る(おごっていただいた)。車中、いろいろグチばなしもして、慰められる。京都に来るたびにこのグチは出るだろうが。ホテルにもどるが、ちょっと所用あり、外へ出る。タクシー、妙なところに降ろされ、少し迷う。その後、ホテルに帰るのに、これまた30分以上、さまよい歩いた。ホテルに戻り、いろいろネットをめぐったりして2時近くまで起きていたが、酒は飲まず。珍しいこともあるもの。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa