裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

22日

金曜日

コウムイン!朝

全国の公務員の皆様、お早うございます(徳光和夫)

※楽工社原稿 打ち合せ&会食

朝方ディープな夢三連発。最初の夢はふるい上映館でアートアニメの上映会をやるというもの。二団体共同での主催だが、この上映館には、前と後ろに二つのスクリーンがあり、前のは小さく、後ろのは大きい。どっちでいつも上映しているか、が違って、われわれは大きいスクリーンをいつも使っているのだが別の団体の、えらい評論家の先生が
「アニメの魅力は小さいスクリーンでないと伝えられない」
と文句を言う。あと、チラシをどこに置くかとか、細かいところでもシキタリが全然違って文句を言われ、間に立ってハラハラするというもの。

もひとつ。ウルトラマンの新シリーズに脚本兼博士役で関わる。これが凄まじく救いのない設定で、世界がどんどん消滅していく中で戦うウルトラマンたちだが、やがて守るべき人類も、自分たちも消滅していく。科学特捜隊基地も田舎の役場みたいなところで、そこで私はディスペレートに笑い続けるといったもの。

最後に、地方都市の駅に旅支度をして急ぐ夢。と学会のS井さんが荷物を持ってくれ、開田さんからは汽車の時間が携帯で知らされる。間に合わなくはないが急がないといけない時間。一緒に汽車に乗る見知らぬ連れが、鞄に石鹸だのゴム靴だのウイスキー瓶だのを山ほど詰め込んでいる男で、知り合いと長話などしており、イラつくというもの。

朝8時起床。足、まだちょいと痛むがまず、快適。ギプスはめたあの重苦しさからの開放の方が精神的に格段によし。入浴、三日ぶりに湯船につかる。9時、朝食。スイカ、青汁。

書きかけだった楽工社のトンデモ本原稿、まとめる。時間かけてやるとこういうものは面白いんだか面白くないんだかわからなくなる。落語のクスグリを考えながら演じると面白くなくなるのと同じ。

メールで某人と、タレントのメイクについてやりとり。結局、そこの事務所とか演出家とかのトップの意識ひとつだと意見は一致。
「お前はここが悪いからここが目立たないようにしろ」
と指示するトップがいるところはダメで、
「お前はここが一番のチャームポイントなんだから、ここさえ目立たせればあとの欠点はどうでもいい」
という考えの人間がトップでないと、女優ってのは売れない。あ、でもこれってタレントとかでなく全てのことに当てはまるか。マンガ家でも文筆業でも、“こうするな”“ああするな”と言われ続けてきた人間というのは、結局、やればいいこともできなくなる。

伊丹十三って人が映画においてそういう演出の仕方をしていた人だそうで、彼自身言っているが、彼の演出は
「この人物の笑い方はああではない」
「ここに○○があっていいはずがない」
という、ネガティブの堆積で形が決まっていく方式だったそうだ。『伊丹十三の映画』(新潮社)で山崎努曰く
「(いくら自分のキャラクターを作り込んで現場に臨んでも)現場には共演者もいれば、監督やスタッフもいる。天候にだって左右される。つまり何が起きるかわからない。でも逆に、そのせいで自分が意識していなかったものが出てくることがある。僕はむしろ、それを期待している。手入れの行き届いた庭の思いがけないところに思いがけない雑草が生えてくるのを喜ぶというか、そういうのりしろのある演技を理想としているところがあるんです」
ところが伊丹監督の演出はその雑草の生えることを許さなかった、というか、雑草を面白がるという発想がなかった(あえて排除していた)ようだ。なるほど、と思うが、それだから伊丹映画は、結局監督の演出みが目立って、スターをブレイクさせるということがなかったのかなあ。どちらが正しい、ということではないが。

昼は母の室で鶏そば。今日は薄塩味。うんと塩辛い方が美味く感じる。1時半、原稿書き上げてアップ。学研Nくんから打ち合せ希望のメール。彼との初仕事が、解散が報じられている朝日ソノラマだった。朝日ソノラマの出版物、売れているものは朝日新聞社が引き取って存続させるとのことだが、『ネムキ』を編集できる朝日の編集者っているのか?

朝から梅雨らしい雨。気圧も低く、気分もダウナーである。しかしやるべきことはやらねば、とテンションを無理に上げて出かける。

某お役所で書類調べ。数年前に行ったときとはまるでシステム違い、申込書作成とか、ほぼ全ての手続きが電子化されていてとまどう。しかし、そのせいかどうか、1時間はかかると思って時間つぶしに本など持っていったのだが、30分で全て完了した。

帰りに乗ったタクシー運転手さんがやたら耳の遠い人で、怒鳴るように指示しないと聞こえない。喜劇のような感じ。

事務所に出る。某誌のインタビュー用の資料を作る。私なりの視点で見る日本のミステリー・スポット10選。オノは月曜収録の番組が、まだ場所も入り時間も報告がない、とちょっといらだっていた。

オレンジーナ、間違って事務所の方に届いてしまった。半分を紙袋に入れて持ち帰る。自宅でちょっと休む。7時半、再び家を出て、新宿伊勢丹。上の天一で、某K談社Iくん、Yくんと、K子と会食。某お仕事の話だが、いまやっているミリオンの単行本の話が出て、母殺しだの脳をえぐり出してだのという(何しろ猟奇本である)話を、K子がウレシソウに話すので周囲にちょっと気を兼ねる。

天一は久しぶり。メゴチ、アオリイカ、アスパラ、サイマキなど。アオリイカとアスパラことに美味でおかわりする。9時半でラストオーダー。出てもう一軒行き、K子に渡した資料見てワイワイ話しながら
飲む。企画始動は来年からになるか。今日も話弾んで、ちょっと気がついたら11時半。もうちょっと話したかったが、金曜夜の新宿でここ過ぎたらタクシー拾えなくなる。あまり飲まず、帰宅。メールチェックのみして寝る。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa