裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

21日

日曜日

はに丸浜口

「気合だ〜! はにゃ」

朝7時半起床。いい天気。日曜だが仕事を片づけねば。入浴、髭剃り。一度くらい口ひげを立てたいのだが女房が許してくれない。9時、朝食。コーンスープの熱いの、青汁、ブドー。

日中は調べもの。講談社原稿、第一回にやたら時間がかかってしまっている。久しぶりのネット連載だからか? 何とかこの天気を利用して今日中に書かねば。1時、家を出て渋谷。書きかけ原稿を渋谷の仕事場にメールで送ろうと思ったら、ニフティが不調。他の人はそんなことない、と言っていたが、サーバが使えないから少し待てと指示が出る。mixiでは自分宛にメールは送れない。『ポケット!』用のコミュの掲示板を急場に利用させてもらう。

マンションの下でNHKのYくんと落ち合い、メシ(いくつか回るが貸し切りだったり日曜で休みだったりして結局サムラートでカレー)食いながら打ち合せ。日曜の渋谷センター街なのでカップルばかり、中年男が2人向き合ってカレー食ってる図というのはどうも。11月にある某イベントの話。

それから近くのカフェに場所を移して(ここもカップルばかりだが女同士のカップルが多かった)、今すすめている企画の話をし、その資料が近くに売っているから帰りに買っていくように、とそそのかす。

NHKに顔を出すというYくんとぶらぶら歩く。暑いくらいの陽気だが、明日はまた崩れるんだろうな。仕事場に行き、原稿書き進める。今日はQPさん、はれつさんなどから新宿クレージーナイトVOL.2に誘われているので、5時10分までには終わらせないと、とあせるが、何しろ書いているうちにどんどん長くなる。それでも筆はさすが気圧の力でどんどん進む。なんとピッタリ5時10分に書き上げる。

メールして、急いでタクシー飛び乗り、歌舞伎町へ。『ダ・ビンチ・コード』封切り初日でにぎわうビルの下で傍見頼路さん、QPさん、その連れの女性(談笑の会などにも来ている)、それにはれつさんと待ち合わせ。はれつさん、私の鬱っ気をはらうために誘ってくれたらしい。もっともレイパー佐藤、セクシー寄席といった知りあいが出ているので顔を出すつもりではあった。

新宿クラブハイツ、この不景気な御時世にこういう店がまだあったかというような大型キャバレーという雰囲気。司会がユリオカ超特Qと、アシの女の子“まなか”。この子、決まっていた子が体調不良で来られなくなったため急遽ピンチヒッターだったらしいが、天然ボケの発言が面白い。ユリオカが声帯模写をやると、“……似ているんですか、それ”とやったり、彼がしゃべっている最中に“はい、ありがとうございました”とさえぎってしまったりとか。
「誰かに似ているって言われません?」
「あ、よく言われます」
「でしょ。そう思ってたんだけど……誰?」
「お母さん」
てのはシコミらしく、次に
「いやそうじゃなくって、他には?」
「お父さん」
というのがトンでしまったようでユリオカがあせっていた。

レイパー佐藤がなんとやたら浅いところの出演だったが、これで救われた。一番最初に次々に出てきた若手たちのサムさが、ちょっと耐え切れなかった出来だったため。新ネタの『小さき勇者たち〜ガメラ』は絶品。ロボコップの風俗、ウルトラマンの淋病などいつものネタでも工夫あって切れ味よし。こういう技術芸はとにかく絶対的強さを持つ。

セクシー寄席は前説もやっていたが、今日の出演者の中ではエロ度が足りなさすぎ、というくらい、他の出演者の下ネタ度が高かった。なにしろ本物のストリッパーが登場するわけで。ポーランド人女性のコンビと、紅子姉さんという日本人だったが、紅子姉さんは客席まで行ってもうこれ以上ないというくらいに足をおっぴろげてサービスしていた。ポーランドコンビは体の線のきれいさがもう、逆立ちしてもかなわないというくらいで、そのかわりあまり見せず、ブラをとってもすぐまたつけてしまっていたが、自分の出番が終わって私服で客席にいたのを見たら、スケスケの白シャツにノーブラで全部見えていた。ワケワカリマセン。

他に記憶に残ったのは六本木の店のオーナー芸人だという葉月パルの懐かしい(バブルの頃はよくいたなあ)ショーパブ芸の達者さと、デブで松田聖子を歌うきむこという女性芸人のがんばり(マイクが途中で不調になったがアワアワにならず乗り切ったのは見事)。きむこのラストの長州小力の模写は激似。今日別の仕事で来られない筈がなんとか駆けつけたちむりん、コンドームのぬいぐるみ(?)を着て、NHK教育の子供番組のノリで下ネタ満開。脇のおねえさん役の女性もいいな、と思ったがコンビというわけではないらしい(よくわからない)。“ラムのラブソング”をエロ替え歌にして
「♪中出ししたなら妊娠!」
とやっていた。

祭人生ゲビルというのは和太鼓とドラム、鉦のパーカッションロックバンド。それからPaniCrewはダンスチーム。お笑い系ではないが楽しめた。マイク芸の太華はマイク一本で2チャンネルの音を出すという超絶芸、しかもざっとやってすぐ引っ込むところが粋。ちょっとだけだが伊福部メロも使っていた。

トリの電撃ネットワークはまず、さすがと言っていい完成形。
「さあ、今日もサソリを」
「待った! サソリは……今朝死んだ」
「死んだの?」
「おまけに大阪でサソリ逃がした馬鹿がいて、おかげでいま輸入がストップしている
んだ。もう少し待ってね」
などというのに大笑い。それにしても結成16年目(10年くらい前にぶんか社の夏のパーティに余興で来ていたのが生電撃の最初)だそうだが、よく誰も死んだり不具になったりしていないものだ。こういう危険芸というのは大道芸の伝統を引き継いでいるもので、もしこれから先20年くらい続けていけば、文化庁から保護される芸になるかもしれない。

終わったあと、ユリオカがまなかちゃんに
「どうでした?」
「いやー、痛々しかったですねえ」
に私の席、みんな抱腹絶倒。今日何度目のボケか。商売になる天然ボケとはこういうのを言う。

客席にいた長井秀和なども上がってちょっと芸をやっていたり、カツラボクサーで有名になった小口選手が挨拶したり、いかにもこういうお店といった雰囲気。地下ではないが地下芸の饗宴といった一夜で、まず楽しかった。やはりこういうテレビとは無縁の世界の芸人たちにはヘンなのがいていいなあ。

そのあと、出て上海小吃。腓骨の甘酢煮、カエルの揚物、ヘチマと麩の煮物など。カエルは皮つきで風味あり、かつ皮つきは暑い季節に体を冷やすのでこれからの季節に最適とのこと。犬肉を頼んだら、犬は冬のもの、と言われる。お隣の韓国では犬肉は夏にバテ防止用に食べるもの、と正反対なのが面白い。ハチノコの素揚げ、せっせと食べてみんなに“長野県人は”と笑われる。長野県人ではないが爺さんが長野で、私のルーツである(なにせ先祖が霧隠才蔵なのである)。葱味噌の油麺と、太ビーフン食べて〆。5人で紹興酒2本。

タクシーではれつさんと相乗りで帰宅、1時間ほど半身浴して汗をさんざかく。バスタブの中で春日武彦『屋根裏に誰かいるんですよ〜歳伝説の精神病理』読みつつ。春日武彦の本に共通の特長で素材は抜群にいいがネタを扱う視点のひねりがもう一工夫あれば、という感じ。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa