裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

15日

月曜日

電電 電化の田舎っぺ

ワスの田舎にもやっと電気が通るようになっただス。
                       (大ちゃん・談)

明け方に目が覚め、読書。最近また『守貞謾稿』をポツポツと拾い読みしているのだが、読んでいて夢とウツツの境の中で
「唐沢俊一、後世ニ之ヲ記録ス」
という一文があるのを発見、アレ、と思ったら夢だった。“後集巻之一・食類”の項の中に唐突に出てくる
「此書(『守貞謾稿』のこと)、無益ニ近ク、特ニ専ラ、今世俗間ノコトヲ記セバ、見ル人珍トセズ。余ハ、唯今世ノ小事書ニ伝ラザルノ雑事ヲ後世ニ於伝ノミ」
という一文に感動して、俺のこの日記もこの決意で書かねば、という思いを新たにしたばかりだったからだろう。

再度寝て、朝8時起床。K子はこのところ、午前中の簿記講習にいくとかで7時に起き出す。私は寝が足りていても最近、布団の中にもぐっている。これは軽い鬱のせいである。

とはいえ今日は久しぶりのカラリと晴れた朝で、庭の様子もすがすがしい。入浴して日記つけ、9時朝食、青汁とスープ、オレンジ半顆とイチゴ数粒。オレンジの甘さ大変なもの。昨日のキウイもかなり甘かった。甘いのはいいが、最近の果物は甘すぎないか。

やはり高気圧の好天気は原稿進むこと。10時くらいからだだだだだとキーボード打ち続け、1時までに14枚半、『社会派くんがゆく!』号外原稿アゲた。1時間5枚という猛スピードにしては力の入ったものとなる。高気圧大明神さまさま。

弁当、お菜は自家製牛肉たたき(ローストビーフなのか?)。大根の味噌汁。1時、タクシーで事務所へ。オノとスケジュール確認で少し話してから、東武ホテル。イラスト担当のK子と待ち合わせだったが、担当のKくん先に来ているので、レストランに入って雑談。担当のKくんはもう数年前、永江朗さんが私にインタビューする仕事のときに担当してくれた人で、何故か一回こっきりの仕事だったのに、よくそのときのことは覚えている。向こうも覚えてくれていたとみえ、この仕事になったもの。すぐK子も来る。

『DVDデラックス』という雑誌に新連載コラム書くことに。出版元はMCプレスというところで、親会社は毎日コミュニケーションズ、さらにその親会社は毎日新聞社でMCプレス社もお堀端に社屋がある。会社としてはなかなかの風格ある所在地だが雑誌はかなりロコツなエロ雑誌。10万部売ってるというからエロはやはり強い。私はまあ、売り上げ増の勢いに乗って隔月刊だったのが今度月刊化するんで、これまでビジュアル一辺倒だった当誌にもコラム欄を、ということで頼まれる。レトロカルトもの。最近は連載依頼もおとなしめなものが増えてきていたんで、こういう仕事は嬉しい。Kくんはマッドブラバスター・リーの友達だそうで、くれぐれもよろしく、と伝えられる。

打ち合せ終わり、事務所に戻り、原稿書き。トテカワYさんに預ける小説原稿を書き出す。仕事場に籠もって、という感じだが電話頻々で中断縷々。催促あり、イベント仕事のペンディングあり、新仕事の依頼あり。

新仕事の依頼は冷凍睡眠だの二足歩行ロボだのといった“SFが実現した”ものを取材するというもので、面白いから引き受けたいのだが、どういうものか取材日程とかのスケジューリングが無茶苦茶で、とにもかくにも打ち合せを、とオノ通しで言っておく。打ち合せ日の翌日にもう取材予定があるとか言ってる。あと、ロフトさいとうさんからも某企画の書籍化の件でいろいろ。

6時半にYさんに原稿受け渡しだが、約束の枚数の半分しか書けず。東武ホテルにまた出かけ、平謝りでとりあえず半分。でも、そろそろ本筋に入ってくるあたりの部分なので、引き込まれてくる、とは言ってくれた。

未練残して事務所に帰り、残り半分を、と書き出すが、そこらで気圧かなり低下、こらヤバいと打ち切って、西武デパート地下で買い物して帰宅。母の室で夕食。一乃谷から送ってもらったタラノメのてんぷら、まるでえぐ味や苦味がなく、馬鹿うま。それとキンキの干物で飯。

自室に帰り、DVDで『ベニスに死す』を見る。映像美はさすがだがこの映画の欠点はシロッコに直撃されているというベニスの“暑さ”が伝わってこない、というところではないか。登場人物たちがみんな汗みずく、というのはビスコンティの美学に合わなかったのかもしれない。あと、DVD化で過去のビデオなどに比べ画像がクリアになりすぎたのも、暑苦しさを減じているか。ちなみに、シロッコのアフリカでの名称がギブリ(GHBLI)。スタジオ・ジブリの社名の由来。なぜギブリでなくジブリかというと、宮崎駿氏が間違えて発音したため、だとか。

植木不等式氏からメール、トンデモ本大賞で使うオープニング・ビデオの件、私のナレーション、素晴らしいと絶賛してくれながらもダメ出しいくつか。映像作ったマドさんのとこに来たメールも、同じく絶賛(確かに大力作)のあとにダメ出しポイントがずらーっと並んでいたそうで、やはり出来る編集は違いますな。ただ、書籍編集者だけに音の部分のチェックは甘いというか、仮吹き込みで入れたICレコーダーの音でいい、とか言っている。600人入る会場ではこの音ではムリでしょう、と言うと“しかし予算が”と言う。タダでやっちゃう録音のアイデアを電話で伝える。ソレハスゴイと受話器の向こうで笑っていた。

ミリオンYくんにもメール、『猟奇の社怪史』、アスペクトのK田くんが“唐沢俊一久々の濃厚な毒気の本”であり
「デザイン(井上則人くん)もイラスト(ベギラマ)も編集(Yくん)も、群を抜いた出来」
と絶賛してくれたことを伝える。打ち上げは盛り上がりそうだ。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa