裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

7日

水曜日

愛と間男

 大河くん、何しに来たの! 朝6時50分起床。昨日に続く好天気だが、気圧が乱れている感じ。朝食、白粥に梅干。ブラッドオレンジ一個、コーヒー。薬類、如例。母から電話、豪貴へのお祝いのこと。東京訪問のこと。やはり中途帰国はあわただしいものである。

 と学会例会誌用原稿、もう一本書けと編集のK子から指示。まあ、手近のカストリ雑誌などから適当にネタを見繕って、と思ったが、しかし、そういうネタだと書きっぱなしになってしまうことがある。今年後半に刊行予定のと学会本(年鑑系でないやつ)にも使えるネタを探そう、と思う。オタク分析系のものにしようかと思ったが、すでに植木不等式氏が『博士の奇妙な思春期』を取り上げているので、ネタがかぶるといけないと思い、別のものに。書庫からコレハというものをいろいろ取り出してきては品定め。これから批評用にキチンと読み通すには今日一日ではすまないものなどを落とし、結局、ヒーリング系のものに決めて、付箋貼りつけながらざっと読み直しメモを取る。

 昼は外出し、兆楽でミソラーメン。歩いていると、向こうから来る人で、こちらの顔を見て、露骨に目を見開き、ついでいかにも可笑しそうにクククク、と笑いながらすれ違う人がいる。私の顔を知っていて、やあ、本当に似顔絵ソックリだ、と思っているのだろう。まあ、顔を知られてナンボの商売だから別に気にしない。ありがたいことだとさえ思う。とはいえ、私などでさえこうなのだから、山咲トオルなど、もう普通に街で買い物したりとかが出来なくなっているのではないだろうか。

 ブックファーストへ寄り、資料本を探す。パルコブックセンターに、改装以来どうも足が向かなくなってしまっているので、ここの存在は貴重である。理工系フロアで何冊か買うが、科学書というものの高いことには今さらながら呆れる。2Fのエスカレーターのところに鉄拳の『こんな○○は××だ!2』の宣伝用パネルが貼ってあった。“こんなゲゲゲの鬼太郎は嫌だ!”の中に、“髪の毛針を飛ばすとハゲる”というのがあったが、あれ、初期の鬼太郎は本当に髪の毛針を飛ばした後はハゲていたのだが、と思う。もう今の世代はオリジナルの『妖怪大戦争』などを読んだことがないのだろう。パネルの絵も水木版ではなくアニメ版の鬼太郎やぬりかべだった。

 帰宅して、本格的にと学会誌原稿。4時過ぎ、海拓舎H社長来宅、本のタイトルのことで打ち合わせ。以前出していたタイトルは、ちょっと前だが類似のものがあり、あまりそれが売れていない本なのでゲンが悪いだろうとのことで。いくつかアイデアを出し、考えるがまとまらず。明日、またメールで、ということにしてHさん帰る。

 原稿続き。最初思っていたよりどんどん長くなる。書いていて、自分がどれだけこういう自分探しタイプの若い女性という存在がキライか、ということを再確認した。昨日ほどハイではないが、それでも書きながらメールチェックしたりするのは毎度のこと。昨日原稿出した男の部屋の編集Mさんからメール。その文章の中で、原稿のオチにつかえる件りがあったので、急遽返信し、元原稿のラストにそっくりつけたしてもらうことにする。固いイメージの原稿だったが、このつけ加えでユーモラスに落ちるものになった。

 8時、なんとかまとめ終わる。結局、400字詰め原稿用紙換算16枚半、という分量になってしまった。編集用掲示板に揚げるのは明日のことにして、外へと出る。風、夜半になって強し。タクシーで新宿伊勢丹まで。運転手が高島屋と間違えていたが、道はその先なので別段問題なし。三笠会館でK子と夕食。新人のスタッフ多し。K子、上機嫌で旅行のこと、食事のことを語る。……が、客がしばらくすると私らともう一組だけになり、そっちがヤンキー夫婦二カップルに片一方の子供。これがもうこういうレストランに連れてきてもらったのが初めてらしく、興奮状態。露骨にK子の眉間に立てジワが入る。

 メニューは野菜スティックのオードブル、オマール海老と帆立のロースト、唐辛子とガーリックのスパゲッティ(K子にとってマタタビ的な役割を果たす食い物で、これで立てジワがほぐれた)、メインが舌平目のパヴェ。パヴェというのは何だと訊いたら石畳のことだそうで、舌平目をローストした上に根セロリのマッシュを塗り、その上にズッキーニとプチトマトのスライスを石畳のように敷き詰めたものだとか。その後、チーズとブランデー。帰宅後、原稿を少しウォッシュして、形を整える。気圧 乱れて、酔いがヘンテコになってきたので12時頃、就寝。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa