22日
木曜日
空調科学小説
『われはエアコン』『扇風機の終わり』『家庭塵ゴーホーム』。朝、7時半起床。朝食は玄米粥、梅干。果物はブラッドオレンジ。母に電話、先日のカレーのお礼など。沖縄の中笈さんが6月にちょっと上京の予定らしいので、チラガァを送ってもらってチャイナハウスで調理してもらって食べようという算段のメールなど。
本日、45歳の誕生日。ニフティからお誕生日祝いメールが届いたので気がつく。これまではそんな感じはしなかったが、改めていい歳になりつることよ、としみじみ思ってしまった。しかし、これはあくまで数字を見ての感慨で、肉体とか精神状態とかは(なにしろ若いうちから老け役がウリであったもので)大してこの数年、変化はない。ここらへん、若さを武器にしてこなかった者の特権だろう。雑文書きのほとんどがぶつかる40代の壁も、別に難なく突破してきたのは、間口が狭い代わりに若いライバルの現れにくい、主流から外れた地味な分野で仕事をしてきたおかげ。いや、ライバルになりそうな連中もいたことはいたのだが、彼らは一様に主流に対し妙なコンプレックスを持っていて、ヘンに反発したり逆にスリ寄ったりして自縄自縛となり消えていった。傍流であることに一切疑問を持たないでいられたのは、若い頃から、藤村有弘とか、草薙幸二郎とか、天本英世とか、潮健児とかといった脇役俳優たちの熱烈なファンだった恩恵かも知れない。もちろん、無事是貴人とは思っていない。野心のみは常に心の中に燃やし続けていたいと思うけれど、そのために好きでもないこ とをやってストレスを背負うのはゴメンなのである。
午前中はずっと、Web現代の原稿書き。12時10分過ぎに完成、所要時間は2時間だが、その間にいろいろと電話等で中断あり、実質執筆時間は1時間半といったところ。中断の電話は光文社の『女性自身』から、窪塚洋介の大麻賛美発言に反対の立場から意見を述べてほしいという依頼。基本的なことのみを話す。それから、某テレビ局から、いま番組で“家庭内別居”をテーマにしているのだが、カラサワさんのところは夫婦揃って仕事を持っていて忙しそうだが、別居同様てなことはないか、という問い合わせ。ウチはそんなことないです、とお断り。まったく、別居どころか、 こう365日、顔を合わせ続けている夫婦もちょっとあるまい。
原稿を講談社にメール、すぐ支度して、K子とタクシーで東京駅へ。伊東温泉一泊ツアー。仕事山積だが、あまりの山積に煮詰まってきたのでちょっと逃避。誕生日の自分へのプレゼントもあるので、各編集者諸氏、乞ご了承。いや実際、この数日の執筆状態の不調には自分でも呆れて、これはどこかでアクセント入れねば、と感じてい たのである。
談之助、開田あやさん、睦月影郎さんが同行。睦月さんとは現地で合流、残り二人と東京駅踊り子号ホームで落ち合い、一路伊東へ。車中例によりバカばなし、いつもしているような内容だが、旅の空のそれの楽しさはまた格別。ビールのみ、弁当(藤村俊二プロデュースという2200円する弁当。それほどのものかね、という感じ)食って。伊東で睦月さん拾い、伊東温泉『花八季』へ。最初はK子が伊東なら話のタネにハトヤに行こう、一番いい部屋とって、という計画を立てていたが、やはりあまりいいウワサをネットでも拾えず、私の“一番安い宿の最高の部屋より、一番高い宿の最低の部屋をとるのが旅のコツ”という主張で、やや高めのこの宿にした。駅前から電話してマイクロで迎えが。坂を上った、普通の住宅街のような中にある小さい宿であった。一番安いといっても、一部屋に十畳以上の座敷が二つの豪勢さである。ではどこが安いかというと、エレベーターなしの三階なのであった。私はスリッパが苦 手なので、裸足で上り下りする。
まだ時間が早いので、街へ出て買い物、ダベりつつ土産物屋や当地のオタクショップなどを回る。オタショップのレジで、女店長らしき人物が店員を凄まじいイキオイで叱りつけていた。聞いた睦月さんたちが、“K子さんが店員を怒鳴っているのかと思った”と言ったほどだった。6時に帰宿、風呂へ入って、メシ。さすがに食べ物のうまい宿、というウリだけあって、豪華という感じはない(一番安いコースだから)が一品々々が洗練されていて、満足。和食の中にフランス料理っぽいものも挟まり、飽きさせない。ただし、酒のみは甘口ばかりでちと閉口した。女性客が主の宿だろうから、これは仕方ないか。イタリア旅行の思い出話とか、知人友人たちの月旦、ダイエットのことなど会話もはずむが、体力が限界で、早めに私は休ませてもらう。天候にめぐまれたこともあるだろうが、これほどトラブルのない旅も珍しく、開放感はな はだし。