27日
水曜日
ウィノナかの蛙、大海を知らず
映画の中では許されても、現実社会じゃ万引きはダメなの。朝、演芸の舞台を袖で見ている夢。舞台の上でイカと鴨肉の醤油漬けという瓶詰めを開けて食っていた。7時半起床。朝食、豆モヤシと菜の花。スチームして。ロシア語は1、2、3、4。アジーン、ドヴァ、トリ、チェトイリェ。テレビで、ガロ(青林堂)が休刊してオンデマンド出版になるという新聞記事をわざわざ取り上げていた。制作者の世代にとり、ガロという名はやはり思いが深いのか。あと、例によって北朝鮮。最近よく見る北朝鮮関係文化解説者の山梨学院大の宮塚先生、どうも中野貴雄に相似形である。非常にオタク的に、ウレシソウに北朝鮮のことを話すところも。
コミケ用の洋モノマンガ、翻訳。文化大革命用語がいろいろ出てくるのでやっかいである。“THE 3−FAMILY VILLAGE”が三家村、“SMASH FOUR OLDS”が“破四旧”くらいはすぐわかるが、ブルジョア封建思想者を比喩した“MONSTERS AND GHOSTS”は何て訳せばいいんだ? とネットでさんざんアタリをつけて検索し、“牛鬼蛇神”であることが三十分くらいか かってやっとわかる。手間取ることおびただしい。
昼に青山に買い物に出かけ、夕食の素材を買い込む。あのつさんから野菜はいただいているので安くすむのはありがたい。アツアゲ、目抜鯛など。昼飯用にチャーハンと鶏肉炒めを買う。帰宅して、チャーハンをレンジで温め、その上に鶏肉炒めをバッとぶちまけて、容器のふちに口をつけ、掻き込むようにして食べる。本場中国で覚えた食い方である。中国で見たときは、空港で美人のスチュワーデスのねーちゃんが歩きながらこれを立ち食いしていた。
メール数通やりとり。幻冬舎と来年の出版の打ち合わせ予定など。『大猟奇2』の書き下ろしなどもそろそろ準備しなくてはならず。編集部内での人気企画(だ、そうだ)から。冬の陽はつるべ落としというが、時間もあっという間で、スルスルという感じで4、5時間が経ってしまう。世界文化社用の新しい章立てと、それに使う人名資料を揃えるだけでこれだけの時間を使ってしまった。4時半、時間割にてDさんと落ち合い、ざっと構成について説明。Dさんは風邪でノドをやられている。私も偏頭痛気味なのは風邪のひきかけかな、と思う。韓国で食った犬の話など。あれはこないだも加藤礼次朗と、相模大野で“もう一度食いたいねえ!”と話し合った味だった。
打ち合わせ終えて、タクシー飛ばして新宿、マッサージ。サウナは今日は30分のみ。マッサージの先生が久しぶりに若い男性だったが、やはり力が違う。揉まれると痺れるように痛み、そこがまた快感である。“これくらい疲れがたまった身体だと、揉んでいても面白いです”などと言われる。肉体労働の疲れならちょいと一時間揉んだくらいではとれないだろうが、パソコン打っているだけだから、揉むとすぐ、回復する。で、またすぐ疲れるのである。この先生、以前はウチのマンションの近所を新聞配達で回っていたそうで、私の住所を見て、あのあたりの状況を懐かしそうにやたら詳しく述べる。
帰宅、少し仕事の続きをやって、すぐ夕食。アツアゲと青菜の炒め物、里芋と鶏肉団子の煮物、目抜の中華風蒸しもの。ご飯は新米。K子と携帯でのメール送信の練習をするが、携帯で文章を作るてのは面倒臭いもんである。DVDで『サインはV』。全国大会決勝戦を二話続きで描く回は脚本が青春もののベテラン上條逸雄だが、その一話前に、インターバルのようにキャプテンの松原(岸ユキ)に恋した男が九州から上京してくる、というコメディタッチのエピソードがあり、これは鎌田敏男が担当。さすが後にトレンディドラマの代表的シナリオ作家になる人だけあって、こういう恋愛がらみのドラマはこの当時から手慣れている。男の兄を演じた福田豊士がまたうまい。この人に限らず、この作品、脇役に木田三千雄、星十郎、十朱久雄、逗子とんぼといった芸達者をかなり贅沢に揃えていて(試合の実況アナウンサー役は羽佐間道夫が顔出しで務めている)、演技力にいささか不安のあるアイドルたちを支え、ドラマに厚みを持たせている。試合最中に主人公のユミが母の危篤電話で呼び出され、それがウソとわかって、大急ぎで試合に戻るとき、タクシーの運転手やトラックの兄ちゃんたちが侠気で彼女をリレーして会場まで送り届けるシーン、よく考えれば別に馬や駕籠じゃなし、自動車を乗り継いでリレーする理由がないのだが、視聴者たちの、何とかユミに手を貸してやりたい、という気持ちを代行させる、うまい手法である。いま、こういう非リアルな演出(『太陽にほえろ!』『スターウルフ』などの金谷稔)は見なくなった。なお、脚本の上條逸雄は、調べたら今年の8月14日に肺炎で亡くなっている。70歳。