6日
水曜日
国木田ドツボ
自然主義文学は行き詰まった! 朝7時半起床。ひさしぶりの7時台。寝床回りを昨日K子が掃除してくれたので気分がいい。すぐ本だらけになるだろうが。朝食に、ビーンズサラダ、コンソメスープ。K子にはキャベツ炒め。30日の静岡講演に関する確認の電話。
午前中から早川原稿、と思ったら、村崎さんとの対談原稿に手を入れるのを忘れていた。すでに〆切を一日過ぎている。あわててやりだすが、ネタが大物(拉致、ノーベル賞等)なので時間がかかり、結局12時半までかかってしまう。仕事関係催促電話、あちこちからしきり。
『ゲーム脳の恐怖』を理論基盤としたネット否定論を、トンデモと指摘することは妥当なことである。しかし、だからと言って、否定論を唱える人物(内舘牧子)が相撲贔屓であることにかこつけて、“相撲ばっかりしていると人間は相撲体(すもう・からだ)になって体に脂肪がつきまくり、三大成人病にもかかりやすくなる”という、同レベルのデマを書き散らすのは、いかに書き手本人が気のきいた皮肉・ジョークのつもりだったとはいえ(だからこそ)、いただけない。ひさしぶりに覗いてみた『裏日本工業新聞』11月5日の記事である。ゲーム愛好者を相手が侮辱したからと言って相手が好きなものだというだけの理由で相撲に対し毒づくのは、北朝鮮が日本人を拉致したことに怒って朝鮮人学校生徒をぶん殴るに等しい行為だろう。こういう発言は私や村崎百郎にまかせておいた方がよろしい。われわれだって、ああいう“悪趣味系”というワクのあるところ以外ではこういうバカは言わない。体重が多い方が有利となる相撲の世界で太りすぎによる弊害が多出しているのは事実だが、それを言うなら反射神経が重要な要素であるゲームにのめりこむことにより、落ち着いた思考力を養う機会が減る、という弊害がゲーム好きの子供たちの間に多く見られることも、そのレベルでは事実なのである。
『ゲーム脳の恐怖』は、その論理、データ分析のずさんさや恣意ぶりで、十分に叩かれる理由がある。あちこちのサイトであの本に対する否定論が続出しているのもよくわかる。しかし、だからと言って、あの本が唱える“ゲームのやりすぎはよくない”という意見が間違っている、ということにはならない、という基本を忘れてはいけない。往々にしてそこを取り違えた書き込みが散見されるのが気になっている。大槻義彦氏のUFO否定理論がいかにデタラメでも、“だからやはり、UFOは宇宙人の乗り物なんだ”にはならないのである。ゲームのやりすぎはさまざまな部分で社会生活に影響を及ぼす。それは相撲のやりすぎがよくない結果を招くのと同じである。全てのことにつき、やりすぎ・偏重は悪影響が出る。読書のしすぎで頭がおかしくなった人間は、歴史を見てもドン・キホーテ以降枚挙にイトマがない。健康法に熱を入れすぎたあまり健康を害した者も数知れぬであろう。自然としたしむ(登山、海水浴、キノコ狩り等々)ことで命を落とした者の数はゲームのやりすぎで命を落とした人間の数百倍いることは確かである。そして、ゲームというのは確かに、他のジャンルの趣味に比して、熱中しやすいという性質を有している(それは娯楽としての優秀性を示すものかも知れないが)のである。ゲーム脳関係記事を非難する際には、そこを押さえた上で論じないと、相手から足をすくわれかねない。
雑用を終えて、早川原稿の差し替え用のものを選定しているうちに、もう2時過ぎになってしまう。銀行で振り込み(OA器機リース代の引き落としを会社の口座に切り替えたにも関わらず、ずっと二重に引き落とされていた分の戻し)を確認しなくてはないらない。新宿に出て、三菱で記帳するに、戻ってないばかりか、今月も全く同じに引き落とされていた。腹が立って、何かメシを食わなくては、とマイシティの地下でラーメンを食べる。そのことでいろいろ考え事をしていたために、ジャージャー麺を頼むつもりで間違えてタンタン麺の券を買ってしまい、食べたくもないものを食べるハメになる。
帰宅、4時近くになってやっと原稿にかかり、4本ほど原稿、送る。まだまだ足りない。打ち合わせ日時の予約電話もしきり。いつに増して忙しい年末になりそうである。植木不等式氏から、googleキャッシュハイライトの件で、ハイライトを表示させるスクリプトのサイトのご教示。有り難しと早速、やってみるも、なぜか何度クリックしても、読み込んでくれない。ハイライト、復活してみたりまた不調になったり、非常に不安定である。
8時半まで早川続き。そこで体力の限界となり、時間もちょうどとなったので、タクシーで参宮橋まで。『クリクリ』でK子と夕食。こないだの三笠会館で飲んだのがおいしかった、というのでK子、またピノ・ノワールを注文。ただし、こないだのはアルザス、ここのはオーストリアのものなので、だいぶオモムキが異なる。料理は久しぶりにメニューに加わったタルタルステーキ、ワインに合わないホウボウと豆腐の和風スープ仕立て、海老の背開きオーブン焼き、あと恒例の子羊。タルタルの脇に、ケンさんが焼いたという、簪のような形の塩味のクッキーがついていたが、これが素朴な風味で非常においしい。