22日
月曜日
杉並博士
口ごもって早口で言うと“死神博士”に聞こえます。
朝9時起床。朝食を9時半に延ばす。入浴、左足の膝小僧のところに虫に食われたような跡あり。猫をこのところ庭に出しているのでついた蚤か。9時半朝食。青汁コップ半杯、コーンスープカップ一杯、バナナ小一本、ブドー数粒。
トイレ読書『ウォーホル日記』、本日の登場有名人、オットー・プレミンジャー。2日連続で偶然出会って、
「明日はどこで会うだろうね?」
とか会話をかわしていた。
誕生日メッセージをマイミクの方々からたくさんいただく。メールでも陸続。合わせると100を超えた。ありがたいことである。しかし、祝ってもらうにしろ何にしろ48歳という年齢は中途半端だな、と思うのである。もうおれも50か、と諦めるにはまだ2年の執行猶予期間があるがしかしまだ40代、と胸を張っては言えない後ろめたさもある。生乾きなのだ。以前、マンガ評のために女性向けコミックをまとめて読んだとき、主人公の年齢を28歳に設定している作品がやたら多くて、なんでだろうかと思ったものだが、これも、30を目の前に、まだしかし未練たらしく20代にしがみついていたいジタバタの年齢、というところが話を作りやすいのだろう。私もそのジタバタの年齢なのかもしれない。とはいえ、徳川夢声を目標とする私にとっては人生の最盛期は50からというのは30代の頃からの設定。あと2年でその最盛期への準備を完成させねばならない。
オノにメール、今日3つほど打ち合せ、原稿受け渡しなどが重なっているので、一件を明日延ばしにしてもらう。弁当、タラコと牛佃煮。それに黒豆納豆を加えて昼食。味噌汁の味噌はさらに『蓬莱』より100円高い高級味噌になる。1時半、出社。タクシーの運転手さん、東京の大雨による被害にやたら詳しい人で、何年前のときはここがやられ、そのまた一年前には、という話を延々。おかげで道の指示が遅れて曲がるべきところを通り越してしまった。
テアトル・エコーから公演の御招待状が来ている。熊倉さんからは個人のお手紙で案内が来たのだが、こっちは社長から。2時、時間割にて『プロント・プロント』打ち合せ。担当がSくんからHさんという女性に代わる。あと、ページが人気につき倍増(といっても2ページになるだけだが)なので、そのレイアウトの話。〆切時期が毎号変わるのを何とかしてほしいと頼むが、広告を入れる関係上、集まらなかったら少し遅らせるなどしなきゃいけないそうである。
いろいろ仕事に必要なものを探しにHMVとブックファーストに回るが、どちらにも目当てのものなし。くたびれ損で帰社。仕事デスクのまわりを少し片づけたら、ひとつ、探していたものが出てきた。気圧のせいか肩がゴリゴリになる。マッサージ行きたいが時間なし。4時、東武ホテルにてバーバラと一緒に清流出版、佳声先生と打ち合せ。息子さんのカズオさんも来る。佳声先生、今日は青い帽子をかぶり、何か若々しい格好でダンディ。喫茶店に入ったら同じく打ち合せしていたタケカワユキヒデさんに会って、握手。バーバラが“わ〜!”と感動していた。
スケジュール問題、書き下ろし本の件など。打ち合せはざっとで終わり、清流出版のUさん、“社長からです”と、誕生プレゼントにワインを二本、いただく。そして、カズオさんからは、
「これはじゃあ、ウチから」
と、紙芝居の一そろいを。佳声先生が私のためにわざわざ“合うものを”と探してくださったというもので、『モンスター』という怪人アクションもの。これを研究用に預けてくれるという。嬉しくて言葉が出ない。なんとか自分なりに工夫して、これを持ちネタにしよう。最高の誕生プレゼントである。
いただいたものを一旦バーバラに事務所に持ち帰ってもらい、再度、オノとやってきたバーバラ、佳声先生父子と、六本木へ。誕生祝いの会として事務所の女性二人が選んでくれた店である。バーバラお勧めのイタリア料理『シシリア』。佳江さんと佳声先生が一緒のときは体のことを心配してあれは駄目、これは駄目といろいろチェックが入るので、佳声先生にイタリア料理は大丈夫だろうか、と心配になるがカズオさんに訊いたら
「なに、何でもOKですから」
とのこと。ここらへん娘さんと息子さんの違い。
で、なるほどと安心したのは、ここは(そう言えば十年くらい前に来たことがある)いわゆるシャレたイタ飯の店、ではなく昔なつかしいハイカラ洋食屋の味の店、なのである。いかにも私好みだし、これなら佳声先生も大丈夫だろう。
バーバラがぜひこれは、と推薦したグリーンサラダが、キュウリの薄切りサラダで、ドレッシングがおいしい。それに紙のように薄いピザ、日本人好みに茹でた(つまりアルデンテなどでない)スパゲッティなど。仔牛のカツレツにかけるガーリックソースのガーリック濃度の高さに、オノが欣喜していた。
バーバラに、こないだ考えたアイデアを話し、即座に賛成を得る。そろそろ混んできたこの店を出て、芋洗坂を下って、家庭料理“まつもと”。潮さん連れてこの店、よく来たな、と思い出にふける。さっきのシシリアがいかにも昔ながらの洋風料理という店なら、ここの店はいかにも昔ながらの居酒屋料理。銀ダラの煮付けがしみじみおいしい。佳声先生、さっそく
「♪銀ダ〜ラ、銀ダ〜ラ」
と。これはやられた。こっちもとりあえず“8時だヨ! 全員酒豪”などとダジャレで応酬。一杯750円の立山を三杯くらい飲んだ。
そこで佳声先生父子と別れ、まだ9時なので蕎麦食おうと三人で麻布十番、川上庵へ行く。ちょっと道に迷ったが、バーバラの携帯ナビで無事たどりつく。入ろうというときに『ポケット!』のI井くんから誕生祝いの電話あり。じゃあお祝い代わりに、と例の件、ずうずうしくお願いしてしまう。今日はラッキーである。川上庵でまたダベりつつ、野沢菜、鞍掛豆、日本酒。最後に蕎麦で〆るが、以前に比べてこの店、料理の質は上がった代わりにそばがイマイチになった。せっかく苦労してたどりついたのに。
かなり酔ってタクシーで帰宅。メールチェックしたらうわの空のツチダさんから来ていた。仕事のお話である。返事を書く。酔っていて変なことを書かなかったか、夜中にトイレに起きたときに心配になって確認してみたが、酔って書いたとは思えぬきちんとした文章で、へえ、と自分で驚く。ともあれ、やっと長い鬱からも解放されたという感じ、目出度し。